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新宿ルミネ
大体4月10日といえば授業が始まって5日くらい経っている頃だけど、私の大学は新学期が始まるのが遅くてまだ休みだった。本当にお金がない時に使いなさいと渡されたゆうちょのカードからちょっとずつお金を引き出していたら、それが知らない間に毎月10万くらいになっていたのが1月に母親にばれて以来、どこにも遊びに行かずバイト先とアパートを往復する春休みを送っていたので、久しぶりに東京に出ることにした。
毎月10万円も何に使っていたのかわからない。授業後のバイトで月に35000円くらい振り込まれるのも全て使ってしまうので、実際には13万円くらい使っているのだが、本当にわからない。1年生の春にパソコン買わなかったし、友達も少ないから遊びにも行ってないし、服は黒のパーカー2着とスウェット1着、下はGUで買ったスーツみたいなセンタープレスの黒のやつ2着をバイトでも授業でも着まわしていて、高い服を買っているわけでもない。その顔と体型でそれ着られる自信あるの?みたいなことを思われる可能性を極限まで減らすために無難に靴はバンズの黒を履き、髪の毛も染めていない。しかし最近そのせいで逆に目立ってしまっていることに気がついた。春休み帰省の途中1人で寄ったイオンのショーウィンドウに映った全身真っ黒の自分があまりにも日曜日のショッピングモールに合ってなさすぎてすごく恥ずかしかった。
今回は平日の新宿なので、そこまで気にする必要はないとは思ったが、やっぱり全身真っ黒を少しずつやめていくべきだと考え直して、黒のタートルネックに薄緑のGジャンを羽織り、下は例のGUのやつしか持っていないのでそれを履いた。パンツと呼ぶかズボンと呼ぶかいつも困る。私みたいなファッションレベルの低い人がパンツと言ってもいいのだろうか、でもズボンと呼ぶのはダサすぎるので中学2年生くらいからズボンかパンツと呼ばなきゃいけない状況になるのをうまく回避していた。最近になってスラックスという言い方を覚えてスラックスと呼ぶようにしたので少し楽になった。
高尾駅まではずっと山川谷ぽつんと家、といった感じで山が迫ってくるようで、閉塞感がすごくてよく晴れた日でも少し暗い気持ちになってしまう。私の大学も大学から徒歩20秒のところにあるアパートも山に囲まれているせいで、狭く感じて息苦しい。だから少し高いところを走る立川から新宿までの中央線に乗っていると晴々とした気持ちになる。油っぽい飲食店街、洗濯物が干されている同じ形をしたマンション、給水塔、意外にも畑、防球ネットが張られた狭い空き地で野球をしている子ども、鉄塔、私立すぎるレンガ調の学校、ずーっとよく晴れた空が山に遮られず続いているせいか都会の気忙しさは感じられず爽やかに見える。
開場より1時間半早く新宿駅に着いたので、西口のブックオフに寄ることにした。過去2回、東口に出たかったのに頭上の案内を見逃して西口に出てしまったので、西口にはそこまで苦労せず出られると思ったのだが南口に出てしまった。バスタ新宿を睨んで地図も睨むとルミネ2の中を通ると新宿駅西口に出られると示されていたので、みどりの窓口の横からルミネに入った。
誰も使っていない階段があったので登った。誰も使ってないということは近くにもっと便利なエスカレーターがあるはずなのだけど、あまりにも人がいなすぎて登ってしまった。後ろから人が来るなと思ったらヤマトの配達のお兄さんだった。業者の人しか使ってないのかもしれない。地図を見ても何階を通るのかがわからなかったのでとりあえず方向だけ合わせて進んだら、ルミネを抜けて登りのエスカレーターからの人の速い流れに押されるようにして外に出た。詰まりが解消されたトイレみたいだった。地図を見たら西口のブックオフの近くにちゃんと出られていた。
欲しいと思っていた本がなかったのに、本2冊とDVD5本も買って5000円を超えてしまった。インパルスのコントのDVDを買った。インパルスの板倉さんは40過ぎても尖ってるのが弱点と言っていたが「若い頃は尖ってました」みたいに逃げないところがめちゃくちゃかっこいいのでDVDは今度新品でも買おうと思った。
時間までグッズ売り場を見て回った。推しがいるわけではなくどのコンビも中途半端に好きなのでグッズは買わなかった。想像していたより都会の人といった感じの女の人が多くて萎縮して、猫背がさらに猫背になってしまった。窓際でしばらく蟻みたいな車の動きを眺めていたが、ざわざわし出したので出入り口の方を見ると、制服を着た中学高校生くらいの団体が列になって入ってきていた。こんな新学期早々に修学旅行はないだろうし何の団体だろうと思っていたが、修学旅行の団体だった。福島と宮城から来ていたらしい。寒いところから来ているのに結構みんなノリがよくて舞台上の芸人さんに半分くらいの人が手を振っていた。
高校2年生の頃、クラスみんなで『さとうきび畑の唄』という沖縄戦の映画を見る時間があった。映画よりもクラスの人たちが内容そのものや心を揺さぶられて泣いた人を茶化す方に向いた時に、自分が泣いてる側だったらどうしようというのが気になって全然入り込めなかった。結局女子の2/3くらいは泣いていて、茶化す男子もいなかったので多分泣いても戦争を真剣に考えても大丈夫だった。いつでも真剣な人を笑う側に回れるように構える癖は大学生になった今でもまだ治っていなかったので、もしこの時この修学旅行生たちが舞台上の芸人たちに対して白けた態度を取ったら、心ではおもしろいと思っているのに私も無表情を作って、大好きな芸人やお笑いが好きな自分を裏切ったような後ろめたい気持ちになってお笑いが少し苦手になっていたかもしれない。
前も後ろも修学旅行生に囲まれていたが、私の隣の2つの席が開演ギリギリまで空いていた。そこにカップルが座った。かなり気まずかった。MCの学天即の四条さんが「この中で学天即知ってるよーって方」と言った時にお笑い詳しい風の奴と思われたくなくて手を挙げられなかった。
公演の内容を書くつもりだったのにここまでに3000字近く書いてしまった。
ロングコートダディはM-1に出ていたので勝手に漫才の人らだと思っていたが今日は野球部の強豪校バッテリーのコントをやった。細身長身の堂前さんと若干太り気味の兎さんのコンビで堂前さんの方がピッチャーっぽいのにキャッチャーの設定でそこからもう可笑しかった。あんまり強豪校の太り気味ピッチャーを見たことがない。
次長課長のコントは2004年のアメトーク『次世代コンビSP』でやっていた不動産屋のネタの進化版だった。えっ、木造で10階ですか!?というツッコミがこの日1番のツボだった。
フルポンの村上さんのチープモノマネ(目の下の隈のプーさん、機敏川島、浜田Wi-Fi功、NIKKO)もくだらなすぎてげらげら笑ってしまった。ネルソンズ、ダイタク、ガクテンソク、ザ・パンチとテレビで見てた人たちを実際に見られて来てよかったと思った。
帰りは京王線で帰った。空いた席に座ったら、隣ですらない1個空けて隣のお姉さんが間髪入れずに立って少し離れた席に移動したけど、まだ余韻で楽しい気分だったので傷つかなかった。後から今日の服装は真っ黒じゃないのに移動されたらもうどうにもならないと気がついてちょっとだけ傷ついた。