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僕たちを繋ぐカード

【決闘】この文字をなんと読むだろうか。
そう「けっとう」である。だが一部の僕と同世代、少し上の世代の方々は少しニヤリとしながら「デュエル」と読んだのではないだろうか。安心してほしい、僕もニヤリとしてそう読む類の人間だ。

少年少女の心をくすぐり、彼らを「決闘者(デュエリスト)」に育てたのは1996年より週刊少年ジャンプで連載された大人気漫画「遊⭐︎戯⭐︎王」に他ならない。いじめられっ子の主人公、武藤遊戯は古代エジプトのアイテム「千年パズル」を解いた事により自らにもう一つの人格を宿す。別人格である闇遊戯との出会いを通じて仲間たちとの友情、そして遊戯自身の成長を描いた作品である。
この作品の有名な特徴は登場するカードゲームである。実際に発売されてからは世界大会も開かれ、今なおその戦略性の奥深さから老若男女問わず夢中になる、大人気の世界的なカードゲームコンテンツとなっている。

そんな遊戯王の作者である高橋和希先生が、今年2022年7月に亡くなられた。世界各国様々な業界から、彼の死を悼む声が寄せられた。
するとネットには、彼の訃報を伝えるニュース記事に対して、<倒されたモンスターを復活させる>効果を持つ作中のキーカード「死者蘇生」の画像を送る姿が多々見受けられ、不謹慎な行為であると批判の声が上がっていた。
しかし、自らが生み出した作品を使って自らの死を悲しんでくれる人がいるというのは、捉え方としては、作り手にとってとても幸せなことなのではないかとも思った。
あの行為は悪ふざけではなく、口下手なファンの精一杯の哀悼の意だと僕は信じたい。

遊戯王のコミックスの作者コメントにこんなものがある。

【カードとかゲームソフトとかいろいろ出たけど、いつも机に座っているオレはみんなが遊んでいるところは見れないわけです。
みんなが楽しんでるところが見たいなあー。
もし「遊戯王」という共通の目的で、君に一人でも多く友達ができたなら、オレはこの漫画を描いて本当に良かったなと思います。
それが一番、嬉しいです。】

先生の願い通り、きっとあのカードは一人ぼっちだった誰かと誰かを何人も繋いでいっただろう。きっと町も県も、下手したら国境も超えてどこまでも遠くへ。もしかしたらニュース記事に死者蘇生のカードの画像を送ったのは、そんな繋がりをもらったかつての子供たちからの純粋な心なのかもしれない。
作中で何度も出てくる「見えるんだけど見えないもの」というフレーズがある。主人公遊戯とその親友、城之内克也との友情を示した言葉だ。きっと高橋先生にも見えなくても喜んでくれるファンの姿が見えていたからこそ、いつまでも誰かの心に残り続け、いつまでも愛されるカードゲームである遊戯王を生み出せたのだろう。直接見えない誰かのことをいつでも想うその姿勢は、何かを作る人間として見習わねばならないと感じた。

「しゅー、デュエルしようよ。」
僕の手元にはまだカードがあり、このカードがあるから連絡を取っている友達もいる。だからたまにそんなLINEが送られてくる。
あの頃より奥深く難しくなったルールでも、40枚のカードをカバンに入れる時、僕らはいつでも少年に戻れる。カバンの中で揺れるカードが音を立てる。
高橋先生、あなたのおかげで僕は今日友達に会いに行けます。この今日に心から感謝します。
さぁ、今日も決闘者として家を出ようか!

…しかしながら、僕は大人になってしまった為、多少の身だしなみにも気を遣わざるを得ない。
これだと少し地味なくらいだな、何か足りないな。ほら、例えば…

もっと腕にシルバー巻くとかさ…。


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