シガーボックスの基礎技術について考える(1)
前回(↑)、シガーボックス技を要素へと分解し、それぞれ設けた指標に従い数値化していくことで客観的な難易度評価を試みた。しかしそこで設けた評価指標はテイクアウト技の評価に必要そうなものを思いつきの行き当たりばったりで挙げたものである。よろしくない。テイクアウトに留まらず他分野も含めて統一的に評価するためには、もっと広い視点でシガーボックスの技を構成する要素、つまり基礎技術について検討しておく必要があるだろう。また基礎技術について知っておくことは評価者に限らずプレイヤーにとっても有益である。習得に苦戦している技を構成する基礎技術にまで分解し、どの部分はできてどの部分ができていないのか考えながら練習することで上達を早めることができる(はず)。また、既存の技に他の基礎技術を足すことで新しい技を発見できたりする(はず)。というわけで今回はシガーボックスの基礎技術について考える回その1。
方針
技を抽象化すると、それは箱をある状態から他の状態へと遷移させること、もしくは遷移させないこと(状態を維持すること)である。だから今回は「箱の状態」にどんなものがあるか、そしてどんな「遷移のさせ方」があるかを考えてみる。この「遷移のさせ方」が基礎技術にあたる(はずである)。
箱の状態
箱の状態についてどんどん考えていく。まず箱が地面に落ちているかどうかで分類する。箱が地面に落ちている場合を「接地状態」と呼ぶことにする。
接地状態ではない場合、更に箱が空中にあるかどうかで分類する。箱が空中にない状態とは、例えば両手に持った箱で1つ以上の箱を挟んで持っている状態(①)や、箱を建てに積んで持っている状態(②。ひっつけ、タワーのこと)、単に片手で1つの箱を掴んでいる状態(③)である。これらを「安定状態」と呼ぶことにする。ちなみに③に関連するものとしてリストキャッチ状態がある。箱をストールしている場合も安定状態か?と疑問が湧くかもしれないが、ストール自体は別にシガーボックス特有の技術ではないような気がするので今回は考えないものとする。
一方で箱が空中にある状態を「非安定状態」と呼ぶことにする。非安定状態には、箱が空中に複数まとまって存在する場合(3upピルエットで投げられた箱など、まとまって飛ぶ場合:非分離)と、箱が空中に単独で存在する場合(オールリリースで投げられた箱など、バラバラに飛ぶ場合:分離。なお分離にはオールリリースのような縦分離とセンタースピンのような横分離が存在する?)がある。非安定状態の箱には何も操作しなければ接地状態になる、という特徴がありそうだ。
バーっと書いてしまったが、まとめると下のようになる。
(非安定状態の絵がひどい。ごめんなさい)
状態遷移
先ほど考えた各状態間の遷移について順々に考えてみよう。
・接地状態↔安定状態
これは簡単。まず接地→安定とはすなわち落ちている箱を拾うことである。対して安定→接地とは箱を地面に置くことである。
・非安定状態↔接地状態
これも簡単。非安定→接地とは空中に存在する箱が地面に落ちることである(これは操作でも何でもない)。一方で接地→非安定の操作は存在しない。接地状態の箱を空中に移動させるには必ず身体のどこか、もしくは箱を介して接地状態の箱に触れる必要があり、その際安定状態を経由することになる(もしかしてそんなことなかったらすいません)。また、接地状態の箱を突然空中に浮かばせることはできない。
・安定状態↔非安定状態
今回はあまり複雑に考えすぎず、大雑把な分類だけを考えたい。
まず安定→非安定だが、これには掴んでいる箱から手を離す操作、または掴んでいる箱を介する箱の操作の2種類がある。手を離す操作には、テイクアウト系で用いる垂直投げ上げや、ひっつけ状態からの展開で用いられるマルチスロー、カスケード等で用いるシングルスロー(インナー/アウターフラット、クリスクレモ含)がある。後者の箱を介した箱の操作には、ダイヤモンドのような両手で行うもの、連続ひっつけのように片手で行うものがある。両手で行うものは、左右の手の回転方向や回転中心により更に分類できる(次回以降検討する)。
次に非安定→安定について考える。こちらも両手か片手かで分類できる。両手の場合、空中の箱を両手に掴んだ箱で挟む操作となる。片手の場合は、その手にすでに箱を持っているかどうかで分類される。持っている場合には、その箱の上に落ちてくる箱をバランスキャッチする操作となる。持っていない場合には単なるキャッチ、つまり箱を掴む操作となる。
・安定状態→安定状態
ひっつけ操作である。両手に一つずつ箱を掴んでいる場合、それは安定状態だが、その二つの箱をひっつけて片手に持っても安定状態のままである。
・非安定状態→非安定状態
最近流行りの箱で箱を弾く操作やキックアップはここに含まれる。
追記:非安定状態の中で分離→非分離とする操作がテイクアウトだった。(ただし4箱中抜きのようにテイクアウト後に非分離状態の箱が残る場合もある)
以上をまとめると次のようになっている。
まとめと今後の課題
今回は箱の状態とその遷移について考えた。完全に自画自賛だが思ったよりまとまったように思う。結果については画像にまとめたのでここでは割愛する。今回大雑把な分類ができたので次回以降更に詳細まで検討していきたい。なお今回の分類における課題としてすでに2つ思い浮かんでいる↓記載。
今回はひっつけ状態を地面に垂直な向きに箱を積んでいる状態と考えているが、本来は内側に傾けるのが良いとされている。傾きがある場合にはそれはほっておくと地面に落ちるため、非安定状態に近い。傾きがある場合のひっつけを崩さず維持する力は明らかに基礎技術であるが今回の考え方だとうまく説明できなかった。反省である。
また、前述した安定状態の3パターン(挟んで複数手持ち、ひっつけ、単体手持ち)、非安定状態の2パターン(分離、非分離)の組み合わせと絡めて話ができればよかったのだが、考えているうちに手から直/箱を介するとか片手/両手とか色々分類の仕方が浮かんできてごちゃごちゃになった。また次回以降で検討したい。
以上。