1リスナーの「BEACON」感想
出ましたね、14枚目のソロ新譜の「BEACON」。
「BEACON」特設ページ
https://www.susumuhirasawa.online/beacon
ダイジェストムービー
ここではつらつら取り留めなく感想を書き散らしていこうと思うのですが、「今回も最高!神!」というノリの感想ではないのでそういうノリを期待している方はどうぞ別の感想文を探してください。
また私は何年か平P曲のアレンジ打ち込み歌ってみたをしてきた身ですが、ほぼほぼ勘でやってきて音楽知識は無いも同然ですので専門的なことも語りません。というか語れません。タイトル通りただの1リスナーが新譜を聴いた、という感想文です。
では以下本文になります。
全体を聞き通して
まずは歌詞カードも見ず一通り聞いてみました。
「ソロと核Pとの境目がいよいよ無くなってきた」
「どの曲も何か似通ってる」
というのが最初に抱いた感想でした。
ソロと核Pとの境目
「ソロと核Pとの境目がいよいよ無くなってきた」というのは前回の核Pアルバム「回=回」でも思ったんですが、音源縛り的なのが薄れてきましたね。
一応、核Pは電子音っぽいのが主体、ソロは生楽器音源が主体な所がありましたが、電子音と生楽器音源の割合の差が少なくなってきたような気がします。
で、どちらも境目が薄れてきたせいなのか、使ってる音源が似てるというか同じのを多用しているせいなのかは分かりませんが、今回の「BEACON」と前回の「回=回」は何か2枚一組感があるなーと思いました。続き物のような感じ。
多分「回=回」が好みな人には今回のアルバムも刺さったんじゃないだろうかと勝手に思ってます。
個人的にはソロはソロ、核Pは核Pとはっきり線引きしている方が好み(色んな種類の味を知るのが楽しい方)なのでちょっと段々違いがなくなってきたのは少し残念だなあと思いました。
曲の輪郭
「どの曲も何か似通ってる」というのは、1曲1曲の輪郭がはっきりしていないというか、アルバム1枚で長い1曲ですよという感じ。
ちゃんとそれぞれ曲調が違ったりはするものの、次の曲に変わる時にハッキリ「変わったぞ!」という明確に切り替わる感じではなく、グラデーション的に変化していくような…
今回は「BEACON」という大きな1曲の中で第1楽章BEACON、第2楽章論理的同人の認知的別世界、第3楽章消えるTOPIA…みたいな、クラシック音楽とかで見るような作りっぽいなーと思いました。
今までは新譜を買った際、好みの曲をヘビロテすることが多かったんですが、今回はヘビロテしたいと思うことがそんなになく、通しで聴いた時が一番しっくりきました。
これまでの13枚あるソロアルバムの印象としては、「オーロラ」くらいまでは結構1曲1曲の輪郭がとてもはっきりしていて、独立している感じ。物語性はそこまで感じない印象。
そこから「点呼する惑星」くらいまではそれぞれの楽曲の輪郭ははっきりしているものの段々と物語性が強くなってきていて、「現象の花の秘密」からは少しずつ輪郭が薄まり、通しで聴いた時の物語性やアルバムのまとまりが強くなっている印象でした。
そして今回のソロアルバムは物語性とアルバムとしてのまとまりが一際強くなっていると感じました。
これも個人的には各曲ある程度はっきり輪郭がある方が好み(色んな種類の味を知るのが楽しい方)なので若干の物足りなさがありました。
これは決してアルバムのテイストや出来を否定している訳ではなく、完全に好き嫌いで評価が分かれる所だろうなと思います。
料理で例えるなら、食卓に出された料理が全部醤油風味の味付けがされていて、ポン酢とか味噌とかも味わいたいなーという人、醬油好きだからどれも美味しく食べられるけど飽きるなーという人、醤油好きだし全然飽きないしガツガツ食うぞの人もいるんじゃないかなということです。例えヘタクソだったかもしれない。
何が言いたかったのかというと、アルバム内で多用されている音源やニュアンスがめちゃめちゃ好みで、且つ飽きがこない人にとってはかなりハマるアルバムなんじゃないかなということです。
それぞれの曲感想
一通りの全体感想で1500字以上つらつら書いてしまったのでいい加減各曲の感想を書きますね。
1.BEACON
「アディオス」や「TOWN-0 PHASE-5」的な明るく、勢いのあるスタートダッシュ。跳ねるように歌っている部分が癖になりますね。
出だしのテーテテテテーの電子音は毎回ちょっと首を横に振って乗っちゃいます。
