鑑賞録 #11 「ヘルヴァ・ボス シーズン1 第7話:OZZIE'S & 第8話:QUEEN BEE/シーズンフィナーレ」
第7話:OZZIE'S
結婚1周年の記念日を迎えたミリーとモクシーのストーカーを遂行したいブリッツがストラスを利用して記念日デートの会場に侵入し、最終的に鬱展開になるという回。
ブリッツから電話が来た時のストラスを観ましたか?
服を選ぶ時のストラスを観ましたか?
せっかくおめかしして行ったのにブリッツに「やりすぎじゃね?」とか言われて、それでも「初めてのデートだね」ってうきうきしながらブリッツの手を引き、ブリッツを拒む受付に対して普段横柄にしないストラスが「今こそ私の出番だ」みたいな感じで高圧的な態度を取り、(ブリッツが自分とのデートのために選んでくれたと思っている)お店をこれでもかと褒め、なぜかちっとも自分に興味がなさそうなブリッツに対して文句も言わず、そっけなくされても頑張って話題を振り続け、寂しさを感じつつもずっと笑顔で好意的に接し、お店のショーで傷つけられたのにブリッツを一番に気にかけ、しかしブリッツとの間に生じた溝が埋まらず、好意がうまく伝わらず、それでも紳士的な態度でブリッツの意向を優先して、ブリッツが去った後に落ち込んで泣いていた彼を観ましたか?
私もう無理なんですけど!!!!
ブリッツ、おまえ「おれたちは取引で繋がっているだけの関係なのさ……」みたいなニヒルな考えなんだったら電話一本で貴族を呼び出すなんて普通は思いつかねーよな!!ストラスに何のメリットもないのに「デート」で釣ろうとしてるってことはストラスが自分に執着してるのをしっかり自覚しててめちゃめちゃ好意を利用してんじゃねーかボケが!!!!
ボケが!!!!!!!
つーか貴族に借りを作ってまで部下夫妻のストーカーしたいって何!?
きっしょ!!!!!!!!!!!!!!!
もうこの回のストラスが不憫すぎて初見時はすんごい泣いたし、再視聴した今回も普通に泣きました。
ブリッツが知らないこととはいえ、こっちはただでさえ好ましく思っていたストラスが必死でブリッツの電話に出て、ブリッツからデートに誘われたと天にも昇る心地で喜び、うきうきるんるんでおめかししてるところを見ていたわけなので、感情移入がひとしおなんだよ。
それがあんな扱いをされてあんなに切ないラストを迎えるなんて、胸が張り裂けそうとはこのこと。
以前、飲み友達が「某アニメを試験前に観てしまったせいでメンタル食らいすぎて単位落とした」的なことを言っていたのだが、私はそのアニメを観たこともないし「アニメにどんだけ感情移入してんだよ(笑)」と一笑に付した。
今は当時の己を恥じ、大変共感している。
本編
1x7では2名の新キャラが登場する。
ひとりはエンターテイナーのフィッツァローリ(フィズ)、もうひとりは大罪の「色欲」アスモデウス(オジー:アクセントはオ↑ジー↓)。
(アズモディアスだと思ってたけど濁らないらしい)
2x7まで一度鑑賞し終えた今ではこの二人が本当に大好きだが、この回ではただのクラッシャーでしかなかったためにあんまり好きにはなれなかったし、ちょっと偏見を持った。
フィズは1x2のLoo Loo Landで登場したロボ・フィズのモデルであり、両手両足がサイバネティックスになっていて、ロボ・フィズ同様、伸縮自在に動かすことができる。
このフィズ、ステージでの発言にめちゃくちゃ品がない。
そしてアスモデウスにもない。
色欲の街でオーナーがアスモデウスだからそういうコンセプトの店で然るべきなのだろうが、とんでもねえ曲歌ってんなあんたら……となる。
しかしアスモデウスの歌唱力が作中随一なので必聴だ。
調べてみたところ、ミュージカル版「アラジン」のジーニー役をされているJames Monroe Iglehartという方がアスモデウスの声優だという。
めちゃくちゃ動いてるのに声がブレない……
しかもジーニー役だなんて……そりゃ際立ってすごかろう……
このジェイムズ演じるオジーとフィズがステージで披露する曲が、歌詞はとんでもねえが歌声と曲がいい。
例えるなら映画「BURLESQUE」の雰囲気で、Welcome To Burlesqueあたりの渋さがある。
モクシーのピュアすぎる歌が気に食わないフィズとオジーが歌の邪魔をしてモクシーのことを散々馬鹿にしてるのがウケるけど、あまりにコケにされているのを黙って見ていられなくなったブリッツが口を挟んだの、部下思いの一面出ちゃってるよ。
