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自分の子供が「絵を仕事にしたい」と言い出したら6
前回の記事では、プロの漫画家になる方法と必要な道具を描いた。
最後に残すはプロのアニメーターになる方法。これは明確なようでいて、実は説明が難しい。
プロのアニメーターになるには
「プロのアニメーター」と言われて想像するのが、漫画のアニメ化や、アニメ映画のエンドクレジットで名前がズラーリと並ぶ人たちのことだ。それはそのとおりで、地上波で放映されたり、全国公開されるようなアニメーションは、基本的にはアニメ会社に入社した(または入社経験がある)アニメーターでないと、その仕事は回ってこない。
アニメーション業界が示している、アニメ入社試験や面接時に必要なポートフォリオの基準を教えてもらった。
日本アニメーター・演出協会が提示している、「アニメーション業界を目指すポートフォリオについて」というPDF資料がある。
作画部門のポートフォリオの内容
・アナログの線画を使った作品(水彩や色鉛筆)
・模写、クロッキー、人物デッサン、背景、身の回りのものデッサン
・クリンナップ後の線画すこし
………地味すぎる。
美大受験かっていうレベルの地味さ。アニメーターという名前のきらびやかなイメージとはほど遠い。
イラストレーターや漫画家が、基本的にプロと同じ工程の完成品を作ってプロになるのとは全く違う。本当に「絵のレベルだけで判断する」ストイックさを感じる。
もちろん、入社を目指すアニメーション制作会社のレベルはそれぞれ違うので、新人に求められる力量も違う。しかし美大芸大より厳しいのは「受かる人が少なすぎて、情報集めなどのや各会社の入社対策が非常にしにくい」ことだ。しかもアニメーション志望者は、新人漫画家・イラストレーターより数が少ないので仲間ができにくい。
アニメーターになりたいからといって、学生がひとりでこの入社対策だけをコツコツやるのはしんどすぎる。
個人的な感覚かもしれないが、絵を描くことが好きな子供は、「すごーい」「お前上手いな!」みたいな同級生からのイイねがほしいからやっているところが大きい。子供がクラスメートから素直に羨ましがられるのは、オシャレか、運動ができるか、絵が上手いかくらいしかない。(勉強がよく出来るのはあんまり羨ましがられない)
しかし一般人は素直で残酷。模写やクロッキーや静物デッサンを見せても「美術部?」くらいしかリアクションしてくれない。アニメーター志望者がクロッキー帳を埋めても凄さが伝わらず、スルーされる可能性が高い。それでは絵を描き続けるための燃料が枯渇してしまう。
一般人の本気のリアクションをもらうには、プロと同じ完成度の作品を見せるしかないのだ。つまり、アニメーター志望者は、入社対策のポートフォリオ以外に、オリジナルアニメを作ることをオススメする。
長編アニメーションはもちろん大変なので、最初は1秒程度のワンカットアニメを作る。デジタルで編集した小作品を、SNSで投稿するなり、友達に見せるなりすれば、より大きなリアクションがもらえるはずだ。もちろん、オリジナルアニメを作るメリットはリアクションがもらえるだけではない。なぜこんなに画力を求められるか、その理由がはっきりわかるはずだ。
また、アニメ会社の入社試験では「サンプル動画の中割をせよ」だの「資料なしで学校の教室を描け」だの、受験生がアニメを作ったことがある前提で試験問題をぶっこんでくる会社もある。オリジナルアニメ制作は必ず役に立つ。
最近はオリジナルアニメをSNSで投稿し、学生ながら仕事にしている人も増えている。
イラストレーター同様に、フリーランスからキャリアが始まるという流れは、アニメーターにも増えていくかもしれない。
アニメーターに必要な道具
・タップ
・トレス台
・アニメーション用紙
・えんぴつ
・色鉛筆
※デジタル動画にするなら、アナログ用紙を編集するためのパソコン環境(複合機、パソコン、アニメーション編集ソフト)
↑固定したスマホで一枚ずつ写真を撮って、アニメ調に確認することは可能
デジタル作画の場合
・専用ペンつきのタブレット端末か、液晶タブレット装備のパソコン
・アニメーション編集ソフト(アフターエフェクト、Photoshop等)
次回は、子供の年齢別の声かけについて書く予定。