最近再読したBL小説
私はブームに波があるので、最近引いてた商業BL小説のウェーブが来つつあることを感じる。
去年のビッグウェーブは仕事が暇で暇すぎて一日一冊のペースで読んでたんだけど(仕事中にBL小説を読むな)、今は仕事がここ数ヶ月珍しく忙しく、癒しのために読んでいる。あーーー仕事やめてえ~~~。
それで、新しい本を読みつつ、一年(以上)ぶりくらいに唐突に読みたくなってお気に入りの中の数冊を読み返した。
再読なのになぜこんなに楽しめるんだ……最高か……。
小説って漫画と違って読み返す頻度がかなり低め&読み返したとしてもまるっと一冊は読み返さないことが多いので、結構忘れてる展開もあってとても充実した時間だった。
初恋の嵐(凪良ゆう)
「俺は将来、悪徳弁護士になって金を稼ぐんだ!!」大学生と偽って蜂谷(はちや)の家庭教師に現れた同級生の入江(いりえ)。目的のためなら年齢詐称も厭わない現実主義者だ。有名ラーメン店の跡取りで、将来が決まっている蜂谷は、自分と正反対な入江に驚かされてばかり。共にゲイだと知っても「お互い範疇外だ」と言い続けていたけれど!? 築き上げた友情の壁は簡単には崩せない――こじらせまくった永い初恋。(Amazonより引用)
去年三月頃のビッグウェーブ以降に読んだのでまだ記憶に新しいはずなのに、普通に新鮮に楽しめてしまった。いろいろツボすぎて。
蜂谷の献身ぶりが本当にすごくて……そしてここまで尽くされておきながらなぜ入江は全然自分の気持ちに気づかない!?というくらい、頭はいいのに恋に関してはてんで素人で鈍感で、そのアンバランスさが楽しい。
素人で鈍感というか……バカ?ひょっとして入江ってバカなのでは?と感じる瞬間も多くて読んでいて楽しい。
お互い「こいつとはあり得ない」というスタンスで来てしまっているので、本当に……なかなか……くっつかない!
気が付けばあれよあれよと言う間に時が過ぎていたりして、長期スパンで楽しめるお話。
実はこれ、凪良ゆうさんの『薔薇色じゃない』を読んだ後、こちらもかなりの長期スパンで展開されるお話だったので「そういや初恋の嵐もそういう感じの話だったな……」と思い出して読み返したのだった。
こういう構成のお話は、読み終わった後に登場人物に対して抱く感慨のようなものが強めだよね。こう、リアリティショーってわけでもないけど、誰かの人生の一部を長く覗いたような……。
刹那的な感情も好きだけど、長い期間を経てゆっくり熟成されていく恋心もまた、オツなものがありますな。
そして周囲の人間が魅力的に描かれているのも見どころの一つ。主役の二人だけでなく、二人の共通の友人である良太郎も、後に出会うラーメン屋の店主も違う方向に癖強めで読んでいて楽しい。
こじらせ、すれ違い(切ない系ではなく、アンジャッシュのコントみたいなギャグ)、親友と両片思い……。こんな感じの話が好きなら絶対満足できるはず。
そして番外編(こちらは漫画)も存在しているので読める。
めちゃくちゃ可愛い話です。
嘘つきと弱虫(久我有加)
地図マニアで人付き合いの苦手な音也は、街で学生時代の親友の麦人と偶然再会する。社交的で穏やかな麦人は実は駅メロマニアで、音也にとっては人生で初めての友人だった。だが弟から「女になりたい」と告げられた日に好きだと言われて激しく拒絶してしまい、以来四年会っていなかった。今は恋人がいるという麦人と、恐る恐る二度目の友人付き合いを始める音也だが……? 優しい嘘つきとがんばり屋の弱虫の恋。(Amazonより引用)
▲以前この記事でも書いたやつ。
人付き合いは苦手だけど根が優しくて純粋だから、いろんなものを一人の力で頑張ろうとする音也にすごく好感が持てる。
とにかく不器用で人付き合いもあまり上手とは言えない音也だけど、案外ちゃんと考えて自分の意思で行動していて(しかもそれは麦のおかげで変われたとかいうのではなく、恐らく生来から音也自身が持っていたもの)、自分なりにケジメを付けようと行動できる部分に、ああ、麦人くんはきっとこういうところに惹かれるんだろうなあと思わされた。
