コミックエッセイのほうがいい

エッセイを書くんだったら、コミックエッセイのほうがいい。
絶対的にそうだと思う。

私は漫画家になれなかった人間。
いくら絵を描いても巧くなることなんてなかった。
でもそれは正しい努力をしていなかったからだと大人になって知った。

「模写がいいらしい」
そんなことも知らず、子供の頃は想像でずっと絵を描いていた。
描きやすいからバナナの絵を描いていた。
でもその曲線もあんまりだった。

そう、私は手が震え体質だったのです。
さらに手汗体質でもあったんです。

ある日、週刊少年ジャンプを読んでいて、一休みすると、
なんと手が血だらけになっていました。

「紙の切れる力、半端無い!」

と思っていたら、
表紙の赤い塗料が手汗で溶けだしていただけでした。

私が漫画を描いていた頃はまだ紙が主流で、
当然紙で描いていたので、手汗との格闘の日々。
結局、一年くらい描いて諦めました。

エッセイを書くんだったら、コミックエッセイのほうがいい。
絶対的にそうだと思う。
でも書けない。

じゃあコミックエッセイを文章で超えるしかない。
文章が最も適切だと思わせる。

実は私、詩を嗜んでいまして、
ココア共和国という詩誌で、いがらしみきお先生から賞を頂きました。

漫画諦めたくせに、漫画家から賞をもらうという、
「どういうユーモア?」みたいな人生を歩んでいる途中です。
よろしくお願い致します。

さて、週刊少年ジャンプで連載している【僕とロボコ】には、
詩(ポエム)でボケる一枚絵のシーンがありますが、
やっぱりあれは文章でやったほうがいいんじゃないかなと思っています。

決して急に【僕とロボコ】批判したわけじゃないですし、
【僕とロボコ】は本当に大好きです。毎週欠かさず拝読しています。
【向こう見ずくん】の頃から気になっていました。
【向こう見ずくん】の友達の母親を
「あの女」と呼ぶの、めっちゃ好きでした。

よしっ、これくらい古参ぶれば大丈夫だろう。
話を本筋に戻します。

詩はやっぱり文字だけで表現したほうがいいんですよ。
情景は脳内に咲かせればいいだけの話。

というわけで、ここで私の詩を一発掲載させましょう。
”詩を一発掲載させましょう”という文章を、
貴方がお読みしたのは多分初めてだと思います。

詩ってそういう言い方しないから。

でも私の詩はもう、一発掲載させましょう、なんです。
実は私の詩、揺さぶりたい感情が笑いなんです。
【僕とロボコ】のような、
「こんなとこでポエムw」みたいな笑いじゃなくて、
本気のアッパーカットなんです。

それでは、
ギャグ漫画家になれなかった人間の本気のアッパーカットをご覧ください。

■■■
《全てに嫉妬する》
陸は腹立つくらいに全てを立ち上がらせる
【土俵入りする二人の力士、の絵】

土は苛立つほどにパワーを授ける
【力士が土を撒き、指に付いた土を軽く舐める、絵】

草は小馬鹿にするように瑞々しく生き甲斐を与える
【力士がぶつかり、何らかの水が飛び散る、絵】

花は嘲笑するかのように元気を振りまく
【真剣勝負なのに、何故か笑っている力士、の絵】

蝶は見下すように舞い、自由を感じさせる
【観客席から大きい音が鳴り、両力士が驚き飛ぶ、絵】

空は踏み躙るように、輝いている
【両力士、一旦空を見上げてからお昼寝タイム、の絵】

雲は嫌悪感を抱かせるほどに、雄大に笑っている
【観客席からふわふわな座布団を投げつけられる、絵】

雨はこちらを殴るほどに、冷静さを教えてくれる
【両力士が改めて、握手をし、まわしを掴み合う、絵】

海は劣等感を植え付けるように、大きく包み込む
【力士それぞれがそれぞれを包み込む、絵】

網は罠にかけるように、大きく包み込む
【包み込み合った力士は合体し、一人の力士になった、絵】

半魚人はニヤつくように、情けない話をし始めた
【その力士と半魚人が相撲を始める、絵】

半魚人の妬みは、めっちゃ面白い話に昇華されている
【ニュース速報が流れ、試合中なのに力士が勝ちと報道】

半魚人のネット掲示板は、優しい居酒屋ノリ
【数分後、半魚人が普通に負ける、絵】

半魚人のSNSは、アイコンがウキウキの自画像
【半魚人のSNSで“半魚人”と検索すると半魚人、の絵】

半魚人のオフ会は人間もいて、全員情けない話をする
【半魚人と人間が肩を組んで笑っている、絵】

半魚人は憎たらしいくらいに明るくて楽しい
私もそうありたい
【半魚人の銅像を奉っている村、の実写】
■■■

どうですか?
これがギャグ漫画家になれなかった人間の末路です。

詩には抒情詩とかいろんなジャンルがありますが、
これはもう末路詩ですよね。

レトリックは絵です。

……コミックエッセイというか、コミックにしろよ、
と言いたい気持ちは分かります。
僕もそう思います。

でも待ってください、これは文字じゃないとダメなんです。

例えば、

【力士が土を撒き、指に付いた土を軽く舐める、絵】

の部分、これ絵だと一発では分かりづらくないですか?
もし仮に絵だとすると、
「茶色い粉を撒いて、舐めているから黒糖かな?」
と思ってしまう場合もあると思うんです。

