青春第一期終了の話
私の青春がひとつ、終わった。何事にも優柔不断な私が今この場所に居るのは間違いなく彼らのお陰で、熱しやすく冷めやすい私がこんなにも長く追いかけ続けたのも彼らだけだ。何事にも緩くたのしく楽な方にがモットーなのにいつの間にかこんなに本気になっていて、しんどければ離れちゃえばいいじゃんの精神はこの場合においてどこかへすっ飛んでいた、人格形成にまで影響が出ている。
ムックのライブが何よりも好きだ。私にとって何度行ってもこんなに楽しくて最高なこんな場所は、世界中他のどこにもない。初めて行ったホールライブで全てをかっ攫われてから、怖いと思いながらスタンディングライブに行った。色んな場所の色んな箱に行った。地元にいた頃飛行機に乗ってまで遠征をしたのはムックだけだし、そのお陰で上京する決心が着いた。私の生活には当たり前にムックの音楽があって、日常には当たり前にライブが組み込まれていた。それで、そのステージにはいつも必ず、4人がいた。
あの「大切なお知らせ」から武道館、ツアー、配信、延期、色々あって思うことも沢山あるけれど、とりあえずファイナル2日間に絞ってざらっと大きな心境の流れだけを書いてみたいと思う。
こんなにもライブに行きたくないのは初めてだった。連番で水戸一日目を取ってくれた友達をレンタカーの助手席に乗せて、何度も「やっぱり今日このままデートってことで帰る?」「帰っちゃおっか」という会話をした。だけどここまで来て行かないのはやっぱり逃げだし、ちゃんとここで死刑にされておかないと、駄目なのだ。反芻するあの日武道館で憶えた喪失感をミルクティーで流し込んでヒロサワシティ会館の赤い客席に座った。
この日の二時間半のライブの中で私の気持ちを一番大きく変えたのはメディアの銃声だった。初めてムックを見た日の、私が知っている感情の表現というものが全て塗り替えられた最初の記憶がフラッシュバックして、あの曲をこの時期この日この場所で歌う逹瑯から目が離せないまま、この人がステージに立つ限りはいつまでもついていくんだろうなと思った。それでも閉演後は嫌だ!ここに骨を埋める!と喚き散らかしたいのを我慢しなきゃならなかったけれど。
最後の日、配信で見たそれに私から語れることなんてあまり無くってとにかくいいライブでした、ということに尽きるのだけど。
ずっと、不思議な感覚だった。こういう状況でステージを見た時にやはり4人のムックが大好きだということが明らかになって、でもその気持ちが大きくなればなるほど寂しいだとか悲しいだとかという感情が萎んでいくのだ。兎に角こんなに最高な物を見せ続けてくれてありがとう、とこんなに愛されているんだ、ということでいっぱいで。
これは武道館に始まり、ツアーを大体ちょうど半分見たわたしの個人的意見なんですが、今ツアーは声が出せないことによって時にとても崇高な、神懸り的な空気が流れる時があって。武道館では正直その空気がとてもとてもしんどくて、見送ることができないかと思った。だけどそこからはこれまでの箱と変わらなくて、皆がライブの楽しさを思い出して気持ちを作っていくのを肌で感じた。公演を重ねて最後が近づけば近づくほど繰り返すように「良いライブになってる」って逹瑯が言ってたのはその空気感の変化にもあると今になって思う。メンバーはいつも以上にこちらの気持ちを汲み取ろうとしてくれたしなによりみんなの気持ちが混じり気なくひとつになっていた。そして後半から導入されたハミングで、私達がムックの音を聴きたいと思ってるのと同じように彼等も私達の声を聴きたいと思ってくれていたんだなと、それだけで涙が出た。「お前らの声が聴こえる!」中野サンプラザの10列目から見た逹瑯が無邪気な笑顔でそう言った光景は、水の膜で歪んだ形で私に焼き付いた。
武道館からツアー中はずっとアンコールで暴れ曲、ダブルアンコールで泣かせの流れだったのに最後の最後では泣かせてから暴れさせて笑わせて終わるのがどこまで行ってもムックで。不器用な奴等が不器用な奴を送り出す最大の敬意として絶対に笑顔で終わらせることへの執念が感じられて、ああこれならこの先どうなったとしても「4人で作ったムックの形」はきっと守られていくんだろうなと思った。
ちょっとの寂しいと沢山の感謝って言ったけどちょっとって言うのは本当は嘘でめちゃくちゃ寂しい。感謝が大き過ぎるだけだ。でも結局一番寂しいのは4人な筈で、4人らしい別れで4人の納得のいく終わりが出来たのだから、これを始まりにしてこれからも3人の続けるムックを追い続けようと思う。SATOちには絶対に幸せになって貰いたい、なって貰わなきゃ困る!そんで3人は寂しいなって思いながらライブをして、SATOちはどの夢烏よりも寂しいと思いながらライブを見ていればいい。私は、他の夢烏達もきっと皆、SATOちを見送ったことを忘れない。この別れの痛みを胸に刻み込んでそれぞれ歩いていく。それがどんな絶望も悲しみも肯定し続けてくれたムックらしいこれからなのだと思う。
本当にありがとうございました。4人のムックを見て聴いて感じて得てきたものと感情全部が一生大事にできる宝物になりました。今日までのこれ達は引き出しの奥底に、新しく見せて聞かせて感じさせてくれるものはまた別な引き出しに。これからも楽しみにしてます。
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