「アディオス」でも思ったのですが、スタートダッシュ曲は結構不満に思っている場所、窮屈に感じる場所からの「旅立ち」や「立ち去り」を連想させるものが多いような気がします。今回は名もなき子の旅立ちでしょうか。
2. 論理的同人の認知的別世界
第一印象タイトルなっが。打ち間違いに気を付けなきゃいけないやつです。
ギターの印象が一昔前っぽい感じ?に聞こえました(特に出だし)。語りの部分は最後の「記憶のBEACON」直前にもありますが、アルバム通してのキーポイントでしょうか。
「アルバム内で起こっている事象は物語(虚構・虚実)である」を念押ししているような印象ですが、語りの部分を入れることでむしろ現実と地続きに感じました。
こちらの高橋かしこさんの「『BEACON』への望まれざるライナーノーツ」https://moderoom.fascination.co.jp/modules/review/beacon.htmlを読んでいて分かる~と勝手に共感しました。
3. 消えるTOPIA
A、Bメロのやや不穏な様子からサビで一気に爽やかな感じに持っていく、ギャップ強いのが好みな人はハマりそうですね。要所要所に「亜呼吸ユリア」「ECHO-233」味があって、個人的には一番「回=回」のテイストが残っている曲に感じました。
Bメロを歌ってみると「回路OFF 回路ON」並みになかなか喉が忙しくなる部分でカラオケで歌った時に苦労しそうです。
歌詞カードを見るまで「たった今」の部分が「ただいま」だと思ってました。
4.転倒する男
個人的に1番好きな曲です。タイトルの「~男」は結構シリーズと言ってもいいくらい数ありそうですよね。
(見よ)の響き渡る感じ、高々と響き渡るブラスは小高い丘から聞こえるようで晴れ晴れとした印象。平沢さんがブラスをこういう勇ましい感じに使うのは珍しいような気がします。
グゥウゥウン!という(伝われ)ギターの音が癖になりますし、ひらがな表記された「わっはー」がかわいい。
GNの特典版はより転倒しそうな、与太者感が出ていて「これはこれで面白くてアリだなあ」と思いました。ただアルバム通しで聴いた時に確かにちょっと浮いた感じがあるのでボツになったのも分かります。
5.燃える花の隊列
ダイジェスト動画で初めてタイトルを見た時「燃える花嫁の隊列」と見間違い、「なかなか物騒なタイトルだな、まああり得なくはないか…」と一旦飲み込んでました。
「火事場のサリー」や「亜呼吸ユリア」のような、上手く言い表せないんですが曲の中の「女性性」?のようなところがそこはかとなく共通しているような感じがしました。何故かは分からないですが。
「消えるTOPIA」のようにこの曲も結構ギャップが激しいですね。優し気なギターから始まり、サビでは不穏な感じのギターへ…。私のTL上ではこの曲が一番好きという感想を一番よく見かけました。
6.LANDING
リッチなストリングスが際立つ曲。小気味良いマリンバの音も気持ちいいですね。ここまでソプラノ感溢れる歌唱部分がしっかりある曲は久しぶりな気がしますが気のせいでしょうか。
Bメロは迷宮っぽいイメージで妖しくて好きですね。「あっあー」のコーラスはちょっと「クオリア塔」のコーラスに似てるような気がします。
LANDINGという言葉はMカードでも度々出てきており、今作のインタラライブでもキーワードになりそう。
7.COLD SONG
販売前から話題のカバー曲ですね。何のカバーをするのだろうと予想TLになっていた時にこのCOLD SONGと挙げている方がチラホラいましたが、凄いですね…何で分かるんや…
シネマティック音源のような割れんばかりのリズム隊、ダメージ加工されたこれまた割れそうな平沢さんの歌声、より一層曲の冷たさというか硬さというか、そういった質感が増したように感じました。
原曲の歌詞は「起きる」ことに否定的な感じでしたが、平沢さんの歌詞は「起きる」ことに肯定的な感じがします。
8.幽霊列車
正直TIMELINEシリーズよりもシリーズ化してるような幽霊・ghostシリーズ。どことなく「幽霊船」っぽさがほのかにあるような感じがしました。
ギターのフレーズがちょっとスパニッシュギターっぽくて渋くてカッコいい。リズミカルなブラスが癖になりますね。最近ストリングス音源と同じくらいブラス音源がお気に入りな気がします。
この曲に限らずですが、今回のアルバムではピアノ音源?らしき音がちょくちょく裏方的な役割としていい仕事してますね。
9.TIMELINEの終わり
TIMELINEシリーズ。「TIMELINEの東」とこの曲以外にもTIMELINEシリーズってあるんでしょうかね?
