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小説「今夜あなたは、どんな夜を過ごしますか」

 こんばんわ。寒空の下、首をすくめてしまいます。皆様、今日一日いかがお過ごしでしたか。今夜もお立ち寄りありがとうございます。

前夜からの続きです。

小説-「今夜あなたは、どんな夜を過ごしますか」

file15 宮原佳菜子の母-良枝の貴重な夜

 良枝はワクワクしていた。今夜のことを。今日は、主人は飲み会で遅く、佳菜子は会社の人とご飯だという。主婦にとって一人の夜がどれほどご褒美のようなものか。勿論、普段、家族がいてのこその話しなので、大きな声では言えない。家族と過ごす夜は代え難いものだ。それがわかっていてだからこそのお一人様タイムなのだ。一人の時間を満喫したい。ご飯も簡単なもので済ます。いや、自分の好きな簡単なものだ。美味しいデザートも買っておこう。たまにはビールもいい。映画かドラマを観るか、パソコンも久しぶりに触りたい。本もいいな。大好きな友達に連絡とるのもいい。
 いざ夕方になると、すごく肩が凝って頭が痛い。このまま眠ってしまおうか。いや、勿体ない。でも、頭痛がひどくて何も出来ない。仕方がないので、マッサージに行くことにした。夜八時からオッケーだという。あ~何だか勿体ない。でもリフレッシュを兼ねていいかと割り切ることにした。 
 個室なのでゆっくり出来そうだ。じっくり味わいたいので、出来れば話したくない。「強さ加減はいかがですか。痛かったら、言って下さいね。」「はい。大丈夫です。」「お疲れですね。」「はい。」話したくないので、短めに話しを切る。「お仕事の帰りですか」「いえ。」そのうち、向こうから色々話してくる。「あっ、そうですか~。」「そうなんですね〜。」良枝は気を遣って、相づちをしてしまう。話しかけないで下さい。なんて、相手を傷つけそうで言えない。どちらがお客かわからない。結局どこにいても、人の話しの聞き役になってしまう。人が良すぎるのか。私は大物じゃなく、コ、モ、ノだ。自分に呆れて苦笑する。もう、九時を回ってしまった。せっかくのお一人様の夜が終わってしまう。
 早く帰ってお風呂に入ろう。疲れてすぐにでも寝てしまう自分の姿が浮かぶ。
残念な使い方をしてしまった。あ~あ。勿体ない。こんな時はあっという間に時間が過ぎる。いかにも良枝らしい夜になってしまった。

続く。





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