LINEに入社して考えた、人事戦略と組織能力のこと
LINEで一生懸命働いている青田努(@AotaTsutomu)と申します。ベンチャー採用 Advent Calendar 2018のトップバッターを務めます。よろしくお願いします。
まず簡単に自己紹介させてください。
ざっくり書くと ↓ こんな感じ ↓ です。紆余曲折ありつつ、今は楽しく暮らしています。
リクナビの学生向けプロモーションや、求人広告の制作ディレクターを経て、人事になったのが29歳の時のこと。
以来、リクルートグループやアマゾンなど「圧が強め」「怒涛の採用」「あの会社の人たちエキセントリックですよね」な会社を中心に、採用系のキャリアを歩んできました。今はLINEでおもに採用・育成系の領域を中心に、なんだか大変だけどバタバタがんばっています。えらいぞ自分。
ちなみにプライベートでは
こんな感じでバズったり
そこからの流れで
1日で3本、はてブのHot entry入りしたり
さらにここから派生してNewsPicksで
たぶん史上最高の5000pickいただいたり
あとは学生向けに話したキャリアの話が
意外と社会人にも刺さったりで、
おかげさまで3万view。
とりあえず、なんやかんやで今年はがんばりました。そこそこ濃かった。つかれた自分を甘やかしたい。
ちなみに2020年からは(設立審査が通ったら)i専門職大学で先生やります。未来の世界をつくる人をつくるのだ。副業ね、LINEは辞めへんで。
すみません、そろそろ本題。
最近気になることについて。
それはさておき、
どうなんでしょうね、最近の人事界隈。
リファラル採用、ダイレクトリクルーティング、戦略人事、No Rating、女性活躍、働き方改革、1on1、ティール組織、HRBP、採用広報、CHRO、副業、リモートワーク、理念浸透、People Analytics、HR Tech・・・ここ数年、SNSやメディアで新しい概念や事例を見かけることが増えてきました。
それに伴って、目立ちたがる人たちが分かったふりして玉石混交な記事書いたり勉強会とかイベントとか増えたり。それを鑑識眼さまざまな編集者やメディアが持ち上げたり。いいからみんな、ちょっと落ち着こ。
そりゃ加藤さん荒れるわ。
青田さんもme tooですよ。
河合聡一郎もぷんぷんしちゃうよ。別件だけど。
こんなことばかりだから「ティール組織なんておまえの会社の事業成長に貢献しないのに、なんで導入したがるんだよ。ティールにしないと死んじゃう病かよ」とかになっちゃうわけですよ。
いきなり「解」に飛びつかない。
先に HOWを求めない。
それにしても、人事というのは孤独なもの。社内の人には相談するわけにはいかない秘密ごとも多く、一昔前までは情報も少なかったし、人事施策は人に関わることゆえトライ&エラーしづらいので、他社事例が気になってしまうのも分かります。うんうん。
自社の置かれている業界が行き詰っていて、人事として状況を好転させたいがばかりに、バズワードに目が向くこともあるでしょう。なにそれすごそうみたいな。
でも、人事のつとめは結局「自社の事業と組織と人の課題に向かい合う」ことなわけで、これしかないわけで。他社の「解」=他社事例・ソリューションに安易に飛びつかず、人事として大事な自社の「問い」に向かい合う、これに尽きるわけです。
それでは、大事な「問い」は何か?
人事の考えるべきことは?
すごくシンプルに考えると、人事にとっての問いは、おもにこの3つかと思います。切り口は、1.事業特性、2.組織能力、3.人事施策。
人事の役割は「経営に資す、事業に資す」。あくまでも事業を伸ばしてこそ。そのために、これらのハードな問いから逃げてはいけません。
ただ、これだけ見ていてもレイヤーが高くて分かりづらいですよね。ということで、10年前のリクルートの事例で具体的に説明しますね(項目を少し補足して3つ → 5つにしています)。
リクルートが磨き上げてきた
すごい仕組み
これです。僕が何年か前にまとめたもの。どん!
