株式会社と合同会社の違いとは? 5つのポイントで比較!
事業を起こそうとした時、最初に悩むのが「運営体をどうするか」というポイント。
個人事業主の状態でビジネスをするのか、それとも法人を作るのか。法人の中でも、会社法人にするのか、一般社団法人などその他の形式ととるのか。
一番良くあるのは「会社法人を作ることにしたけど、株式会社と合同会社、どっちがいいの?」という悩み。
所有と経営が=でない株式会社、=である合同会社
株式会社は、出資者以外の人間が経営を行うこともできる。
株式会社と合同会社は、営利目的の活動を行う法人組織であるという点では共通しています。また、資本金を出資することで設立される組織という点も同じです。
ただし、株式会社が経営権を「株式」という形で分割し、出資者以外の人間に経営を任せられるのに対し、合同会社では基本的に出資者と経営者が同一の存在になります。
わたしたちは証券会社で上場企業の株を買い、株式会社の一部を所有することができますが、経営は行っていませんよね?
株式会社と合同会社の様々な違いは、基本的にはこのような組織形態の違いによって生まれています。
1.設立費用の違い
自社の形態を株式会社か合同会社か悩む時、まず気になるのが設立費用の違いでしょう。
株式会社はおよそ24万円程度で設立できるのに対し、合同会社は半分以下の10万円程度の費用で設立することが可能です。
両者の設立費用内訳は以下の通りです。
株式会社
登録免許税:15万円〜
定款認証手数料:5万円+謄本代
収入印紙税:4万円(電子認証の場合は不要)
合同会社
登録免許税:6万円〜
定款認証手数料:不要
収入印紙税:4万円(電子認証の場合は不要)
さて、大きな違いは登録免許税の違いと、定款認証手数料の有無であることがわかります。
所有と経営が分離している株式会社は、所有者・経営者の間でトラブルが生じる可能性があります。そこで、トラブルの種になる会社ルール(=定款)を第三者に認証してもらう必要があるのです。その分、費用がかかるわけですね。
もしも「少しでも安く会社を作りたい」と思うなら、合同会社のほうが適していることになります。
2.信用度の違い
株式会社も合同会社も、それ自体で組織の信用度に違いが出るわけではありません。
それでも、日本ではまだまだ株式会社のほうが一般的であるため、人によっては「合同会社?珍しいけど取引をしても大丈夫かな?」と不安を感じる方がいるのも事実です。
ただし、Apple JapanやAmazon Japanなど、特に外資系の有名企業の間で合同会社という形態を選ぶ事例が増えてきています。そのような変化もあり、合同会社の信用度の低さは軽減されつつあります。
3.ランニングコストの違い
設立費用だけでなく、運営コスト、いわゆるランニングコストにも多少の違いがあります。
ビジネスをまったくせず、ただ会社を存続させるだけでも、例えば以下のようなコストがかかります。
株式会社
①法人住民税:最低7万円
②決算公告費用:6万円
③役員の重任登記費用:1万円
合同会社
①法人住民税:最低7万円
②決算公告費用:0円(不要)
③役員の重任登記費用:0円(不要)
①の法人住民税は、業績に応じて支払われる税金ですが、利益が0円の場合も最低7万円は支払う必要があります。
②の決算公告は会社の業績(決算)を公に告知すること。外部に株主がいる可能性のある株式会社では、これが義務付けられており、手続費用が6万円必要となります。
③役員の重任登記とは、任期を終えた役員を再任し、改めて登記を行うこと。株式会社の役員には概ね2年の任期があるため、2年に一度重任登記手続きと費用がかかります※非公開会社の場合、任期を延ばすことも可能です。
ランニングコストの面でも、合同会社のほうが有利ではあります。しかし、会社経営を行おうとしている方にとっては、無視できる程度の費用ではあります。
4.上場可能性の違い
株式会社と合同会社では、資金調達の自由度にも違いがあります。会社の所有権を株式という形で分割できる株式会社は、創業者の株式の一部を売却しするなどして資金を調達することが可能です。
また、会社がある程度成長すれば、上場という形で、一般から広く資金を調達することも可能です。
一方合同会社は、社員(※)からの出資または融資でしか資金調達することができません。
もしも将来会社を上場させたい、大きくして外部に売却したい、そんな思いをお持ちの方は株式会社という形態を選ぶ必要があります。
ただし合同会社として設立した会社を、あとから株式会社に変更することも可能です(費用はかかります)。
※この場合の社員とは従業員ではなく、出資者のことです。
5.議決権の違い
「大株主」という言葉を聞いたことはありますか? これは起業の株式の大多数を保有している株主のこと。
株式会社の場合、議決権はその人が所有している株式の割合によって変わります(1株1議決権)。株主総会では多数決で議決が行われますので、たくさんの株を持っている人ほど、発言権が増すことになります。仮にある企業の株式を50%以上所有している人がいた場合、その方は企業のあらゆる決定を左右することができます。
一方、合同会社では議決権は出資額によって変化せず、基本的には出資者1人につき1つの議決権利があります(1人1議決権)。
1人1票ということであれば非常に平等なようにも感じられますが、たくさん出資した人にとっては不公平感を覚える原因になるかもしれませんね。
ただし1人で創業する場合はそのような心配も杞憂です。誰とどのように会社を作ろうとしているかを踏まえ、よく考えてみましょう。
まとめ
株式会社と合同会社のどちらを選べばよいのかは、会社を作る方の状況によって変わります。
創業に使ってもよいと思える費用、創業後に会社を運営していく未来のビジョン、創業を行う仲間の数や出資の方法などなどのポイントで、ご自身が何を優先しているのかをよく考え、適切な選択を行ってください。