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仕事における7つの報酬


一部の業界では人材獲得競争が激化し、給与レンジの見直しを迫られている企業も少なくありません。

いろいろな調査がありますが、昔から転職理由のTOP2は概ね「人間関係」と「給与」となるくらい、金銭報酬は重要な要素です。


しかし、はたして本当に優秀な人材を金銭報酬だけで引き止めることは可能でしょうか?

私は仕事における「報酬」には少なくとも以下の7つがあると考えます(人によっては、もっとあると思います)。「給与は上げたのにその効果を感じらづらい」という時に、金銭報酬以外で会社としてマネジメントとして何ができるかを考える上で、以下がチェックリスト代わりになれば幸いです。

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それでは、一つずつ見ていきましょう。

1
納得報酬

・事業内容に社会的意義を感じられる。
・役に立っている実感が得られる。
・経営判断や方針に納得感がある。
など

自分自身は何のために働いているのか?この作業は何のためにするのか?これによって誰が喜ぶのか?というように、人は大なり小なり「納得感」を求めるものです。この納得感が低いと、給与を上げたところでエンゲージメントが高まらないことがあります。

しかも、プロフェッショナルやエキスパートほど自分自身の納得感には敏感で、言われたことを言われたとおりにやることが求められる環境では、引く手数多な彼らは早々に離脱することとなります。

自社の従業員や自分のチームメンバーは納得感をもって働けているか(ひいては、自分自身が彼らの納得感を高めるようなメッセージングやアサインができているかどうか)。納得報酬は今後より重要なものとなるでしょう。


2
浪漫報酬


・会社のビジョンにワクワクできる。
・エキサイティングな挑戦ができる。
・変化や未知のテーマが多く、なかなか飽きない。
など

浪漫は報酬です。たとえば、スタートアップは浪漫のかたまりですが、いずれスケールして大企業化していく中で、かつての時代ほどの浪漫を感じられなくなることがあります。

このような大きな流れに対して十分なメンテナンスができていないと、「以前ほどの浪漫を感じられなくなった」と昔からの社員は巣立っていきます。

浪漫報酬を「かつてあったもの」とさせないためには、組織のステージが変わっていく中で、次のステージだからこそ目指せる浪漫をトップやミドルマネージャーが率先して描き、浪漫をアップデートして、言葉にして伝え、鼓舞していくことが重要となります。恥ずかしがらずに、浪漫は何度も何度も語る価値があります。


3
成長報酬

・仕事を通じて成長実感が得られやすい。
・自身の成長につながる上司・先輩・同僚などに恵まれている。
・成長を支援する制度や仕組みがある。
など

優秀な若手社員であれば「この仕事を通じて大きく成長できた」「この会社では、まだ学べることが多そう」「この人たちからは吸収できることが多い」という成長報酬は無視できません。逃げ切り・ぶら下がりを考えていないベテラン社員にとっても、成長は重要なファクターです。

メンバーがマンネリ感を感じていないか目を光らせ・耳を傾け、優秀な若手に挑戦の機会を積極的に提供しているか。「あっちの会社の方が成長できると思った」と言われた頃には手遅れです。エキサイティングな機会や場数は、またとない報酬となります。


4
関係報酬

・職場の雰囲気や関係に恵まれている。
・仕事を通じて貴重な人的ネットワークが得られる。
など

いつの時代も転職理由TOP2に輝く「人間関係」。もちろんぬるま湯に浸かっているだけの仲良しチームでは困ってしまいますが、組織へのエンゲージメントにおいて「他者との関係性」は大きく影響します。

人間関係は放置しているだけでは簡単に悪化して荒れてしまうことがあるので、いい仕事を生みだす「いい土壌」として、社員一同で耕し続けること。またその仕組みづくりが重要となります。いい人間関係は福利厚生の一部と捉えたほうがいいかもしれません。


5
環境報酬

・自分の能力が発揮しやすい環境が整っている。
・働きやすい制度がある。
など

ハイパフォーマーは仕事の成果にはこだわります。そしてそれと同じくらい、自分の能力を発揮しやすい「環境」にこだわります。これは単にオフィスが綺麗とかいうレベルの話ではなく、より良い成果を創出できるワークスタイルも含まれます。

新しい働き方を模索している企業は多いかと思いますが、ワークスタイルとライフスタイルがかつてないほど密接になっているこの時代、自分の能力を発揮しやすい環境は今まで以上に効果的な報酬となります。


6
金銭報酬

・給料がいい。
・魅力的な福利厚生・特権的扱いがある。
・ステータス欲が満たされやすい。
など

もちろん、お金は大事です。給与レンジはそう簡単に上げづらいものですが、今のこのご時世、人材の獲得難易度を無視して見直さないままの状態であれば「じゃあ他社で」と言われる覚悟が必要です。

金銭報酬はあとから下げづらいので中長期的に見るべきですが、とはいえ足元も大事。悩ましい報酬ではありますが、「ケチったことで、かえって高くついた」とならないよう、時には大胆な決断が必要でしょう。


7
安心報酬

・業界や企業としての安定性がある。
・ライフステージに応じた働きやすさ。
など

さいごは「安心報酬」です。人はいつまでもトップスピードで生きてはいけません。病気になったり、家庭のケアが必要になったり。ライフスタイルやライフステージが変わることは誰にでも起こりえます。

健やかなる時も病める時も、たとえ自分がダウンサイドに向かう時であっても、この組織は見捨てない。活躍できる時だけ抱えておいて使えなくなったらサヨナラとはならない。そのような企業としての姿勢や、それが可能な安定性はキャリアを底支えする報酬となります。


まずはどこから?


今回は「7つの報酬」についてお伝えしてきました。さいごにお伝えしておきたいのは「どの報酬をどれくらい重視するかの度合いは、人それぞれ異なる」ということです。

これは極めて当たり前のように聞こえますが、それではあなたは同僚一人ひとり、これら7つの報酬のどれを重視しているかちゃんと把握できているでしょうか。マネージャーであれば、自分のチームメンバーと対話し、それを踏まえたマネジメントやリテンションができているでしょうか。

まずは、個々人の根本的な価値観も大きく関わってくる「自分にとっては何が報酬になるか」といった相互理解のための対話をしていくことが、この「会えない時代」には特に求められている気がします。


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