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happy end セルフライナーノーツ

aoni 4th e.p. 『happy end』
2022年10月10日
further platonicよりリリース

リリースから半年くらい経とうとしています。
音源についてずっと書こうと思っていたのですが、制作とライブ続きでなかなか時間が取れずこんなタイミングになってしまいました。
という言い訳から始まってしまいましたが、とにかく思い入れの強い作品ですので書いていきたいと思います。(Bass齋藤)

〇リリースの経緯

まず、リリースを決めたのはかなり早い段階で、DRAMAをレコーディングしてるくらいにはやく曲を作って次の作品も作りたいなってメンバーやレーベルに話してて、ツアー中に曲作りを進めつつ、リリースの構想を立てていった、というような流れでした。
そして、DRAMAツアーセミファイナル三島編でANDROIDを初披露という形で演奏し、打ち上げでレーベルオーナー芹澤さんと相談してリリースが決定しました。
ちなみに相談といいつつ芹澤さんの反応は相変わらず「いいねいいね!やろう!」と笑いながら二つ返事。
他のレーベルからリリースしたことないから分からないけど、こんなラフな感じでいいのでしょうか。たくさんリリースをしたい僕にとっては好都合でしかないんですが。

DRAMAツアー三島編での集合写真further family mart

この時点では4曲か5曲入りのEPで、「いつかカセットでリリースしてみたいな」とぼんやり思ってたくらいでした。
ただ、ツアーを終えて、自分の誕生日を迎えて年を取ったり、私生活の方でゴタゴタしたりで考えることが増えたりする中で、一度やりたいことを全部消化しようという気持ちが芽生えてきました。
今までやりたいことをやれてなかった、というわけではないのですが、バンドとなると4人が集まってやるものなのでコンポーザーをやってるとはいえど、4人で曲を作ることになり、それぞれのやりたいことや考え方が混ざり合うものになります。つまり、僕が掲げたテーマの上に成り立ってはいるものの、100%僕の考えが反映されているものではない、ということです。
それはそれで良いからこのスタイルで長いこと制作を続けているわけですが、1度僕の頭の中にあるものを完全再現する形でやってみたいということをメンバーにお願いしてみました。

〇エンジニアについて

そして、動き出したこのプロジェクト。
まずはこの特徴的なサウンドですが、もうずっと憧れ続けてるエンジニアの廣田悠樹さんによるもので、とにかく彼にレコーディング過程の全てとサウンドプロデュースをやってほしい、というところから始まりました。
廣田さんとの出会いはもう10年近く前ですが、高校生の時にやってたバンドの企画で彼が以前やっていたバンドを呼んだことがきっかけでした。僕がそのバンドのファンだったんですよね。
そのバンドはもうやってないんですけど、僕はずっと好きで聴いてて、いつかこんな音で音源作ってみたいなと思っていたのです。
そのバンドはセルフレコーディングで音源を作っていたので、その音源に近い音像でレコーディングするには彼に依頼するのが一番再現性が高かったのです。

そしてレコーディングの方法もかなり特殊で、セルフレコーディングの感じを再現するために12畳くらいのリハスタ(隣にエンジニアブースはついてた)で全員音を出した状態で一発録りしました。
それぞれの楽器を廣田さんに音作りしてもらい、出音から最高な感触がありました。
何より彼の陽気な人柄が終始場を和ませ、本当にいい環境でレコーディングできました。

ミックスの段階でもオンラインにもかかわらず※、コミュニケーションもスムーズですぐに理想の音にしてもらえました。
5トラック通して全て僕が思い描いたaoniサウンドになっております。
なんとなくですが、ドライブするときなんかに聴いてほしいなと思いました。もちろん家でカセットプレーヤー使ってじっくり聴いてもらうのも最高に嬉しいです。
※廣田さんは大阪在住のエンジニア

真ん中に座るのが廣田さん

〇楽曲解説

1.opening
1つの物語となるような流れで曲を作っていったので、オープニングテーマのようなものを付けたいと思い、レコーディング当日に山下君と廣田さんと話して試行錯誤してたら生まれたギターサウンドです。
録れた瞬間鳥肌立ちました。ジャズマスターとカーボンコピーとツインリバーブの相性はいつだって最高なんです。

2.casino
とにかく曲を作ろうと夜中でも開いてる笹塚のスタジオに終電で集まったaoni一行。
バンアパみたいなチャキチャキしたやつやりたくて、と言いながら、持ってきたリフをギター2人に伝えてセッション開始。サビの進行やら展開やらをあーだこーだ言い合ってたらあっという間に1曲できてました。
みんなに意外と言われますが、実は結成当初からこういうファンキーな曲も作ってみたいなという気持ちはあって、やっと成就したという感じです。

不穏な空気感がうまく表現できたなと満足しております。
スターウォーズみたいなストーリーにしたくて、1曲目はよくないことが起こるとこからスタートしようというのはもともと決めていました。
この曲に関しては、まだ自分が小さい頃、お祭りの出店にあったくじ引きでめちゃくちゃ騙された時のトラウマみたいな気持ちを込めています。僕は普段ギャンブルは一切やらないんですけど、この経験が根底にあるからなんだなと歌詞を書きながら納得しました。でも競馬はいつか行ってみたいです。

3.ANDROID
この曲は風呂で頭を洗っている時にインスピレーションが沸いてきた曲(aoniの曲はほとんどこれです)なんですが、リフは家で適当にギターを弾いてる時にたまたま気に入ったリフができてストックしておいたものがあり、そこから持ってきました。
リフができた後は、1番のサビが終わった後にくるギターの絡み合いの間奏が最初に思いついて、たぶん何やってもかっこよくなるだろうなという謎の自信をそこで感じてました。