友達の少ない音也が、唯一の親友、麦人君を信頼するあまり嘘の「親友ならこれぐらい普通にするよ」を仕込まれていることに気づくんだけど、私はこれを読んでからというもの、友達いないキャラに「友達ならこれぐらい普通」と嘘を吹き込みたい衝動に駆られるようになってしまった。
前半が音也視点、後半の書下ろし部分が攻めの麦人くん視点になっているので、前半はなんていい奴なんだと思いつつ、後半を読んで「いい奴なだけじゃないな……」と思いつつ新鮮に読めるのもいい。
いい奴なだけじゃない、というか、それも含めて計算というか……。
音也以外は割とどうでもいい有象無象、みたいなドライな部分が垣間見えたりとか。
表紙がちょっと暗めだけど、二人とも一生懸命な可愛いお話。
不浄の回廊(夜光花)
中学の頃から想い続けた相手は、不吉な死の影を纏っていた──。霊能力を持つ歩(あゆむ)が引っ越したアパートで出会った隣人は、中学の同級生・西条希一(さいじょうきいち)。昔も今も霊現象を頑なに認めない西条は、歩にも相変わらず冷たい。けれど、以前より暗く重くなる黒い影に、歩は西条の死相を見てしまう。距離が近づくにつれ、歩の傍では安心して眠る西条に、「西条君の命は俺が守る」と硬く胸に誓うが…!?(Amazonより引用)
受けの歩がアホすぎて、攻めの西条にいつも呆れられたりドン引きされたりはたかれたりしているのが最高。
結構タイトルが重々しい雰囲気を醸し出してるけど中身はコミカルなシーンも多く(歩がアホだから)、シリアスホラーとかいう感じではなくオカルト要素のあるラブコメという感じ。ホラー嫌いな人でも読めるくらいそっち方面の描写は怖くないと思う。むしろ生きてる人間が一番怖いよね的なアレ(的なアレ)。
アホでバカで考えなしなところもあるけど、本人は一生懸命いろんなことを考えていて、何としても西条を救おうと必死なのがすごくよくわかる。そんなところが愛おしいし、女遊びが激しかった西条が徐々に歩にハマっていくのもグッとくる……。
歩が浮世離れしているのも、アホなのも、理由の一端として自分の家系とか体質ゆえみんなが当たり前に学生生活を謳歌していた時にそうできなかったという事実があるのも納得できるし。
いろいろあって、それなりに自分自身特殊な状況で育ってきたのに底抜けに明るく毎日を生きられるのは、本当に歩の魅力だなあと思う。そりゃ西条も毒気抜かれるよな。
ただ、人並みに傷ついたり迷ったり怒ったりはするし、そんな葛藤を経てもなお頑張ろうとする健気な姿に人柄が表れているし、西条が歩のえっちな体だけではなくそういう内面部分にも大いに魅かれたであろうことは想像に難くない。
西条も西条で、ただのアウトローキャラではなく、知れば知るほどその生きざまが人間味を帯びてきて、「何を考えているかわからない」キャラから人となりが見えてくるのが面白いし、西条に対する好感度もちょっとずつ上がっていくのを歩と一緒に体験できる。西条だけでなく、周囲のキャラみんな良くも悪くも人間味があるのはいい作品の条件と言っても過言ではないですね……。
これはもともと姉が所持していて借りて読んだんだけど、衝動的に読み返したくなりKindleで買ってしまった~。そして続編も含めて一気に読み終わったくらいには二度目なのに面白かった。エロも豊富だし飽きない。
そしてこの話には続きがある!▼
二人暮らしのユウウツ 不浄の回廊2(夜光花)
口が悪くて意地悪で、超現実主義者の西条希一(さいじょうきいち)との同棲生活も半年──。霊能力を持つ天野歩(あまのあゆむ)に、ポルターガイストに悩む乳児の母親が相談にやって来た。ところが、その女性は西条と過去に関係があり、赤ん坊は西条の子だと衝撃の告白!! さらに、同窓会で再会した元同級生が、西条との仲を取り持つよう迫ってきた!? 甘いはずの同棲生活に不穏な空気が流れはじめて──。(Amazonより引用)
相変わらずな二人がみれる続編、嬉しすぎる。
小説って基本的に一冊完結であることが多いと思うので……大好きな作品の続編、本当に心を潤してくれる。
同窓会というイベントがあることで、西条は本当に歩のこと好きで一緒にいるんだなあと(当たり前だけど)しみじみ実感するし、勝手に、人気者の西条が好きなのは特に目立った存在でもないし影も薄い、全然イケてない歩なんだなあと思うと優越感すら覚える。
