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宅配とロスタイム

いつものドアチャイムが今日も鳴った。
ボタンを押して画面をつける。
「お届け物でーす。」
モニターにはカメラに向けて挨拶をするいつもの背の高い宅配のお兄さんが映っていた。
荷物が届いたのだ。さてパンイチだ。見事なまでにパンツ一丁である。近所のリサイクルショップで買ったシンプルな姿見には、見慣れた顔のだらしない人間が見える。慌ててシャツをかぶりズボンを履く。
慌てたまま玄関を開け対応する。軽く頭を下げてお兄さんは次の場所へ向かっていった。

あぁ、申し訳ないなとおもいながら玄関を閉める。ドアチャイムを押してから数秒だが、なんとなくこの「服を着る」というくだらない時間で彼を待たせてしまっているのだ。申し訳ない気持ちである。

引きこもりがちな生活を送る僕は、ネットで買い物をすることが多い。ただ、引きこもりがちという事は人と接する機会も減っているという事だ。当然身だしなみにも気を使わなくなるし、暑ければ服を脱ぎ、歌を歌い酒を飲む。
海賊か俺は。ひとつなぎの大秘宝を探し求めてるとでもいうのか。さらに時間指定ができない配達が多いため、突然の来訪者にパンイチの海賊は対応が遅れるのである。流石に申し訳ないと感じている。

とはいえ二度手間をとらせるのはもっと申し訳ない。ポストに投函されている不在票には哀愁さえ感じるのだ。数日家に帰れてなかった頃も、1日に何度か来てくれているのが分かり、なんとも悪い気持ちでいっぱいになってしまった。
ただ、道路沿いの我が家はちょっと置き配をするには少し忍びない環境なのもあり、僕のこの悩みは何度も繰り返されているのだ。

服を着ろって?その通りだよ。
だが一人暮らしの男の生活、そのくらい許して欲しいものである。
誤解しないで欲しいのは、四六時中何処でも彼処でも服を脱ぎたい欲求に駆られて生活をしているわけではないということだ。家という限定された空間の特に暑い日だからこそだらしなくなっているのだ。ここだけは本日間違いなく覚えてからこのページを閉じて欲しい。

いつものドアチャイムが今日も鳴った。
朝早くゴミ出しをしていたため、Tシャツにジーンズと、割としっかりした服装をしている。おっと?やるじゃないか自分!
今日は彼を待たせずに荷物を受け取れる!そんな気持ちで僕は意気揚々とボタンを押して画面をつけた。
「こんにちはぁ〜。◯◯様のこういったありがたいお話のチラシはご覧になったことあり」
「興味ありませーん!失礼します!」
食い気味に喋った僕は、ボタンを押して画面を消した。


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