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良本を読もう。感想文書いてみました。
一生モノの課題図書
本屋大賞でメディアに紹介されていて知ってはいたが、
その帯のキャッチコピーに思わず掴まった。
余儀なくされたコロナ休み、
オバさんの課題図書にはお手頃そうな
その黄色い本を手にしたのだった。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」
そのタイトルから
アジア人と白人のハーフの子が
(本の中でも書かれている通り、ハーフという言葉は使わない方がいいのだろうが、ハーフでもダブルでもハイブリッドでも、とりあえず、一単語として使わせていただく。)
自分のアイデンティーについて悩むお話だろうということは概ね予測がつく。
そういうエピソードは今に珍しいことではなく
ずっと昔から存在している。
恥ずかしながら私もいい歳をして
つい最近までアイデンティティー迷子だった。
(理由を書くと長くなるのでやめておく・・・もちろん人種という意味ではない)
だから、13歳の夏休みに戻って読んでみる気になったのだ。
ここ数年、日本でも多様性という言葉がよく使われるようになった。
でも、日本ではグレーゾーンが幅広い発達障害においての働き方や、
教育について語られることが多いように思う。
アイヌを除けば単一民族の日本では、
(・・・はて琉球民族は?とググってみるとデカすぎる根っこが見えたのでここでは掘り起こさず。すみません。)
大陸続きのヨーロッパや多民族国家のアメリカほどには
子供の頃から民族や宗教、文化の違いやLGBTなど
多様性を身近に感じることはあまりないだろう。
日本でも所得格差や教育格差は増大し、
差別やいじめの原因になったりもするが、
本の中の少年のように
小学生や中学生で自分のアイデンティティーについて悩んだり
友人と人種や宗教といったセンシティブな会話に気をもむ機会に遭遇することは
日本では圧倒的に少ないのではないか。
「人間は人をいじめるのが好きなんじゃない。・・・罰するのが好きなんだ。」
あるある。
正義からのいじめや誹謗中傷。
あるいは自分を正当化するための標的にする。
目に余る差別的発言をする友人ダニエルを諌めながらも、
それが原因でいじめに合う彼を見放すことのない少年。
少年の舞台であるイギリスではライフ・スキル教育というのがあるそうだ。
日本であえて例えるなら道徳とか公民という教科になるのだろうか。
その中で、11歳の期末試験に「エンパシーとは何か」という問題が出されたという。
エンパシー=共感、感情移入
要するに相手の立場に立って思考するということなのだが、
そういえば、大規模災害の時の海外からのお見舞いメッセージで
「私たちは、あなた方と共にあります。」
という言葉をよく耳にする。
また、天皇陛下が常々語られる
「国民に寄り添う」
というお言葉も然り。エンパシーの表明なのだ。
日本の教育現場でも今は共感ということを大切にしているが、
なぜ共感が大事なのか?と問われたら、日本の11歳はどこまで答えられるだろう。
やはり異なる国籍や宗教、文化や価値観の人が根深く共存する社会では
エンパシーが問題解決の糸口であることがよりリアルに違いない。
「どこかに属している人は、属してない人のことをいじめたりする。
その反面、属している仲間のことを特別に守ったりする。
でも、僕はどこかに属している気分になれないから、どちらもないんだ。」
多様性に富んだ国で、自らも父母の国籍の狭間で生きる少年の叫び。
繊細で、でも揺れ動きながらも社会の一員として自分の置かれた環境に
まっすぐに向き合う清々しさ。
どこにも属さないからこその冷静なジャッジと分析。
それこそが彼のアイデンティティーではないだろうか。
そもそもなぜ人間はカテゴライズしたがるのか?
帰属する→つながる→安心。
さらに自分と違うグループを非難する対象にすることで
仲間意識はより高まっていく。
それは、時として社会の分裂にも繋がっていく。
「反逆と報復と反逆の果てに何があるのか?」
ダニエルがいじめられていることをネタに
美化した自分を世界に発信しつづけるのを
変わらず友達として寄り添いつつも、少年は疑問を投げかける。
先行きの不安感から
世界ではナショナリズムに傾きかけている国が多い中、
この少年の問いに大人はどう答えるのか?
エンパシーは人間の傲慢さを治めることができるのだろうか?
コロナウイルス禍は、まさに世界が、人間が試されているのかもしれない。
カテゴライズによらない
エンパシーこそが人間の英知を結集させて、
この危機の救いとなるのかもしれない...。
そうなることをひとえに願う。
課題図書ということなので、感想文書いてみました。
2020年4月19日