でもこうやって全部文字で表現することにより、
100%読み手の脳内に情景を伝えることができるんです。

私はこれでコミックエッセイを超えようと思っています。
課金してください。

今まであんまりお金なんてみたいな態度をして、
創作活動を6年やって来ましたが、つい今、言いました。
課金してください、私に。

いや
絶対今じゃないだろ、それ言うの。

セルフツッコミしつつ、次の詩に参りましょうか。
詩です。
詩ですよ?
もしかすると詩じゃないって言う気ですか?

「貴方の書く詩は詩じゃない」と、
既に去年、言われているので、
それはNGワード設定しています。

はい、次いきましょう。
こっちはコミックエッセイ超えるために腕をブンブン回しているんだよ!

■■■
《笑ってください》
笑ってください そんな顔をしないでください
そんな顔をされたら 周りの空気が悪くなります
【小籠包のデカすぎる湯気でえずいている人たち、の絵】

貴方の気持ちなんて どうでもいいんです
そもそも 貴方ごときが 雰囲気を壊さないでください
【崩れた小籠包の中から青い血が垂れてきている、絵】

貴方に割くリソースなんて無いんです
貴方の存在は歯車以下なんです どうか、わきまえてください
【小籠包が歯車に挟まり、ねじられ汁になっている、絵】

笑ってください 貴方はバカにされています
だから私たちが貴方を笑うように、貴方も笑ってください
【漫才師のセンターマイクに小籠包が刺さっている、絵。
 笑っている観客の口に小籠包の肉汁が入っていっている】

笑えば健康 ワッハッハ
バカみたいに笑っていてください
【大きなせいろの中で笑っている子供たち、の実写】

貴方はこのチームにいらない存在です
何で貴方は私たちに合わせて、イジメをしないんですか?
そのせいで今度は貴方がイジメられる側になってしまった
【大きなせいろの中で一人、
 小籠包マンが子供たちから蹴られている、実写】

早く、このチームからいなくなってください
私は貴方のことをイジメたくはありません
【小籠包マンが
 アツアツの酢醤油シャワーを浴びている、サービスカット】

この場を迅速に去って、健康に笑っていてください
私たちに関わらず、どこかで長生きしてください
このチームは腐っています
もうダメなんです
既に終わっているんです
貴方は死んだようにいなくなり どこか遠くで笑って生きてください
【絵無し】

ここまで言っているのに、どうしているんですか
もしかすると本当のバカなんですか
【小籠包がテーブルに運ばれてきたら即食べる、2秒のバズる用の動画】

本当のバカなんですか
【日本代表の得点シーンを貼ったSNSの記事に返信でよく貼ってある、
 サポーターたちがスタジアムで喜んでいる、GIF動画】

無理ですよ
中に残って改革するなんて
貴方は本当のバカなんですね
【大きな小籠包の中からズルリと顔を出している小籠包マンが、
 吹き出しで「ニッスイの肉汁革命!」と言っている、劇画】

(だから好きです
 私の気持ちがバレないようにイジメてあげます)
【夜の新宿の空撮】
■■■

ほら、コミックエッセイには動画とか載せられませんが、
文字なら簡単に表現できてしまいます。
みんなこれをやればいいのに。

発明なのか手抜きなのかの二択の場合、絶対手抜きなんですが、
動画編集もできない私にはこれしかできないんです。
まあ文章だと自分のペースで読めますからね。

えっ?
詩じゃない?
改めて言いますねー、
まあ確かに詩で
「ニッスイの肉汁革命!」って書いてあるの、見たことありませんよね。

でも待ってください、
マヂカルラブリーの漫才論争の時を思い出してください。
あれって、漫才に詳しくない人ほど
漫才じゃないって言っていましたよね。

日テレのダンスデイで青春応援団我無沙羅論争の時を思い出してください。
あれってダンスに詳しくない人ほど
ダンスじゃないって言っていましたよね。

最前線で活動して、審査しているプロが認めているのだから、
それはもう、そうなんです。

ただダンビラムーチョの漫才で
森山直太朗の歌を歌っているネタは漫才じゃないと思います。

ダンビラムーチョ論争、楽しみだなぁ。
きっとM-1の決勝いくと思うので。

というわけで私の詩は詩です。
そもそも詩は本人が詩と思っていれば詩です。
ほら、詩っぽい、ぽい要素はあるでしょ?

良くない言い方ということは分かっています。
でも、ぽい要素はあるでしょ?

絵じゃない部分が限りなく、ぽいでしょ?