曲調は「TIMELINEの東」と同じようにこちらもまた爽やか。「鉄切り歌(鉄山を登る男)」もそうですが、最近の物語の締め曲は劇伴っぽくて明るく晴れやかな気がします。ちょっと民族音楽チックな感じもしますね。
GN特典のカラオケ版は何というか至れり尽くせりでしたね。「BEACON」もそうですがコーラス部分だけでなくハモリ部分も歌ってくれているとは…。聞いていたら何というか例えはアレですけど物まね歌合戦とかで後ろから本人が出てきて一緒に歌う時にご本人そっち歌ってくれるんですかー!?みたいな気持ちになります。伝わらないかもしれない。
10.ZCONITE
もの凄い暗くて異質。気味悪いんですけど結構好きです。老若男女問わずの大勢が周りを取り囲み、一様に呪詛を吐きかけてる…みたいなイメージです。
曲そのものよりも曲順が不思議で初めて聞いた時に「え、ここに入れるの?」と思いました。あの爽やかな締め曲の直後に来るのかと。
何となくこういう感じの曲は序盤か中盤に入れてそうなイメージだったので余計に不思議な感じがしました。
個人の考えですけど、この後すぐ「物語はこれでおしまい。」というメッセージが流れることからここまでが「物語」で、次曲が「現実」扱いなのかなと思いました。
それでその物語を締めくくる曲なんですけど、この「ZCONITE」とその前の「TIMELINEの終わり」はどっちもエンド曲で、先に来た「TIMELINEの終わり」は希望溢れるハッピーエンド(トゥルーエンド)、続く「ZCONITE」は選択を誤ってきてしまったバッドエンド扱いなのかなと思いました。
少しゲームっぽい例えになりますが、先にハッピーエンド(トゥルーエンド)を見た後、じゃあ正しい道を選ばなかったらどうなるか見てみようというバッドエンド回収のような意味を込めてこの曲順なのかな?と思ってます。
11.記憶のBEACON
最初は「ハッピーエンド喰らえ!」というような印象。でもこの曲の直前が物語としての区切りだとするとハッピーエンドというよりカーテンコールとかの方が近いかも?と段々考えが変わってきました。
またこの「記憶のBEACON」と「TIMELINEの終わり」は出だしの部分がサッカーとかスポーツ中継番組のOPっぽいなとも思っており(平沢さん本人は嫌がる感想かもしれない)、どことなく応援ソングの側面もあるのだろうかとも思いました。
あと先述した通り、「物語はこれでおしまい。」というメッセージを区切りとして「ZCONITE」までが「物語」で、この曲が「現実」扱いと考えると、アルバム「BEACON」内での「物語」は終わってますが、「現実」は終わりがないので「俺たちの戦いはまだまだこれからだ!」のようなニュアンスも含まれているような気がしないでもない…。
ラストこの1曲だけで色々な捉え方ができますね。
最後に
この感想を書くにあたり何度もアルバムを通しで聞いて思った事なのですが、「ここ数年あんまり面白くなかったんだろうなあ」「窮屈だったんだろうなあ」「早く解放されたいんだろうなあ」という憶測というか何というか、そんなことが頭を掠めていました。
チラチラとですが、ここ1~2年くらいのツイ恥の様子も見ていると時々相当フラストレーションが溜まってるような感じに見えることがありました。
とは言え、フラストレーションが溜まっているのは何も平沢さんだけでなく、今年と去年なんかは誰しもが、何を信じていようがいまいが関係なく「新型コ〇ナ」という「事象」に振り回されてきた訳です。
「なんて窮屈、早く解放されたい。」という願望自体は大なり小なりみんな共通して持っているのではないでしょうか?
今回のアルバムはその共通した願望を昇華した作品、そんな捉え方もできるんじゃないかなと思っています。
さて感想文はここでおしまい。最後まで読んでくださった方ありがとうございます。5000字以上も、しかも上手くもない文章を読み切ったあなたはスゴイ!
平沢さん含む、みんなにとっての安寧の時が訪れるのは、未だいつになるかは見当もつきませんが、早く訪れることを切に願っております。それでは。
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