シガーボックスの基礎技術について考える(3)
数年ぶりの更新。
はじめに
前回(↑)までシガーボックスジャグリングの取り得る状態に着目してきたが、この進め方で個別の技の話まで至る未来が見えないので一度方針転換する。今回は具体的な操作に着目して話を進める。
技を分解していくと、それは掴む、投げる、挟むといった複数の操作の連続である。この一つ一つの操作こそシガーボックスジャグリングの基礎技術だと考え、一通り洗い出してみた。また、それらを5つに分類した。結果を基礎技術マップとしてマインドマップの形で公開する。
以降では、書き出したそれぞれの基礎技術について解説する。
注意点
今回の取り組みはすべてのシガーボックスジャグリングを網羅的に考えるものではない。シガーボックスの面を観客に向けて行う、古くからあるシガーボックスジャグリングを対象として私の思いつくまま作成したものである。自分の練習している技が今回の取り組みの対象外であると感じたら、ぜひぜひ基礎技術マップを拡張してほしい。
基礎技術解説
0. 用語の確認
事前に今回の文章で用いる言葉を確認しておく。手持ちの素材から雑に作ってしまっているので参考画像が荒いのは見逃してほしい。
・積む/スタッキング
いわゆる「ひっつけ」という操作のことを「積む」もしくは「スタッキング」と書いている。これは文章の中で「ひっつけ」という言葉が出てくると間抜けで締まらなくなるからである。
ちなみに「ひっつけ」とは両手に持った箱を合わせてまとめることを指している。
https://youtu.be/JcDWqwLIIV4?t=9
・タワー
箱を積んだ状態のことをタワーと書いている。
・ホールド
左右の手でそれぞれ掴んだ箱を使って1つ以上の箱を挟んだ状態のことをホールドと書いている。箱を並べて持った、一番基本的な形である。加えて、単に1つの箱を手で掴んだ状態もホールドと書く(図「箱の持ち方」参照のこと)。
1. 積む stack
いわゆる「ひっつけ」関連の技術である。基礎技術マップの上から順に解説していく。
・1-1. 箱の方向
積む/積まれる箱の向き。長方形の短い辺を使って積まれることが多いが、長い辺の方を使う選択肢がある。全て短い辺を使ったり、タワーの上段と下段で分けたりできる。
参考)
横積みでレインボーする
https://youtu.be/_PZTfSsOJV0?t=191
タワーの片方だけ横で積む
https://youtu.be/2eIN4t12YBQ?t=83
・1-2. 積む先
箱を積む先。箱の面ではなく角に積んだり、箱以外の場所に積むパターンがある。その他、各種ストールも身体に積む技である。
参考)
角に積む
https://youtu.be/Nf4Zg7GO4cI?t=95
腕に積む
https://youtu.be/7ZodEM9l_6k?t=212
・1-3. 入り方
タワーへの入り方はスタッキングとバランスのパターンがある。
2箱タワーのスタッキングは非常にシンプルで、両手に持った箱をまとめる操作となる。対してバランスは、まず手に持った1箱で空中を落下する1箱を受け止める方法がある。加えて分離していない2箱をそのままタワーにすることができる。ホールドの状態から片手を離して2箱タワーにしたり、分離せず(マグネティックで)飛んでいるものを受け止めてタワーにする方法がある。
3箱以上のタワーの入り方はダイヤモンドのようなスタッキングが主流。他にもパターンはあるが、多すぎるのでいくつか例を挙げて終わりにする。例えば二段ひっつけや、非分離で飛ぶ複数箱をバランスする方法、スタッキングとバランスを組み合わせて一手で積む方法などなどがある。
二段ひっつけ
https://youtu.be/H5jLINO0g2k?t=175
非分離で飛ぶ複数箱をバランスする
https://youtu.be/H5jLINO0g2k?t=156
スタッキングとバランスを組み合わせて一手で積む
https://youtu.be/F2Dzp_vSIBM?t=36
・1-4. 積み方
タワーの底の箱をどう掴むかが選択肢となる。これは掌が自分から見て表側/裏側のどちらを向いているか、親指が上下のどちらを向いているか、腕を内側/外側のどちらにひねるかの組み合わせでパターン化される。画像で具体例を6つあげる。
①掌:裏向き、親指:上向き、腕のひねり:なし
②掌:裏向き、親指:下向き、腕のひねり:内向き
③掌:裏向き、親指:下向き、腕のひねり:外向き
④掌:表向き、親指:上向き、腕のひねり:なし
⑤掌:表向き、親指:下向き、腕のひねり:内向き
⑥掌:表向き、親指:下向き、腕のひねり:外向き
バランスでなく両手に持った箱を使ってスタッキングする場合は、両手に持つ箱の掴み方の組み合わせでもパターンができる。
・1-5. 積む方向/角度
積み方からの派生で、タワーをどの方向に/どの角度で保持するか。とんがりコーンなら上方向に積む、スライド系なら横方向に積むイメージ。
・1-6. 腕の位置
頭上でバランスによりタワーをつくる等
https://youtu.be/u80KdFfS_pY?t=65
2. 維持する(スイング) keep(swing)
前回書いているようにタワーは半安定状態であり、常にタワーが崩れて箱が落下する可能性がある。タワーが崩れないように、箱が落下しないように維持する技術を2つ目の基礎技術として挙げる。これには建てたタワーを維持するバランスの技術、タワーを維持したまま角度を変化させるスイングの技術がある。前者のバランスには、端返しのような慣性を使ってタワーの形を維持する技術も含まれるだろう。
3. 投げる toss/flip
箱を空中に飛ばす技術。箱を介して箱を操作するフリップと、単純に箱を投げるトスとをまとめて分類する(暴論気味な自覚はある)。