案の定(というかそのための演出でもあるだろうから)矛先がブリッツに向かって、フィズとブリッツの間の確執が垣間見えるが、(1x6の幻覚でも登場していて後のエピソードで詳細が語られるが)先を知っている身としてはこんな再会の仕方なのはちょっと切ない。
偶然居合わせたポップスターで元カノのヴェロシカも参戦して一緒になってブリッツをこき下ろしているけど、ヴェロシカだってタトゥー入れるくらいブリッツのことが好きだったはずなのに……もう……ブリッツ……あんたってやつは……
それにしてもヴェロシカが「ブリッツォ?(ねえみんな)私たち付き合ってたの」と歌い始めてからのストラスの反応がめちゃくちゃいい。
いつもどおり顔芸もしているが、目線が上下に動いてヴェロシカをがっつりチェックしている。「え?この人がブリッツィの元カノ?この人がブリッツィの恋人だったの?」みたいな動揺が見えてとてもかわいい。
さて、ここからが鬱展開。
Happy Pillsが必要なやつ。
晒し上げがストラスにも飛び火して大勢の前で名誉を傷つけられ、負い目のあるところに言及されてブリッツの視線から目を背けたシーン、ブリッツは「ブリッツの存在(もしくはブリッツとの関係性)を恥じて目を背けた」ように感じてしまったのかもしれない。
本稿の冒頭でブリッツをボケ呼ばわりしているが、(1x6で描写された悪癖が出ている可能性があるとはいえストラスを利用したことと店に到着してからのそっけない態度が許せないので「ボケ」も「きっしょ」も取り消さない──取り消し線を引いてはいる──が)彼も彼なりにしんどい思いをしていることだけは分かった。
1x6でのトラウマになりそうな幻覚体験からも本当は他者との関係に傷ついて怯えているブリッツが示唆されているので、目を背けられたのはきっとつらかったろう。
とはいえ。
今回のブリッツのきっしょ行動や態度の悪さが話の流れを作るためのものだとは分かっていても、それでもストラスの健気さと彼が悲しんでいるところを見てしまうと本当にやるせない気持ちになる。
拒絶されるのが怖いという気持ちがあんなに根強くあるのならストラスにももう少し優しくしてあげてよ……
ラストの暗闇の中、ソファに寝転びながらブリッツはスマホの写真フォルダを開き、画像をスワイプしていく。
ストラスとの自撮り、ミリー&モクシーと一緒にタピオカを持っている写真、モクシーがIMPに入社した時の写真、ルーナを養子に迎えた時の写真、ヴェロシカとの仲良さげなツーショット、フィズとのツーショット、ピエロの格好をしたフィズとのツーショット、そして、家族写真。
これを見たブリッツが突如声をつまらせて泣き始めたところはしんどかった。
今の仲間や、仲良しだった頃の写真を今もちゃんと保存していて、落ち込んで帰ってきてそれを見るなんて……沈んだ心を紛らわせるために見てるってことだよね?
ていうかストラスとの自撮りってブリッツが撮ってるよね?
ただのセフレとの写真なんか撮るか?
いいえ撮りません!
しかもストラスが寝てる時に!
ただのセフレが横で寝てるツーショの自撮りなんてするか?
し ま せ ん ! ! !
後のエピソードで判明するが、家族写真でブリッツの隣にいるのはブリッツの双子の妹(姉?)のバービー(Barbie Wire)だ。
1x3でヴェロシカが
"Rehab is for sad loser wash-ups. So, your sister says Hi."
「リハブなんて憐れな負け犬のやること。で、あんたの妹が"よろしく"ってさ」
とバービーの存在に言及している。
バービーをいいように使ってブリッツを煽っているが、ヴェロシカはアルコール依存でリハブ施設にいたので、バービーも一緒だったことを示唆している(もしくはバービーがリハブしていることをヴェロシカも知っている)ようだ。
バービーは後のエピソードで登場し「リハブが終わったなら連絡してくれよ!助けになりたいんだ!」「なんであんたに連絡しなきゃなんないの?あんたの助けなんか求めてない!」みたいな会話をブリッツとしているので、彼女もアルコールあるいは薬物依存になっていたのだろう。
1x6の幻覚の中でモクシー、ストライカー、フィズ、ヴェロシカ、ストラスの幻覚に散々苛まれてたのに、そこに血縁のバービーまで加わんの?
ブリッツ、あんたマジで抱えすぎじゃない?
