時間とお金とスペースの話。
実家を出るまで時間とお金とスペースの節約について真面目に考えたことなんてなかった。
家事なんてしなくても全てが回っていたから、小手先でやりくりしなければならないのは自分のやりたいことをするための時間だけだったし、お金に困ったら(というよりもとより困らない)助けてくれるひとはいつもそばにいて、家は3階建でどこにでもとりあえずの物を置けるスペースはあって、断捨離を迫られることもなかった。
それが、ひとりぐらしを始めて一転した。
掃除洗濯料理をしていたら自然と時間は削れる。残された時間をやるべきことやりたいことにどう当てはめていくか必然的に考えさせられる。
お金は減る。生きているだけでその場所に存在するだけで減っていく。水にも電気にもネット回線にもお金は必要だった。
部屋は狭い。スペースを買うためになにができるか考えるほどだった。
すべて、ひとりぐらしをしなければ気づかなかったこと。
しかしふと実家に帰り気付くのだ。
時間にもお金にもスペースにも縛られない生活に、自分の心がゆるみ潤っていく感覚。
「1万円?まあ損してもいいんじゃない?次から気をつければ。」
こんな私がポンと生まれた。半月前まで失った1万円のことが頭にこびりついて離れなかった私はふわっと笑って消えた。
また戻ってくるだろう。でもそうしたらまた、かすかすになった心と身体を癒してくれる場所に帰るのだ。
ただいま、って。