ここ数年のリクルートは「分社化」「グローバル化」「サービスの多様化」「働き方改革」などが随分と進んだので、現在は上記のような感じではないかもしれませんが、少なくとも10年前のリクルートの事例は実におみごとです。
さすが50年間、人と組織とカルチャーを鍛え、磨きあげてきている会社。人事の仕組みとして、非常に美しいです。
それぞれ見てきましょう。
1. 事業領域 2. 事業特性
10年くらい前のリクルートでは、売上の約7割が人材サービス領域、約3割が販促支援の領域でした。これらの事業の特性は「景気連動性がムチャクチャ高い」ことです。
好況の時は多くの企業が求人するので人材サービスの売上はググッと伸びますし、販促にも積極的に予算を投下します。ただし、不況の時は逆。人材も広告も容赦なく絞りにかかります。まじ怖い。
3. キーとなる組織能力
そうなると「好況の時にググッと売上を伸ばして、不況の時にググッとコストを抑えたい」リクルートという組織には、おのずと高い「人件費の調整能力」が必要となります。
人を増やして(In)→モチベートして成長させる(Motivate, Grow)だけではダメ。コストの大半を占める人件費を不況の際に抑えられないと潰れるので、Outもセットで施策を準備することは必須となります。
4. 人事戦略 5. 人事施策
そのため、リクルートの人事戦略は「まずは優秀な人材を多く採用し(In)、早い段階から彼らのポテンシャルを引き出し(Grow & Motivate)、
一定の時期に一定の人が気持ちよく卒業、もしくは不況時に人員数を素早く絞れる(Out)状態を実現する」と言い表すことができます。
リクルートの強みについては、「採用」「育成」「モチベート」などに目が行きがちですが、他社がなかなかマネできないリクルートの真の強みは「Out」の人事施策群に基づく、人件費の調整能力あります。本当にすごい。
LINEに入社して僕が考えたこと
僕は2017年11月にLINEに入社しました。その経緯はこちらの記事にて。太っているのは気にしないでください。今はここから8kgくらい落としました。
2018年7月には人材支援室の副室長として人事を広く見る立場になりました。そして、先ほどのリクルートの例に倣って、自分なりにLINEの事業と組織と人事を考えてみました。
それがこちら↓です。今できていることも、これからもっと強化したいことも願望もあえて混ぜて書いていますが、僕の頭の中はこんな感じです。
入社してしばらくは「LINEの事業戦略ってどんな感じなんだろう?いろいろな事業があるから、事業ごとに持つべき組織能力も違うし、新しい事業もどんどん増えていくし」なんて考えていました。
Amazonというメガベンチャーにもいましたのでカオスへの免疫はありましたが、LINEもまたすごいなと。事業むちゃくちゃ増えるし。特に今週のこれ↓ やばい、エモい。
そして、いろいろ考えて見えてきた、自分なりの一旦の結論。
「そうか、"事業戦略に連動した人事戦略"というのが従来のセオリーではあるけど、LINEの場合は事業戦略がフレキシブルに変わりやすいので、それに連動した人事戦略は描きづらい。事業戦略と人事戦略は、そもそも考えるスパンが違うし。
だから僕は人事戦略ではなく、人事の組織能力にフォーカスしよう。逆説的に言うならばLINEの人事戦略は”事業戦略が変わろうとも、いかようにでも事業を支援できる組織能力を持つ”なのかなと。がんばるじょ」
Amazonのジェフ・べゾス曰く、「10年後には何がどう変わっているか?ではなく、10年経っても変わらないものは何か。それに投資し続けよう」。これに相当するものは何か、ということです。
人事戦略 < 人事の組織能力
それでは、LINEの人事に必要な組織能力は何か。事業戦略が変わろうとも、変わらずに必要となるものは何か。4つに整理してみました。
1. 最強の採用力
LINEの採用はなかなかのもので、中途採用だとリクルーター1人あたり100人くらい採用しているんですよね。BIG4クラスのコンサルティングファームですと、同じくらい採れていることもありますが、そうは言っても「ITコンサル」1ポジションで100名だったりします。LINEの場合は数多くあるポジション合計で100名規模。同業者ならこの凄みが分かるのではないでしょうか。すごみわかりみ。
もちろん、グローバルを見渡せば「5万人採用するぞ」と言っているエキセントリックな会社さんもありますので、まだまだ僕らは発展途上です。これだけ採用していても、充足できていないポジションも多い。ダイレクトもグローバルも強化していきたい。業務品質ももっと向上させたい。
だからこそ意思を込めて「最強の採用力」としました。僕はLINEを採用力最強企業としたい。
2. 最高の成長機会
実務で活きる力は「実践」で備わり「実戦」で磨かれます。事業の成長に行き詰まり、そのような機会を従業員に提供しづらい企業もある中で、ありがたいことにLINEは実践・実戦だらけです。
