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猫のような友人のはなし。
黒羽に友人のHさんを紹介して貰ったのも、もう随分遠い過去になってしまった。
黒羽についてはこちらの記事がスタート。
当時、彼女はPlastic Treeのファンの海月で、竜太朗のような少年装をしていた。
THE GABRIEL CHELSEAのよく似合う大きな瞳の猫のような人だ。
青い瞳のロシアンブルーのような猫の縫いぐるみを貰ったことがあって、それは今も部屋で寛いでる。そういえば、青い色のハーブティーや青いチョコレートを贈ってくれた事もあった。青咲のところには青いものが集まるので嬉しい。
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猫のような彼女の持っているものは、やっぱり猫の描かれたものばかりで、雑貨屋で彼女の好きそうな顔の猫グッズを見かけると、いつも思い出す。
初対面から何年も経った今も、彼女は猫のように可愛く、ファッションやヘアメイクもよく似合っていて素敵だ。
お茶に誘ってくれる彼女は飲食店をよく知っていて、彼女が教えてくれた喫茶店によく一緒にケーキを食べに行く。
その店はVivienne Westwoodの店舗の上にあって、いつも店頭にシンプルに生けられた花を眺めてから階段を登る。
扉の向こうには木の温もりのある家庭的で落ち着いた喫茶店があり、カウンターの向こうのオープンキッチンで、いつもタルトやプリンを作るご夫婦の姿が見られる。時折聞こえる夫妻の会話も好きで、眼鏡のマスターが物語のひとみたいだ。
飲み物は珈琲と紅茶から選べて、紅茶には自家製マーマレイドが添えられている。
季節のケーキやタルト、カットケーキの形をした硬めのプリン。桃の季節だけ食べられるピーチメルバも美味しくて、長野まゆみ作品に出てきそうな見た目をしている。
タルトとプリン、ホットコーヒーとアイスコーヒーがセットになった1/2コーヒーを注文する事が多い。けど、フルーツのロールケーキやパウンドケーキも美味しい。いつも目移りしてしまう。
切り揃えられた髪やピアスが揺れたり、色が白くて唇の紅い、少年と少女のどちらの面影も残したような彼女が、甘いケーキや砂糖いっぱいの紅茶を飲む様子が好きだ。
色素の薄い瞳にしている彼女の猫のような眼がいつも印象的で、自分が食べること以上に、それを見ているのが好きなところがある。こんなことを書いたら、次から食べ難くなってしまうかな。
彼女が話してくれるのは、広い知識や興味に基づいた事ばかりで、とても楽しい。
ゲームの話から古代エジプトの話まで幅広く、最近はゾンビに世界が支配されたらどうやって生き残るかについての考察をしていると言っていた。彼女の話によると、シェルターを作るには随分と資金が必要そうだ。
クリスマスにはケンタッキーのチキンがどうしても食べたいって事や、カルヴァドスのチョコレートに嵌っている事、ライブハウスで見る竜太朗は意外と大きい事、そんな些細な話が、彼女の言葉で語られるととても楽しかった。
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ミュシャ展へ行ったのも楽しかったけれど、エジプト展へ一緒に行った時には、開館時刻で行って人気の殆どない展示を見る事が出来た。一度先に脚を運んでいた彼女が、人がいない時に見るべきだと案内してくれた仮面の部屋は、今もとても印象に残っている。
その人気のない部屋はまるでジョジョで、本当に付けたら外れなくなりそうだったし、オーラが重くて不思議だった。あの静謐は貴重な体験だったな。
棺桶の絵やヒエログリフも面白くて、売店の猫やエジプトの神様の雑貨に夢中になる彼女とのエジプト展は本当に楽しかった。また行きたいな。
エジプトのピラミッドが魂の通り道を用意してある事だとか、最古の星座だとか、青の特別な意味だとか、ラピスラズリは天空と冥界の神オシリスの石だってこと…他にも魅力的な話がとても多い分野だ。
その日の帰りに立ち寄った喫茶店で、京都土産のアンモナイトの化石を渡すと、「京都のお土産!? モロッコ産て書いてあるけど!?」「せっかく今3000年前のエジプト展で感動してたのに! これって6000万年以上前とかじゃないの!?」と爆笑してくれたのが面白かった。その発想はなかったな。
因みにアンモナイトの化石は別に笑いを狙ったわけではなく、日本に住んでいる人間にとって珍しい京都土産を買うというのは意外と難しく、地元民のRの連れて行ってくれた鉱物と化石のショップが楽しかったので、友人達の好きそうなものをそこで調達した経緯がある。
彼女は美味しいものが好きなので、物産展にもよく行った。海産物を物色するところも猫のようだ。その物産展では漆も販売していて、漆の素晴らしさについても彼女が教えてくれた。
ハンズに寄った時には、天文のコーナーで天文宇宙検定の本を眺めていたので、別行動をとり自分の買い物を済ませてそこへ戻ると、まだ彼女はそこでそれを読んでいた。そして「殆ど知ってることばかりだったな」と漏らして本を閉じた。
小さなレストランや喫茶店に案内してくれる、モノトーンの彼女の後についていくのが楽しかった。猫を追っているようで。
THE GABRIEL CHELSEAの釦の可愛い別珍の黒いコートを着ていた冬、アッシュブラウンの髪が似合っていたのをよく憶えている。煉瓦の外装のカフェへ入っていく後ろ姿が素敵だった。
一緒に行ったDr.Martensで買ったスニーカーはもうダメになってしまったけれど、彼女と行った事が楽しかったなと思い出す。
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数年越しかで久しぶりに会う日、気に入ってる服を着て、待ち合わせの公園で遙さんを待っていた。公園では箱庭の展示がされていて、そのあと再会した遙さんと一緒にチームラボの光る風船を見た。
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ピエロだらけの大道芸の街を黒羽と三人で歩いたこと。真冬のイルミネーションの広場で青や紫に光る神殿みたいな噴水の水柱を見たこと。
ファッションビルの特設で、いろんなコスチュームジュエリーやカレッジリングを眺めたこと。ルピシアで香りの良いお茶を選んだこと。
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もういなくなってしまったマスターがいた頃の、フルーツサンドと薔薇のクリームの珈琲のあった古い喫茶店。あの窓辺から、煉瓦とラクダの小さなビルが見えていた。
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いろんな思い出が、いつも彼女がくれた、綺麗で美味しいお茶やお菓子の甘さと一緒に、珈琲や紅茶の香りで溢れていく。またどこかの季節で一緒に、あの喫茶店のガトーバスクが食べたい。
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