【本要約】イシューからはじめよ -知的生産の「シンプルな本質」-
こんにちわ.初投稿になります.りぼるばと申します.
主に日頃読んだ本の要約などを不定期でupしていく予定です.個人的なアウトプット+備忘録的な内容ですので軽い気持ちでご覧ください.本の内容を網羅的に紹介するのではなく,個人的に自分の気になった点・実践したい点のみをピックアップしてまとめたいと思います.週1冊は読書することを目標にしているので,出来ればnoteも同じペースで更新したい...
記念すべき1冊目は安宅和人さんの『イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」』になります.前々から読もう読もうと思っていてようやく読めました.所々具体例は出てきますが,基本的に問題決定・解決のための手法が抽象化されている内容なので,実践してみないと自分事にできない内容だと感じました.
結論
本書の結論はズバリ「イシュー(=本当に今解決すべきで今後を左右するような本質的な問題)を見極めるところにエネルギーを費やせ.」ということになります.
以下の3つの点についてまとめます.
1.イシューの見極め
2.解の質を高める
3.伝える
イシューの見極め
「バリューのある仕事」をするには,イシュー度(現在その問題に対して答えを出す必要性の高さ)とその解の質(どれだけ明確な答えか)が高い必要がある.そのためにはイシュー度の低い仕事,つまり言ってしまえば本質的ではなく重要度の低い仕事の数をこなしてもしょうがなく,イシュー度の高い仕事だけに注力するべきである.
イシュー度の高低によらずとりあえず大量の問題をこなすことを本書では「犬の道」と呼んでいます.犬の道を通らずイシューの見極めにキチンとエネルギーを費やすことが大事.要するに目的意識を持つだけでは不十分で,「そもそもその目的は合っているか?本質的か?」を思考し続ける必要があるということです.
私はこの春から新社会人になって色々と自己研鑽を行っているつもりなのですが,目的意識を常に持つということは意識していました.しかし,その目的が本当に自分の価値を高めることにつながるか?という点,つまりもっと大きな目的の前で本当に果たすべき目的なのか?については明確に意識したことがなかったので本書を読んで反省した次第です.
では良いイシューとは何か?その条件として以下の3つが挙げられています.
・本質的(=今後を左右する)な選択肢である
・深い仮説(=常識の否定や新しい構造・視点での説明)がある
・答えが出せる
特に重要だと感じたのが深い仮説があるという点です.例えば地動説のようにこれまでの常識を否定するような仮定や,今まで捉えてこなかった新しい視点や構造で問題を把握することが肝心であり,そのためには多少強引でも仮説を立ててイシューにすることが重要だ,とされています.
「そんなたいそうな仮説なんて思いつかないし,奇を衒うだけの当てずっぽうじゃしょうがなくない?」と一瞬思ってしまいましたが,適切な情報収集とアプローチを行った上でなら些細な新しい視点でも十分だと思います.
イシューを立てる上では「明確にイシューを言葉にしてみること」が勧められています.その時のコツは主語述語を入れること,whyよりwhere, what, howを入れること,AかBか?のような比較を入れることなどがあるとのこと.
情報収集のコツは「1次情報(現場)に触れること」.例えば私はメーカーの工場勤務なので,工場の現場の声を聞くことを意識したいと思います.ものづくりにおいてはよく「三現主義(現場,現物,現実)」という言葉を耳にしますが,まさにこの1次情報の重要性を表す言葉ですね.1次情報は誰のバイアスもかかっていないことに価値があります.ショウペンハウエルの「読書について」では以下のように述べられています.少し違う角度からですが1次情報の重要性を説いた言葉です.
読書とは他人にものを考えてもらうことである.1日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失っていく.
イシュー決定のアプローチのコツは変数を減らす・視覚化する・最終形から逆算・「So what?」を繰り返す・極端な事例を考える,の5つが紹介されています.個人的に異なるアプローチをとっても同じ結論に至ることもあり,あくまで思考法の紹介だと思いますが,「なぜ?」や「つまりどういうこと?」を繰り返すのは普段から実践している気がします.この時も明確に言語化するのが大事だと思います.