また、次々と新しい事業が生まれるLINEでは、その事業をリードするリーダーも意欲的に任せます(とはいえ、新会社の役員はLINE役員が兼ねていることがまだ多いので、ここからさらに任せにいくアクションが必要です)。立場が人をつくるというアプローチをとりやすくもあります。
ただし、フロンティアを切り拓く企業の宿命として「未知の課題」に突き当たることもしばしばです。のちにビジネススクールのケーススタディになるような仕事が社内にゴロゴロしていて、それ自体はすごいのですが、それゆえに参考になるような他社事例がありません。いろいろな事例を元にパッケージ化した研修屋さんのソリューションで解決できるようなものでもありません。
だからこそ、社内でもっと人が繋がって解決事例やLINEで活きたナレッジをシェアしあう、そんな仕組みや場をもっとつくっていきたいと考えています。
3. Speed & Flexibility
これはもともとLINEが持っている強みです。従業員数が増えて単体2000名を超える規模になっても、失われないように、意図的に強めていきたいと思います。
人事異動や組織改正が月に2回もあるなんて大変ですねと言われますが、いいんです。人事がちょっと大変になるくらいで事業が速く前進できるなら。
ぐちゃぐちゃしていて大変じゃないですか、とも言われます。大変です。でも伸びる会社とはそういうもので、むしろ事業部門にコーポレート部門が追いついていない方が、実は事業の成長としてヘルシーだと考えます(言い訳じゃないです)。
事業ごとによって人事施策が違うのは、不公平じゃないですか?とも言われます。僕はむしろ、違う事業に同じ仕組みで対応することの方がやばいと感じます。事業には事業ごとの「勝ち筋」があるわけで、事業ごとに最適な「組織のかたち」「ルール」があります。
僕はその違いを理解して、それぞれの事業において勝てる組織、それぞれの職種ごとで能力が最大限に発揮できるような環境づくりをサポートできるような人事組織を実現させたいと考えています。
4. プロとしての信頼
今までのLINEは若手メンバー中心に人事組織をつくってきました。いい人が多く、バタバタしつつも前向きで、僕はこのチームが好きです。メンバーにいい仕事をさせてあげたい、成果を出させてあげたいと思います。
今後、LINEはさらに大きくなります。事業も継続的に増えるでしょう。それにより、問題も多くなり、複雑になり、難易度が高くなるでしょう。そうなると、もう一段ブーストさせる必要があります。「若さ」「瞬発力」「フットワーク」に加えて、HRパーソンとしての要諦や原理原則を長年のキャリアで培ってきたベテランの知見が必要なフェーズに突入しています。まだまだ人を増やしていく必要があります。
たとえば、中途採用のリクルーター。すべては人から、採用から始まります。僕らと「最強の採用力」を一緒に築き上げていただく人たちが必要です。ダイレクト、グローバルなど、まだまだ攻めなければいけないテーマがたくさんあります。具体的なポジションでいうと ↓こんな感じですね。
次に、人事制度企画・組織開発の機能も強化せねばです。LINEの成長を加速させる人と組織の仕組みを考えて、今後のさらなるスケールを実現させるベースを築きあげていただける人が必要です。へるぷみー。
BPも重要ポジションです。事業・組織それぞれごとに発生する人事課題や、それぞれのビジネスを勝たせる人事施策を、ビジネスのパートナーとして現場とともにつくりあげてください。
加えて、LINEでは子会社・関連会社が続々と生まれています。少なくとも、1ヶ月に1〜2社くらい。これらの新会社をLINEグループに迎え入れるため、人事としての仕組み・インフラを構築・整備してください。
次いで労務。攻めのイメージが強いLINEですが、信頼できる守りやセーフティネットがあってこその攻めです。人が事業の成長の犠牲にならないように、労務の体制もより強化したいと考えています。
そして成長著しい福岡。キャッシュレス社会を自治体と推進するなど、その動向はLINE社内でも注目の的です。LINE Fukuokaの成長を支えるコアパーソンとして、人事に幅広めに関わってください。
さいごに、LINE Financial。Financial領域はLINE内でAI・コマースに並ぶ戦略事業として位置付けられていて、先日の戦略発表会では銀行業参入というビッグニュースも飛び出ました。人事として新しい世界をともに実現させてください。
あとはこちらもぜひ。
エンジニア3000人体制に向けて、人事として現場と一緒にあと数百人採用してくれるチャレンジャーを求めています。
エンジニア以外の採用もてんこもりです。年間4桁に迫る人数を採用しているのに、ほらほらまだ採用できるよ。さすがLINEさんや。
さぁ、君もこんな素敵なオフィスで働こう。僕は「青田さん、LINEは全席アーロンチェアですよ」と言われて決めました。人のモチベーションを下げないオフィスです。
最後に、やっぱり人。こういう素敵な人たちと一緒にはたらきませんか。