転職者に必要なunlearnと、迎え入れる人たちがすべきonboarding支援
優秀な人でも、環境が変わったら今までのように優秀でいられなくなることがあります。なぜなら、私たちの能力には「発動条件」があるからです。
↓こちらの記事のように、今まで大企業で発揮できていた能力が、中小企業で発揮できなかったということは珍しくありません。
万能の優秀さは存在しない
これは私自身が経験したことですが、自分自身の能力をフルに発揮できた職場もあれば、あまり発揮できなかった職場もありました。
同じ人間なのに、基本的な保有能力が変わっていないはずなのに、優秀な自分と、そうでない時の自分がいる。ここから気づいたのは「万能の優秀さ」は存在しないということです
私たちが持っているのは、あくまでも「持ち味」であり、それがプラス発揮できる職場であれば「強み」に変わるし、できなければ「弱み」に変わることもあります。
たとえば「時間をかけてでも精緻なプランを立案する」ことがベースの職場で活躍していたAさんが、転職して「あまり時間をかけずに、まずはコア部分の最低限のプランを考えて素早く前進させる」ことを良しとする組織で働くと、最初は大きく戸惑うことでしょう。
こういうギャップが存在する場合、仕事の進め方のチューニングや適応が必要になりますが、チューニングが長引くと自分自身に焦りが生まれやすくなり、悪循環に陥りがちです。
その他、「優秀な部下を支援することで」「社内の潤沢なリソースを活用することで」成果を出せていたといった場合は、新たな職場でそれらに恵まれないと同様の成果を出せなくなります。
つまりは、私たちの能力には「発動条件」があります。能力は絶対的なものとして存在するわけではなく、環境との組み合わせや相性などに大きく影響を受けるわけです。
個人と組織、それぞれにできること
それでは、個人と組織、それぞれ何ができるでしょうか。以下のように整理してみました。個人は組織だけのせいにせず、組織は個人だけのせいにせず、双方の努力が必要です。
まず個人にできることですが、何よりも大切なのは「自分の能力には発動条件がある」という事実を認識すること、まずはここからです。今まで自分が仕事をできていたのは職場や環境のおかげであったと、それらとの相互作用としての強みであったと自覚することが第一歩だと思います。
また環境が変わった際には、新たな環境で成果を出すためにチューニングが必要となりますが、過去の経験が足を引っ張ることもあります。そのような時は、意図的にunlearn(学びほぐし)していくことが求められます。どうチューニングしていけばいいか、新しい組織の人たちに相談していく姿勢も有効でしょう。これらができずにいると、やがて詰みます(私は詰みました)。
一方で、組織には何ができるでしょうか。これは「発揮支援」と「適材適所」の2本柱になると思います。
「発揮支援」とは強みの発揮を邪魔している原因を取り除くことです。期待するように動けていない場合は、その原因や本人の考えなどを対話によって確認します。そして、業務をサポートしていくと同時に、本人がチューニングしていくべき点について第三者目線でフィードバックします。
「適材適所」はすでに広く使われてる言葉ですが、ここでは「その人の持ち味が強みとして活かせるような業務を担当してもらったり、異動・配置させること」などにあたります。
「中途入社で経験者ならできるはず」と放置したり、「うちの会社はこうだから」と突き放したり、「期待違いだった」と早々に見切りをつけることは解決策にはなりません。
キャリアにおいて大事なこと
さいごに。これまでの話を踏まえ、個人がキャリアを考える時に大事なことについて整理してみました。
1. 自分の能力の発動条件を知る
これは自分が能力を「フルに発揮しやすい条件」と「発揮しにくい条件」について自己認知するということです。
同じ環境だけにいるとなかなか分かりづらいものですが、複数業務・プロジェクト・異動・転職・副業など、いくつかの環境を経験することで相対的に分かってくることもあります。就職活動で「自己分析」が大切だとは何度も聞いたかと思いますが、自己分析は社会人になっても必要です(むしろ、働いた経験を踏まえて、より正しく分析できるかもしれませんね)。
2. 合う場所を選ぶ
マッチングと言ってしまえばそれまでですが、合う(=自分の持ち味が強みになる)職場を選ぶということです。回避できるに越したことはないですね。ただ、はじめは合わないと思っていてもやっている中で適応していく・自分の新たな側面を開拓できることもありますので、早々に見切りをつけないことも必要かもしれません(僕は早々に辞める派ですが)。
3. 何度も脱皮する
過去の能力発揮手法に囚われすぎず、時にはunlearn(学びほぐし)して、自分が持ち味を発揮できる場所を増やしていくという姿勢を持つことも有効です。
もちろん、脱皮しない自由もありますが、自分の価値を発揮できる環境がなくならないという保証はありませんので、その場合はリスクを伴うという覚悟も必要でしょう。
4. 過剰適応にご注意
似た環境に長居しすぎると「ワンパターン化」のリスクがあります。特定の環境にカスタマイズされすぎて、他の環境で能力を発揮しづらくなるというやつです。
特に「狭い世界」や「カルチャーが独特な会社」での経験が長いと、今までの経験で自縄自縛してしまうこともあります。これについては個人の努力だけで解決しようとするのではなく、周囲はこれを理解し、ともに解決していけると美しいです。
さいごに、くりかえしになりますが、個人は組織だけのせいにせず、組織は個人だけのせいにせず、双方の努力がによって、世の中にいい組織といいキャリアが増えていってほしいなと思います。
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