その辺はやっぱり、「人気者とくっつくBL」の醍醐味ですね。
オカルト関係の話ももちろん出てくるけど、今回も怖さはさほどなく、どちらかというと歩と西条のあれこれが中心な感じ。いつでも笑顔で明るい歩が中学の頃抱えていたことと、それとの決別。
余談だけど「ケーバン」という単語が出てきて、ハッと時代を感じた。挿絵もガラケーだし。
だから何ってわけじゃないけど、しみじみ、いい小説っていうのは全然古臭く感じないんだなあと思った。
(余談だけど、ラインとか携帯関連用語とかは、時代が変わる可能性を考慮して極力固有名詞を使わない、という手法を取る――ラインはSNSアプリ、スマホやガラケーは携帯電話、みたいにして書く主義のアマチュアの書き手さんも結構いるみたいだけど、私は今となっては古臭いツールを使う話も、「その時代を生きていた」感があって好きなので気にしないタイプ)
因みに更にこの後の話の番外編なんてものもあって、相変わらずな二人が読める。
分冊版ありがたいねえ……。
溺れる戀(高遠琉加)
富裕な成實家の末っ子として生まれた成實祥彦は、ある使命を持って豪華客船青洋丸に乗り込んだ。倫敦までのこの船旅は祥彦の人生を決める旅だった。そこに、大学時代の同級生・伊藤龍次が現れる。彼がなぜこの船に? かつて、伊藤は祥彦のなかに痛みを残し、そして消えたのだ。いつでも祥彦を捕らえて放さなかった視線に、再び祥彦は囚われるようになり……(Amazonより引用)
▲これも以前記事で紹介したやつ。
しかし、今はページの不具合が解消されたのと引き換えに(……なのかはわからないが)、Kindle Unlimitedの対象ではなくなってしまった……。
でもどうしても読み直したかったので買いました。
この昭和の豪華客船という雰囲気がたまらない。受けは世間知らずの金持ちのボンボン(超好物)だし。
煌びやかな世界の中に潜む、家柄というしがらみ、そして家を救うための結婚、頭ではわかっていても心が本当に欲しているもの……。
攻めの伊藤の正体というか思惑というか、考えていることが本当に最後まで全然わからないんだけど、飄々として少し怖い雰囲気のある伊藤がそのスタンスを崩して必死になるシーンが非常にぐっとくる。いっそ快感ですらある。
個人的には成實と伊藤が出会った大学の時の話が好き。成實は今よりますます世間知らずでウブで可愛いし、伊藤の底の知れなさというか、違う世界の人みたいな感じと、確実に惹かれ合っている様子がたまらない。それなのに回想シーンを読み終えた時に残るのは切なさで……。
基本的に与えられたものを享受してきて自分で自分のことを決めたことがない成實が自らの意思で行動するところが見どころ。意外と肝が据わっている……。
常に遠くて広い世界をみている伊藤とは意外とお似合いなのかも知れない。
どうでもいいけど、今回改めて買って読み直したら、前回読んだ時のマーカーが残っていて、「伊藤の硬そうな喉仏が上下した」というところにラインが引かれていた。そこが私のツボか……。
おわりに
急遽車を買い換えることになり本気で金がないので、以前読んだやつを再読するのはとてもいい考えだと思うんだけど、結局半分以上買ってるのでだめですね。
漫画とかゲームとかでもそうだけど、もちろん小説も、世間から一般的に評価を受け、認められている、いわゆる「出来がいい」作品イコール自分の好きな作品ではなくて、ツッコミどころ満載だったりなんかご都合主義的だったり、お約束だらけの話だったり、そういうのの中でも意外と「でもなんか読み返しちゃう」作品って結構あったりする。
今回ここに挙げたやつは私の中では文句なしに人に勧められるやつばかりだけど、まあいろんなレビューみてるとやっぱり低評価レビューもあったりするし、普段読書してると逆に高評価なのに読んでみたらNotForMeだった話も山程あるし、結局「私が好きな珠玉の一冊」を見つけるために日々本を読んでいるのかも知れないな。
と、金がなくいろんなものを再読している最近、特に実感した次第。