『日日雑記』
ある日。
Hと新幹線に乗って仙台に帰省。車内でのHはきょろきょろと周りの人を眺め回したり、トンネルに入ると小さくぐずったりしたが、比較的落ち着いていた。実家に着き、借り物のおもちゃで遊ばせているとHの体がむわーっと熱い。熱を測ったら8度6分だった。
・・・・・・
似ても似つかないけれど、「ある日。」で始まる武田百合子「日日雑記」風に書き出してみました。ちなみにHとは本の真似ではなく、娘の頭文字です。
上の通り、まず娘が熱を出し、すぐに収まり少し咳が残っているな、と思っていたら私にウイルスが浸入していたようで、娘より重症化してしまいました。熱は7度台を上下しながら次第に咳と鼻水が出てきて、その内頭痛はするわ、だるいわ、大変な目に会いました。今は薬が効いてきて快方に向かっています。
横になっている間、バッグに入れていた「日日雑記」を読んでいました。数え切れないほど読んでいるのに、何度読んでも、どこから読んでも、毎回新しい感動を覚え、夢中でページを繰ってしまいます。つまらない映画を見たときの娘Hとの応酬、人間なら100歳になる飼い猫玉のこと、色川武大らと見に行った相撲のこと、大岡昇平がNHK特集に出演したときのこと、そのほか癖のある周囲の人物とのやりとり、いくつかの回想。何度も読んでいるのでもう知っているのに、やっぱり可笑しく、観察の鋭さと端折ることのない描写の的確さがたまらなく良いのです。
あとがきでも取り上げられていてあまりにも有名なくだりですが、模食(食品サンプル)を見て、
「あの世はこういう賑やかさはないだろうな。こういうものがごたごたとあるところで、もうしばらくは生きていたい!! という気持ちが、お湯のようにこみ上げてきた」
の部分は私に強烈な印象を残しました。今回も、その想いに代表される、前編を貫く毎日の生活の愛おしさと滑稽さ、なつかしさを一字も漏らさずに味わい、体調も忘れるような時間を過ごしました。
2011.7.1
※10年後の私からのコメント
本家の文体も何も似ていない書き出しに絶句。
でもこの本のすばらしさには、10年経っても完全同意。
そしてこれからも変わらないと思う。また読もう。