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思い出のイベント

先日、友人とウルトラマンのイベントに足を運んだ。僕は幼い頃からウルトラマンが好きで、大人も楽しめるバラエティ豊かな内容には毎話心を奪われている。この突然の友人からの誘いにも、二つ返事で行く事を約束した。このご時世なので制限された人数で入る為、とても有意義に展示物を見て回ることができた。ショーステージも中々迫力があり、あの感動は小学生以来で懐かしさを感じた。と同時に、会場内でお客さんへの対応をするアルバイトであろうスタッフたちの姿が目に止まる。福引きの鐘を鳴らして当たりを盛り上げる彼らに、かつての自分の姿が重なった。

学生時代、とあるウルトラマンのイベントでアルバイトをしていた。交通費も出て割と時給も高く、好きなものに囲まれている空間というなんとも贅沢なアルバイトであった。

僕の担当する軽食販売ブースではキャンペーンをやっていた。
「お買い物をすると特製シールをプレゼント!シールは3種類!どれが出るかはランダム!」
といったものだった。割と大きめの円形シールには、カッコよくポーズを決めるウルトラマンの姿が印刷されていた。忙しいときは商品と一緒に袋に入れてしまい、人の少ない時間はお客さんに裏返しで3種類出して、ランダムに引いてもらったりしていた。

ある日割と暇な時間帯に親子がやってきた。
「◯◯くん見て見て!シールもらえるって!」
「俺ゼロほしい!絶対当てる!」
ゼロとは、声優の宮野真守さんが声をあてる、大人(主に女性)からも大人気のウルトラマンである。彼が欲しいゼロが写ったシールは3種類中1種類だけだった。
会計を済ませた後、いつも通り3枚を裏返しでその子の前に差し出した。
「さぁ、当たるかなぁ?」
そう言った僕の顔を楽しそうな、でも真剣な表情でその子は見ていた。これだっ!と勢いよく1枚を引いた。
「ゼロだ!」
一気に満面の笑みになった彼は飛び上がって喜んだ。「凄い!」「やったね!」お父さんとお母さん、そして僕と隣のスタッフにもおめでとうと言われ上機嫌になっていた。
「良く当てたなぁ!」「よかったね。」と両親に声をかけられながら歩いて行く彼はすっかりシールに釘付けになっていた。

休みの日の思い出ってなんだったろう。
大好きな家族と出かけて、大好きなものに囲まれて、そして大好きなキャラクターを自分の力で手に入れたとなれば、それはきっと素敵な思い出になるだろう。
イベントに来る親御さんのほとんどは、子どもを楽しませるために来ている。そのお手伝いができて目の前であんなに喜ぶ子どもたちを見れるのだから、アルバイトとはいえ僕はなんて幸せなのか。彼の嬉しそうな顔に、僕まで素敵な思い出をもらってしまったな。

と、僕は手元に残った2枚のゼロと目を合わせて感じたのであった。

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