2.ゆる展: 「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展(東京都庭園美術館、東京)
東京都庭園美術館で開催中の青木野枝さんと三嶋りつ惠さんの展示を観に行きました。東京都庭園美術館(本館)は、1933年に皇族朝香宮家の自邸として建てられ、1983年より美術館として開館しました[3]。建物は、1910~30年代に主にフランスと周辺のヨーロッパで流行った装飾スタイル、「アール・デコ」を取り入れており、館内にいるとタイムスリップしたような気持ちになります。青木さんは鉄を、三嶋さんはガラスを主に用いた作品を制作しており、大小さまざまな作品を鑑賞することができます。
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/241130-250216_noeaokiandritsuemishima-2/ [1]
https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2024/12/handout_Fadj2.pdf [2]
特に好きな作品
展示no.11:青木野枝《ふりそそぐもの/朝香宮邸ーV》(鉄、石鹸2024年)
展示室に入った瞬間、石鹸の良い香りがしました。20−30cmほどの高さに積み上がった、何十、何百?もの使用された、平べったい固形石鹸が鉄製の展示台に設置されていました。室内は、良い香りで居心地が良かったのと同時に、緊張感のある空間でもありました。6つの石鹸タワーが約50cmの正方形の展示台の上に整列されてあり、6台ほどの展示台がきっちりと配置されてあったので、背中がピンと伸びました。使用された石鹸は、角が取れており、シーグラス/ビーチグラス(浜辺に落ちている、角が取れたガラスの破片)のようです。シーグラス、小さい頃よく集めていたことを思い出しました。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/29919/pictures/8 [4]
展示no.15:三嶋りつ惠《INFINITO(Infinity|無限)》(ガラス、2023年)
作品を観た時に真っ先に思ったことは、「きらきら、きれい!」。作品は大きな窓がある廊下に展示されており、私は日没後に鑑賞しました。暗い廊下の中で、直径5cmほどの小さな照明が作品の真上から照らされており、作品が暗い空間の中にきらきらと浮かんでいるようにみえました。その照明によって、ガラスのいろんな角度が細かく輝いていて、とても綺麗でした。光は柔らかく静かに輝いていたので、気持ちが落ち着く空間でした。日没後だったからこそ、作品の煌めきをより感じることができたのかも知れません。
三嶋さんはインタビュー動画で、「日本人は光自体じゃなくて、光に反射したきらきらしたもの、直接的ではない光が綺麗と言うところが面白い。[5]」と仰っていました。「直接的ではない光」というのは、例えば太陽の光自体ではなく、太陽光が映り込んだ月のように、何かに映り込んだ光のことになります。三嶋さんは、「日本人はそのような間接的な光を好んでおり、昔から俳句で月光の美しさについて謳っている。」とインタビューで回答していました。三嶋さんは、私を含む多くの日本人が感じることを100%言語化されていてびっくりしました。きらきらしたものは美しい、綺麗だなって思います。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/29919/pictures/11 [4]
展示台へのこだわり?
展示を見て「展示台へのこだわりがすごい!」と思いました。展示台が展示品や展示空間にぴったりで…!例えば、
展示no.17:制作をめぐる資料(展示NO.17)|三嶋さんの作品資料室
白い円形の展示ケースの中に、作品パーツや作品の参考となるものやガラス細工をするための工具が作品のように美しく配置されていました。台の円内が照明で白く照らされていて、展示品が輝いていてうっとりしました。また、部屋の中心に台が置いてあったので、台の周りをゆっくり一周できたのも嬉しかったです。
https://www.fashionsnap.com/article/2024-12-16/wonderment-exhibition/#lg=1&slide=1 [6]
展示no.19:制作をめぐる資料|青木さんの作品資料室
展示室の真ん中に大きな展示ケースがあり、上から作品スケッチや資料を覗き込むことができました。それだけではなく、台の中央は作品の小さなサンプルが台から上に飛び出ていて、作品の素材感をじっくり見ることができました。真ん中が飛び出る(ように見える)展示ケースは初めて見たので、「どゆこと?」と思考が追いつかず…。どのような仕様になっているのかとても気になりました!
展示no.24: ウィンターガーデン(冬の温室)での展示
本館最上階にある、温室の床はチェス盤のような白黒のチェック柄になっています。作品はミラー素材の展示台の上に設置されていたため、チェック柄が永遠に続いているような不思議な感覚を覚えました。
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/29919/pictures/12 [4]
・゜゚・:.・゜゚・:.。
「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展 は、光を別の形で触れることができました。青木さんの鉄を使用した作品は、鉄を溶接するときに見える火の光から着想を得て制作し[7]、三嶋さんのガラス作品は、透明度の高いガラスに光が差し込むことにより、光を感じることができます[1]。実際に触れることができない光を何かを経由して触れることによって、様々な光の捉え方を知ることができました。私は日没後に展示を観に行きましたが、日中に観に行ったら、日光が作品に差し込み、違う見え方になるのかなと思うので、もう一度展示に行ってみるのも楽しそうです。展覧会は来月2月まで開催中ですので、皆さんもぜひ行ってみてください!
【展覧会概要】
展覧会名:そこに光が降りてくる青木野枝/三嶋りつ惠
会期:2024年11月30日(土) ~ 2025年2月16日(日)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
開館時間:10:00 〜 18:00 (入館は閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日。ただし2025年1月13日(月)は開館、1月14日(火)は休館。
展覧会HP:
<参考URL>
[1] “そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠”, 東京都庭園美術館, https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/241130-250216_noeaokiandritsuemishima-2/ (参照 2025.01.06).
[2]“展覧会マップ そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠”, 東京都庭園美術館, https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2024/12/handout_Fadj2.pdf, (参照 2025.01.06).
[3] ”東京都庭園美術館とは”, 東京都庭園美術館, https://www.teien-art-museum.ne.jp/museum/, (参照 2025.01.06).
[4]王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部), ”「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」(東京都庭園美術館)開幕レポート。光をめぐる作品の対話”, 美術手帖, 2024.11.30, https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/29919, (参照 2025.01.06).
[5]Teien Art Museum / 東京都庭園美術館, “三嶋りつ惠 インタビュー「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展”, 2024-11-30, video, 06:26, https://www.youtube.com/watch?v=j84Xu5roI18, (参照 2025.01.06).
[6]”東京庭園美術館で展覧会「そこに光が降りてくる」が開催、ガラス作品がアール・デコ建築を彩る”, FASHION SNAP, 2024.12.16,
https://www.fashionsnap.com/article/2024-12-16/wonderment-exhibition/#lg=1&slide=1, (参照 2025.01.06).
[7]Teien Art Museum / 東京都庭園美術館, “青木野枝 インタビュー「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」展”, 2024.11.30, video, 07:14, https://www.youtube.com/watch?v=UoH2fsKOa0k&t=331s, (参照 2025.01.06).