第8話:QUEEN BEE
養父が鬱展開になっている一方、ルーナは彼女持ちで片思い相手のヘルハウンドのテックス(Vortex:1x3で登場)に誘われ、パーティー会場へ。
このパーティーの主催者&テックスの彼女でもあるビー(Beelzebub)は大罪のひとりで「貪食」の悪魔。
Vivのやる気が見て取れるキャラクターデザインで、おなかと髪?のマーブル部分が常に流動している。
めちゃくちゃかわいい。
ヴェロシカのキャラデザもすごく良かったが、ビーは大罪の一人なだけあって派手さとポップさが段違いだ。
QUEEN BEEと社会不適合者のルーナ
豪華なパーティーにやってきたはいいが、シャイで不慣れなルーナはテックス以外とまともに会話することもできない。
ルーナを知っているらしき悪魔たちもいるが、
高慢でmeanな態度をルーナに取り続け、怒って反抗したルーナの方が周りから顰蹙をかうはめになっている。
真ん中のプードルっぽい悪魔が「ウザい」という概念を具現化したみたいなめちゃくちゃ鬱陶しい喋り方してて本当にうざい。声優さんあっぱれ。
ビーのステージが始まって、後で引用している「Cotton Candy」を歌いながら会場を飛び回り、フロア中がハッピーなバイブスに。
大盛り上がりのみんなとは対照的にいまいちノリきれないルーナ。
酒を飲め酒を。
酔って喧嘩をふっかけたり騒ぎすぎて迷惑をかけるような酒癖なら別だが、ああいう場所ではバカになった方が勝ちだ。たとえ酔いが覚めた後で自分の醜態を思い出して死にたくなるとしても。
しかしルーナはテックスから手渡されたドリンクを一口も飲まないまま「ついてけねー…」みたいな表情。
テックスからビーを彼女だと紹介され、ビーもテックスもルーナにずっと好意的だったが、ルーナは居づらくなってブリッツに迎えを頼もうと電話する。
だから酒を……飲めばいいのに……
一方自宅でアイスクリームをバケツごとやけ食い(しかも2つ目?)中に寝落ちしたと思われるブリッツは着信で目を覚まし、相手を認識した途端「ルーナから電話!??!!?!」みたいなリアクション。
そして即パーティ会場に迎えにやってくる。親バカである。
Kesha
「ビーが歌ってる曲、なんかKe$haのバイブス感じるわ〜Ke$haとか超なつけ〜〜」
とか思ってたら曲を作ったのがまさにそのKe$haで、しかもビーの声優までやってるというから驚き。(今はKesha表記にしてるっぽい)
曲のボーカルはKeshaじゃないらしいけど、まるでKeshaみたいだ。
初見時これをきっかけにYouTubeで彼女の曲を聴いていたら右のおすすめ欄がKeshaを聴いていた当時トレンドだった洋楽で埋め尽くされててノスタルジーがすごかった記憶がある。
アルバムでいうと「Animal」と「Cannibal」くらいしか聴いていなくて最近はまったく追っていなかったが、流れで最近の曲も聴いてみたら結構よかった。
KeshaのVoice actingを英語話者が聴いてどう感じるのかは分からないが、あの気怠げで肩肘張らず「今日たのしけりゃいーじゃーん」みたいな感じがものすごくビーと合っている。
むしろVivがKeshaからインスパイアしてビーのキャラクターを作ったんじゃないかと思うほど。
Keshaはエンドクレジットでスペシャルゲスト扱いになっているからビーの声優さんは変わっちゃうのかもしれないが、素晴らしいキャスティングだった。
余談:よく聴いてたKe$haの(関わっている)曲5選
パーティーでもモテモテのブリッツ
ルーナを迎えにきたブリッツだがパーティー会場に知り合いがいて、さらにちょっと元気を取り戻したルーナにお願いされて「しょうがない……1杯だけだからな」と会場に残ることに。
もちろん1杯で済むわけがなく、気分的にもヤケ酒がすすむのか浴びるように飲むブリッツ。樽ごといったり、ビーと早飲み勝負したりとあきらかに飲みすぎていて完全に目が据わっている。
しかしルーナが "Yeah!! That's my Dad!!" と大喜び、さらにビーがブリッツを立ててくれたことで周りからも大人気。
この時にちょっと満たされたような嬉しそうな顔してるブリッツがかわいすぎるんだよね〜〜〜〜
なのに泥酔したブリッツはそのへんのインプと今にもおっぱじめそうな雰囲気、というかおっぱじまっていて、ルーナがそれを咎めて引き離してもまた別のインプからお誘いがかかるし、ブリッツもそいつと抱き合って「いいね」とノリ気。
ブリッツ、モテモテなんだな……
"Better." の時のベロを出してるブリッツがかわいい。
(なぜそのキュートな感じをランダムインプにみせてストラスにみせないーーーーーーーーー!!!!!!)
だけど結局ルーナもパーティーを楽しめてたのがよかったよね。
ブリッツに電話した時は「来るべきじゃなかった」と嘆いていたけど、ブリッツが来てくれてからは心強かっただろう。
車中「吐きたい?」と聞くルーナに、弱りつつ甘えた感じで "No." と返してたけど、普段誰かを煽るためにしか甘えた言い方を使わないのに酒の力もあるとはいえルーナには素直になっている感じが微笑ましい。
家についてからブリッツを優しくソファに寝かせ、水を汲んであげるルーナ。ルーナが水汲んであげてんの?マジかよ。
酔っ払って弱音を吐くブリッツ。
完全にバッド入っているブリッツにルーナは "I'll be there dad." と応え、ブランケットをかけてあげる。
いやもうJess Glynneじゃん!!!!
このI'll Be Thereの歌詞、1バースめが今回のルーナ to ブリッツ、2バースめが今回のブリッツ to ルーナにぴったり。
1x7でストラスに感情移入するあまりつらすぎて泣いたりしたけど、まさかHBであったかい気持ちになって涙する日がこようとは思わなかった。
さすがシーズンフィナーレ……
最後はしっかり品のない感じで終わらせてHB感を持ち直していたけど、S2でもしっかり鬱展開が待ち構えている。
続編が今年リリースされるようだし、振り返りつつ遡って感想を書けているのはちょうどよかったかも。