解の質を高める
本書では解の質を高める方法として,「ストーリーライン作り」と「絵コンテ作り」によるイシュー分析が紹介されています.
まずストーリーライン作りについてです.ストーリーラインとはつまり論理展開のことです.ストーリーラインを作る準備としてまずイシューを本質的でMECE(過不足のない)なサブイシューに分解します.分割には例えばwhere(どのような領域?),what(どんな勝ちパターン?),how(どのように取り組む?)などのある程度の型があるそうです.イシューを分解する一番の有用性はサブイシューのうち最も優先順位の高いもの(=勘所)が明確になる点だと思います.
そして次に得られたサブイシューを並べる順番を決定します.この論理展開の順序については2つ紹介されていて,「WHYの並び立て」と「空・雨・傘」の2つです.「WHYの並び立て」はメインとなる主張の根拠となるサブイシューを並列に並べる方法,「空・雨・傘」はざっくりいうとAだからB,BだからC,CだからDのような順番の論理展開です.
次に2つ目の絵コンテづくりですが,これはストーリーラインに沿って並べられたサブイシューに,その分析イメージと分析手法を併記するステップになります.私は先日まで理系学生だったのでよく研究のプレゼンテーションをする機会がありましたが,「1スライドにつき1つの主張」という言葉はよく耳にしました.それと同様で1つのサブイシューにつきそのエビデンスとなる図・データのイメージを書き,データの収集方法までセットで併記するということです.
このようなステップでイシュー分析が済めば,後は実際にデータを集め,分析を行っていくステップに移行しますが,この時点で大事なことは以下のような点が挙げられています.
・最も本質的でストーリを左右するサブイシューの分析から始めること.
・仮説を事実と勘違いするような「答えありき」の視点を止めること.
・手法であれ,解であれ1つのもの固執しないこと.
・軽快に,停滞しないこと.完成度よりも回転数,エレガンスよりもスピード.
特にスピードを重要視することは今後意識したいと思いました.本書では「考える」と「悩む」の違いについて,答えがでない前提で考えるふりをするのが「悩む」であり,答えが出るという前提で建設的に考えを組み立てることを「考える」と区別しています.10分以上考えて分からなければ,それは「悩んで」いる可能性が高いということです.
伝える
どんな優れた問題に対するどんな優れた解でも,表現して,誰かが受け取って初めて価値が生じるため,「伝える」ということは非常に大切です.ここでは本書から2つだけ紹介します.
1.聞き手は「地頭が良いいが,知識はない人」を想定する.
ひとつ,聞き手は完全に無知だと思え.ひとつ,聞き手は高度な知性を持つと想定せよ.
デルブリュックという遺伝学者の教えが引用されていますが,言い換えると地頭がいいが知識がない・専門分野でない聴衆を想定しろ,ということだと思います.よく「サルでもわかるように」とか,「中学生に話すつもりで」とか言いますが,個人的には,こちらの言い方の方が好きです.私もよく研究発表をする場合は「聴衆の前提知識の理解度を認識する」ことは意識していました.例えば研究室内発表なのか,学会発表なのかで同じ内容でも前置きの長さやテンポを変えて発表していました.それをさらに一般化したのがこちらのアイデアだと思います.要するに専門用語等は使わず,論理展開の単純明快を追求しろということですね.
2.エレベーターテストに備える.
エレベーターテストとは「仮にCEOとエレベータに乗り合わせたとしてエレベータが到着するまでの20〜30秒の時間で自分のプロジェクトを説明できるか」というテストです.いろんなところで聞いたことのあるワードではありましたが,本書を見て改めて意識してやってみようと思いました.要は思考の整理と言語化を助ける目的です.
実践(まとめ)
初回からだいぶ長くなりましたが,私の特に今後意識したいことのまとめです.
・イシューの見極めにエネルギーを費やす.
・1次情報に多く触れる.
・多少強引にでも仮説を立てて言語化し,イシューを作る.
・「考える」と「悩む」の違いを意識し,「悩ま」ない.
・プレゼンの聞き手は「地頭はいいが,知識がない人」を想定する.
それでは,ありがとうございました.