サビメロは、僕が工場で働いていた頃、ベルトコンベアの前で2時間くらい同じ作業を続けてよく発狂しそうになってたんですが、その時に「あてもなく流されていく」というフレーズを思いつき、それからしばらく頭から離れなくなってしまったという誕生秘話があります。
ずっと同じ作業をさせられていると自分が人間じゃなくなるような感覚に陥る瞬間があり、そこから抜け出すように自らを鼓舞するような曲になっております。

4.odyssey
これはコロナが流行る前、たしか学生だった頃にふとサビのリズムパターンとメロが降りてきて、いいなと思いつつ寝かせてた曲です。
もともとはツインボーカルにするつもりはなかったんですがAメロとBメロがどうしても重なってしまうなーと思って、スタジオでAメロをいくとに歌ってみてもらったらいい感じに収まったという流れでaoni初のツインボーカル曲が誕生しました。

この音源が描くストーリーの山場となるような立ち位置の曲なので、心を奮い立たせるような曲にしました。バンド結成してすぐの、あの頃の僕らのようにね。
オデッセイ、その名の通り、バンドの戦記を綴るような気持ちで書きました。

5.endroll
この曲は実はaoniが結成して間もない頃に一度スタジオにデモを作って持っていった曲だったのですが、メンバーに納得してもらえずお蔵入りしたものです。個人的に絶対いい曲になるという確信が当時からあったので、一旦寝かせて作り直そうとずっと思っていました。

この音源を作ることが決まる少し前、家でボーっとしてるところに「思い描いた別々のハッピーエンド」って一節が降りてきて、瞬間的にendrollに使えるなって思いました。
あと、このepを作り始めた頃に見ていたシュタゲに影響を受けた世界観になってて気に入ってます。

〇ジャケットについて

ジャケットの真ん中に描かれた帽子を被った青年。彼のことをハピエンボーイと呼んでいます。特典ステッカーやTシャツにもなってましたね。
ボーイを描いてくれたのがなんと大橋裕之先生。漫画『音楽』を描いたことでも知られてますよね。映画見にいきました。

この音源には、4曲で起承転結を表現するというテーマがあって、4コマ漫画っぽいなと思い、もともとジャケも漫画にしたいなという気持ちがありました。ジャケに関してメンバー間で話し合ってる中で、山下君が大橋さんの漫画が好きだということもあって、一回ダメ元でオファーしてみるかという流れになり、コンタクトを取ってみました。
まさかの快く受けてくださり、aoniメンバー皆びっくり仰天でした。
そして、音源のテーマをうまく汲み取ってもらえてハピエンボーイが生まれたわけです。このどこか切なさを感じる表情がいいですよね。
ジャケ絵に加えて、実際に4コマ漫画まで描いていただけました。カセットのケースを開けて内側に描かれていますので、テープを買った方は是非そこまで楽しんでいただきたいです。

真ん中に立っているのが大橋さん

大橋さんにはレコ発ライブにも遊びにきていただいて、実際に話をしたり出来上がったテープを手渡せてよかったです。
また、後日似顔絵屋としてイベント出店している大橋さんの元に遊びにいってメンバー全員分の似顔絵も描いていただきました。それぞれ特徴をしっかり捉えられてて、かつ大橋ワールドの世界に落とし込まれていて感動しました。

〇振り返って

この音源を通してなぜ自分がバンドをやっているか、ということを思い出せた気がします。
「僕の理想とする音楽を誰もやってないから自分で作ろう」
これが僕の原動力です。
そうやって2016年から模索し続けた結果、自分の中で理想の音像に近づける方法も分かってきて、曲作りもどんどん楽しくなっていきました。
この4曲もスタジオで4人で作りながらめちゃくちゃ良いかもしれないなあ、と思っていたし、歌録りを終えた瞬間に「これが作りたかったんだ」と思えました。ミックスされた音源を電車の中で聴いて叫び出しそうになりました。おそらくすごい顔になってたと思うのでマスクに感謝です。

珍しく妥協も後悔もありません。このサウンドがaoniの答えです。
そう思った瞬間、なんだか燃え尽きたような感覚になって、今後何を目指してこのバンドを続けたらいいのだろかと不安にもなりました。そんな不安もぶっ飛ぶくらい、多くの方から「新譜聴いたよ」と声をかけてもらえて、この人たちのためにももっと頑張ろうと思いました。

活動を続ける中で多少知名度も上がってお客さんの反応とか多少気にするようになってしまった自分がいたけど、そんなことよりも自分のために音楽を作ろうと思って制作した音源です。

こんなエゴにまみれた音源を聴いていただきありがとうございます。リリース時、たくさん反応をもらえて驚きました。
その中でも、初めてカセットに触れるという人たちがカセットプレーヤーで聴いてくれているのが一番嬉しかったです。みんなカセット買いましょう。

協力してくれた芹澤社長、ディストロの皆様、廣田(チャロ)さん、松田くん、大橋さん、長谷川大さん、PAスガワラさん、さわこさん、全ての方々への感謝を改めて噛みしめております。

これでも実はまだまだ語り切れてないくらい思いの詰まった音源なのですが、ライブでこの収録曲を演奏する度にまたエピソードが積もっていっている気がしてます。

さて、文中で燃え尽きたとか言ってしまいましたがご安心ください。
aoniは既に次のプロジェクトに取り掛かっており、近日中にいろいろ発表できそうです。そちらもお楽しみに。

〇販売情報

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