古本屋さんにて。
久し振りの尾道へ到着。先ずは「おふくろの店」で巻寿司3本とおはぎ2パック購入。
尾道市役所パーキングへ駐車し屋上の展望台散策のち飲屋街歩き回り土日は昼間営業している古本屋さんへ向かう。
新年挨拶などしつつ近況報告
先客2名さんが本を手にして会計待ちの様子なので
どうぞどうぞと番台?を離れる。
店内散策
探していた本は見つからなかったけれど
面白そうなのがいくつもあって困る。
どうしても棚に戻せなかった4冊を手にして
これを下さいと会計済ませる。
本を受け取りながらの四方山話
店主が京都出店した時の話や
YouTube神田伯山TVの編集センスの良さの謎や
私が年末に観た映画「パーフェクトデイズ」の話。
主人公が立ち寄る写真屋店主がなんと翻訳家の柴田元幸さん!愛想もセリフもなくて凄くいい。
他にも主人公が立ち寄る古本屋さんがあってね
そこの店主(犬山いぬこ)がまたいい!
などなど話は尽きず…
ある日こんな事がありましてねと店主さん
散々お客さんとお喋りしてとても受けが良かった晩〜いやぁ今日はいい日だったなあと上機嫌でうちに帰るとカミさんがぼやくんです
それでアンタ本の売上はっ?て。
「アンタねぇ古本屋でしょう?
お喋りが受けたって喜んでんじゃないの、
油売ってないで本を売りなさいよ!
声を枯らすまで喋ってんじゃないの!
明日はアンタ黙って本を売んなさいよ!」
面白いなぁその話。
番台近くの椅子に腰掛ける
まるで火焔太鼓の古本屋版じゃないですか?と話をふると店主はにやり。
それをまくらに即興落語の幕開けで…
笠智衆の様な頬のこけた客が
ふらーと店の前を通る。
店の入り口に積んであるまだ値札をつけていない
引き取ったばかりの古地図の束に足を止める。
しゃがみ込み手に取る。これは…
「他にもこの様な古地図はありますか」
本を積み上げた間を通り抜け薄暗い店の
番台に座る店主に声を掛ける。
「え?表の?はいはい。まだ解いていない古地図が屋根裏部屋に積んである事はありますが…」
「そうですか 沢山ありますか。それはそれは。ではどうでしょうかそれを◯×大学まで
ご足労願えますか?」
「は?はい どちらの大学で?ええええよく存じ上げております。失礼ですがお名前は?はいはい承知いたしました。それではあとでお持ちいたします。」
「おい!見たか!店へ出す前から売れたじゃねえか!」
「何言ってんだよ、お前さん!
あの先生はねまだモノを見てないんだよ
そこへお前さんが色褪せた埃だらけの古地図の束を持ってってごらんよ!
何ゴミを持って参ったか!コヤツ返すな!
庭の松の木に吊るせ〜!って
鞭で叩かれ一晩中ほったらかしになってさ
ムカデははってくるわ、
野良犬は噛み付いてくるわ…ほら行っといで!」
やなこと言うなあ…
店主とおかみさんのやり取りが目の前に浮かぶ
店内のストーブの音
番台から聞こえてくる心地よい落語のリズムに
身を委ねてると…
ぎーっギギギ〜
軋ませながら店の戸が開く。
ふたり分の靴音とともに
こんにちは〜という小さな声でお客さんが入ってくる。
店主の作った落語の世界から現実の時間に戻る。
商いの邪魔をしてまたカミさんに叱られてはいけないので立ち上がる。
ありがとうね。とっても楽しかったです。
また来ますね。
ありがとうございました、ではまた
いらっしゃい
店内に入ってきたお客さんに挨拶している声を背にきしむ戸を開ける きぎっ
締める ぎぎぎ〜っぎ。