「ぽいでしょ?」の一点突破で活動する私、伊藤テルと申します。
以後お見知りおきを。
(noteでのハンドルネームは青西瓜ですが、
 公募では伊藤テルを使用しています)

まああれなんですよ、
「貴方の詩は詩じゃない」と言われた時、大変だったんですよ。
最高の気分で旅行から帰ってきたら、あんなサンドバッグになっていて。
(実際どうだったかはツイートを保存していないので、
 今となってはよく覚えていませんが、
 私の気持ちとしては、すごい勢いで叩かれていて、
 創作者として潰れる寸前でした)
向こうの意見にめっちゃ”いいね”付いているしさ。
旅行から帰ってきたら、すぐに
集英社ノベル大賞の四次選考祈願の予定もあって、
弥彦神社に行ったんだけども、何かもうSNSが気になって、
ちゃんと祈願できなくて、結局四次落選ですよ。

さっきから集英社好きだな! 私!
創作大賞のジャンプノベル部門も投稿したいなぁ。

えっ、
エッセイって思いつきをそのまま書き殴っちゃダメなんですか?

私のエッセイはリアルタイム・エッセイということで、
よろしくお願い致します。

えっ、
エッセイってテーマがあったほうがいいんですか?

それはありますよ、
コミックエッセイを超えるエッセイを文で書く! ですよ。

あっ、
もう超えました?

あっ、はい、はいはい、なるほど、なるほど、

超えていないってさ。

でも大丈夫、私はもう一本、詩を用意しています。
これでコミックエッセイを超えてやりますよ。

■■■
《高速餅つき》
高速餅つきをされた
私の目の前で
【臼の中の餅を二匹の天狗が鼻で高速突きしている、絵】

あんな辱めを受けたことは無い
あんな目の前でペチペチと音を立てられるなんて
【バスローブの天狗が恥ずかしそうにホテルの廊下を歩いている、絵】

咀嚼音じゃん ヌーハラじゃん
攻撃的じゃん 放ってるじゃん
劇場型じゃん 巻き込むじゃん
【芋煮会の大きな鍋の中に落ちてしまった天狗、の絵】

周りは盛り上がっている
私がおかしいのかな
【拍手している大勢の人たちの手はいちごジャムでベタベタ、という絵】

私がおかしいから 嫌に感じるのかな
だったら嫌だな
私はおかしくありたくないから
【いちごジャムベタベタの手で草むしりをしている町内会、の絵】

この世は誰基準で行なわれているの?
ちゃんと気持ちを平均化されているの?
【天狗の鼻の長さが全部揃っている町内会、の絵】

何で町中に門松なんて飾られているの?
門松なんて設置したら竹の中に壊れた傘を捨てられても文句言えないよ
【門松の竹の中に天狗のお面が捨てられている、絵】

私の感性ってズレているのかな?
だったら嫌だな
私はこの世で一番一般的な存在でありたい
【いちごジャムまみれの天秤、の絵】

ブレたくない
ズレたくない
フレたくない
【いちごジャムまみれの天秤の両皿に天狗がアゴを乗っけている、絵】

真ん中の位置に留まりたい
個性なんていらない
いる個性があるとしたらそれは一般的だけ
【一般的な天狗、の絵】

普通になりたい
普通でありたい
【一般的な天狗が軍手をしながら草むしりをしている、
 周りの町内会はいちごジャムベタベタの手で草むしりしている、絵】

高速餅つきに対して盛り上がることが普通なら私はそれがしたい
でも今はどう考えても辱め
目の前であんなペチペチペチペチ
【臼の中の餅を二匹の天狗が鼻で高速突きしている、絵】

ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
【絵無し】

苦しくて泣いていた
【顔にいちごジャムをぶつけられた天狗、の実写】

16小節のペチペチ音の圧に負けてしまった
【芋煮会の大きな鍋の中に落ちてしまった天狗、の実写】

何これ
正月なのに
正月から何なの?
無礼講過ぎじゃない?
【姪っ子に吹き飛ばされて、おせちに座ってしまった天狗、の実写】

私はこんなことまで認めていない
こんなことも認めないといけないならもう普通なんていらない
【夜の東京タワーに天狗の面が刺さっている、合成写真】

逃げ出した
三が日から
富士山は逆さになって
初日の出は線香花火のように黒くなって落ちていった
門松はロケットになって宇宙の果てに飛んでいき
鏡開きのおじさんたちが溶けだした
終わり 終わり
全部終わり
【新宿の夜景、航空写真】

だから始まるんだ
【天狗がいちごジャムで滑って転ぶ映像の逆回しGIF】

一年の計は元旦にあり
私は生まれ変わるんだ
【町内会レベルの芋煮会、の実写】

なりたい自分になれなかった自分も生きている
心臓が高鳴っている
【つきたての餅が階段からずり落ちそうになっている、絵】

めでたい色に染まっていく
【練乳をゆっくり顔の上から垂らされている天狗、の実写】
■■■

天狗の赤と練乳の白で、紅白というわけですね。
そんな解説をしてほしいという顔では、なさそうですね。

でもこれが私の本気のアッパーカットなんで。

まあそうですね、

エッセイを書くんだったら、コミックエッセイのほうがいい。
絶対的にそうだと思う。

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伊藤テル(青西瓜)
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