【読書録vol.1】『森のようちえん冒険学校』
タイトル:『森のようちえん冒険学校』
作者:中能孝則
出版社:Kフリーダム
出版日:2021年5月25日
内容
心が輝いたあの日!
● 子どもにとって森のようちえんは 木に好きなだけ登れ、雨でも濡れながら遊べるそんな冒険ができるところ
● 親にとって森のようちえんは子どもを認めてもらえ、親も認められた気になるところ
「森のようちえん」の先駆者が、その実践の歩みと次代の保護者と指導者に伝えたい活動のポイントを集大成。
(Amazonより引用)
私が2008年に参加した内閣府青年国際交流事業で、カンボジア派遣団の団長だった中能孝則さん(以下、「中さん」)の本。
「自然の中での体験を通して生きる力を身につける」ことを実践してきたことをまとめた本。
自然との人間の関係としても読める。私が今、西会津にいる理由とも重なる。
以下、感想。
感想
・この本にはあまり出てこないが、著者の中さんは「社会教育」が仕事で、子供たち意外にも大人、高齢者とも活動もしている。高齢者の方向けのダンス教室の話は面白かった。デンマークやカナダにも数十回行っており、北欧の社会福祉や教育にも詳しく、カンボジア派遣中や研修中はよくその話を聞いていた
・中さんが出発前の壮行会で、内閣府の官僚やIYEOの人を前にしてしたスピーチは14年経った今でも覚えている。それくらいスピーチの天才
・この本には、幼少期に自然の中で本気で遊ぶこと、本気で活動することで、生きる力や他者との関わり方が身についていくということを事例を通して述べている。巻末には今大人になった人の体験談やその保護者からの手紙が掲載されている
・本を読んでいて、子供たちが自然の中で遊ぶ光景が文を通じて伝わってくる。私の子供時代を思い出した。私の子供時代は、集落にある山、林、森、川で当たり前のように遊んでいた。同じ場所でも春夏秋冬で遊び方が違う。いる動物や植物が違うからだ。毎日が冒険だった。この本に出てくる子供たちよりもワイルドな遊びをしていたと思う。集落の未就学児から中学生まで20人くらいで一緒になって遊んでいた
・特に、集落全体でやったケードロ(「ドロケー」と呼ぶ人もいる)は自分の原体験だと思う。その経験が2019年に西会津で開催した「DEEP集落鬼ごっこ。」として生きた
・本の中でも、幼少の頃に一緒に自然の中で遊んだ子供たちは仲良くなると書いてあったが、一緒に自然の中で遊んだ集落の同世代は今でも家族のような関係
・昨今の子供たちは、自然の中で遊ぶ機会が少ないのではないか? 西会津でさえ今、子供たちは自然の近くに住んでいるのに、昔のように川に行ったり、山に行ったりすることは学校で禁止されているようだ。確かに、私たちの時代も「溺れるので川に行ってはいけません」「熊が出るし、迷子になるので山に行ってはいけません」とは言われてきた。しかし、それでも子供たちはエネルギーを抑え切れずに自然の中に入って行った
・昨今の社会は、成長社会から成熟社会へと変わり、画一化から多様化へ、集中から分散へ、正解がある時代から、正解がない時代へと変化している。
過去の成長社会で経済が成長する中で、都市化や物質的豊かさが「豊か」であるとされ、資本主義の外にあり、経済の中でいらないようなもの、自然、地域、土地の歴史、家の歴史、人情、近所、旅、自由、故郷、田舎、大家族・・・といったものを敬遠してきた。
その結果、「自然体験」や「地域コミュニティ」というものが希薄になり、自然の脅威を感じない生活、人間関係の距離の取り方が分からないという問題が生まれてしまった
・しかし、成長の時代が終わり、社会が成熟していく中で、それまで信じられてきた神話(終身雇用、学歴主義、大企業は倒産しない)といったものが崩れている。人々が依りどころとしていた基盤が揺らいでいる。そして、最近、それまで排除されてきた「自然」「地域」「近所」「家族」といったものが見直されてきている。
そのような時代にあって、西会津には、地域も残っており、土地の歴史、家の歴史、人情、近所、故郷、田舎といったものがある。だから子供を自然の中で育てたいと移住してくる人も増えてきているのではないかと思う。
・学びは「自然」と「文明」両方からあるべきだと思うが、今は「文明」寄りになってしまっていると感じる。「自然」からの学びを中さんは行っていると思う
・そんな時代背景の中、この本が出てきて、中さんの40年の実践が出版されるということはとても意義深いと思う
・この本は、これからの時代の自然と人間の関わりについて、「森のようちえん」を通した中さん流の自然との共生論だと思う。
・ある子供たちの事例について、「このことは私たちに何を教えてくれているのだろうと話し合」ったと書いてある。カンボジア団でも夜に団員で中さんの部屋に集まり、よく議論した
・カンボジアで出会った子供たちは本当に生きる力があると感じた。自然の中で遊んでいたし、弟や妹はもちろん、大人の家族の面倒まで見ていたり、物売りをしてどうにかして私たちに買ってもらおうと日本語まで覚えていた。日本の子供たちとは何が違うか夜な夜なみんなで議論した。それはまさにこの本に書いてある「自然の中」で日々そだっているためか。カンボジアではリアルな「生」を見たと思う(注:14年前のカンボジアを見た感想)
・「百見は一行にしかず」「恨みっこなしで本音で話し合えるコミュニケーション」という記述があるが、これはカンボジア派遣団で良く中さんから言われていた言葉だった。本に少し書かれている手品はカンボジア団員みんなで覚えた
・「子供たちの感性」という言葉がたくさん出てくる。子供たちの自主性を育てていると思う。カンボジア団でも自主性がとても重んじられた
・カンボジア団を通して、自分も中さんに社会教育をされていたのかなと思った
・カンボジア団2008でまた同窓会をしたい!