・3-1. 起点
シガーボックスにおける投げる操作では動作の開始時の状態がホールド(1箱、複数箱)かタワーかの選択が基本的な形。
・3-2. 回転
どのような回転で箱を投げるかの選択がある。インナー/アウタースピン、アンチスピンやフラットで投げたり、クリスクレモ(kk)カスケード(パンケーキ 順/逆)、紅葉(2軸)で投げるパターンがある。
・3-3. 分離/非分離
複数箱を投げる操作では、それらを分離させるか非分離のまま投げるか(マグネティック)の選択がある。3upピルエットのように3箱を崩さずフラットで投げるものが非分離、スガハラーのように複数の箱がわかれるように投げるのが分離というイメージとなる。
・3-4. 掴んでいる箱の扱い
1箱ホールドから投げる場合以外では、掴んでいる箱から手を離すかどうかの選択がある。例えばレインボーはタワーから完全に手を離すタイミングがある。対してダイヤモンドではタワーの底の箱を掴む手は離さずに技を行う。
4. 掴む grip
箱を掴む技術。
・4-1. 箱の面
箱の6面のどこを掴むかの選択がある。
・4-2. 掌の向き
1-4参照。箱をどう掴むかの選択肢がある。
・4-3. リストキャッチ
https://www.youtube.com/@akickmach/videos
・4-4. 複数(マルチグリップ)
片手で2箱以上を掴む技術。重ねて掴む方法と、並べた箱の繋ぎ目を掴む方法が知られている。
重ねて掴む
https://youtu.be/brq10v436_A?t=162
並べた箱の繋ぎ目を掴む
https://youtu.be/mcX-BnGneXM?t=71
・4-5. 箱を掴む位置
箱の中央を掴むか、端を掴むかを技によって判断することが成功率アップや見栄えの変化につながる。例えば大回転では外抜きの際に箱の内側端を掴むようにした方がクロスで挟む際に安定しやすい。
5. 挟む catch?
箱を挟む(ホールド状態をつくる)技術。
・5-1. 腕の状態
キャッチの際、手を交差させるかどうか。大回転のように交差させてとるか、交差させないかの選択。
交差という意味では腕だけで考える必要はなく足と交差してもよい。
足と腕を交差させる
https://youtu.be/wHlwIkYSiHU?t=78
・5-2. 掌の向き
挟むのに用いる両手の状態をどうするか選択肢がある。1-4 参照
・5-3. 中入れ
両手に1箱ずつを持ち、それを使って挟む以外に中入れという方法がある。綺麗なガラスで出てくる操作で、片手で維持する2箱以上のタワーを使って挟む。
https://youtu.be/EG2ztGf05Cc?t=26
・5-4. 複数同時
センタースピンやスピンガラスなど、複数の別々に動く箱を一手で挟む技がある。
6. その他
・スライド系、弾く系
スライド系は投げる+積むの複合技術、弾く系も同様という感覚。この中にもいろいろあると思うが説明は割愛。
https://www.youtube.com/watch?v=y4FCDfqP2BE
・ボディ系
①1-6 腕の位置 のように操作する場所を変える切り口と、②身体を直接的に使って箱を操作する切り口がある。
①は足の下で箱を挟んでみたり、背中の後ろから箱を投げてみたり(バッククロス)、操作する場所を変えることで難易度をあげる。ランナーやタカムラーがこちらの区分になる。
https://youtu.be/EG2ztGf05Cc?t=80
②は足と手で箱を挟む操作や、1-2 で書いた「腕に積む」操作のように、身体を直接的に箱と接触させて操作する。転がす、ぶつける等、上述した基礎技術とは被らない要素もまだまだあるだろう。
https://youtu.be/LL8DtN2WTQk?t=217
・その他
手の振り(フェイク)、手渡し、ピルエット、フラリッシュなど、割と技のどこにでも挟める要素がある。あまりシガーボックスの挙動には関連しないので基礎技術には含めなかった。
そして基礎技へ
どの基礎技術もその中で様々な選択肢があるが、その中でも簡単なものを並べてできたのが基礎技と呼ばれている認識である。テイクアウトなら「投げる+掴む+挟む」の複合であり、レインボーのようなスタッキングベースの技になると「積む+維持する+投げる+掴む」といった複合になってくる。「掴む」や「挟む」はシガーボックスの根幹をなす技術であるから、初心者がまずテイクアウトでそこを練習するのは理にかなっているように思える。少しずつ基礎技術の選択肢を増やしていくことが上達につながるだろう。
おまけ:回転制御の話とか
技ばかりの話で細かいコツの話ってあんまりみないので書いておく。
・1箱トスの回転制御(動画 ~0:20)
手首のスナップで投げてしまうと箱が回転しやすいため、手首は固定して腕の振りで投げるようにするとよい。ミルズメスチェーンでは中抜きを少し高めにして余裕を持たせるとやりやすい。
・ホールドからのトス/フリップの制御(動画 0:20~)
まず箱を投げ上げる場合、膝と腕を使って勢いをつけることができる。膝は上下運動、腕は上下運動に加えて回転運動ができる。これらを組み合わせて思い通りに箱を投げるようにする。
2リリースを例に動画をとっているが、回転運動で箱の分離をある程度コントロールできる。サイトスワップでいえば[4,6]をデフォルトとすると、回転を強めるとこれが[4,8]になるようなイメージである。一方で上下運動を強めると箱の分離度は変えず、箱を全体的に高く投げることができる。サイトスワップでいえば[4,6]が[6,8]になるようなイメージである。
以上。
内容はあくまで私個人の考えなのでよろしく。君の考える基礎技術マップも教えてくれると嬉しいな~、待ってます。