動くのは何故?
高齢者施設で働き始めてから3週間が経ちました。
まだまだ仕事に慣れない日々ですがその中でもいろいろと考えさせられることもあります。
数日前の事。その日は朝の経管栄養が終わった後、輸血をする利用者さんの見守りがありました。時々動いたり起き上がることがあるので輸血が終わるまで誰かが側にいて危険のないように見守りが必要ということらしく、私が行うことになりました。初めて会う利用者さんです。
今働いている施設では基本的に抑制は行いません。
したがって経管栄養中もチューブを抜いてしまう可能性のある方の場合、必ず誰かがつきっきりで見守りに入ります。
輸血が始まり、バイタル測定をしたり皮膚や全身状態を観察しながらその方の側についていました。その方はしきりに足を伸ばしたり曲げたりしています。輸血が必要ということはヘモグロビン値も低く、躯幹もガリガリではないが痩せ気味の方で体がだるいんだろうなと思いました。「足をマッサージしても大丈夫ですか?」と聞くと「うん」とうなづかれるのでマッサージを始めました。しかしどうしても足を伸ばしたり曲げたりして動かしています。「足じゃないんだろうな」と思い「身体のどこが一番つらいですか?」と聞くと、「背中から腰だ」と言います。
足を動かしているから足がだるいんだろうなと思ってしまったのですがそうとは限らないんですね。初めから聞けばよかった!と思いました。私が足のマッサージをしている間その方は「違うんだよな!」とイライラしていたかもしれません。
その後背中から腰にかけて静かにマッサージを始めました。
すると足を動かすこともなく目を閉じてウトウトし始め、結局輸血が終わるまで約2時間動くことも起き上がることもなく、体温上昇が少しあっただけで無事終了しました。
「身の置き所がない」と言いますがそれに似た経験は多くの人が持っているのではないかと思います。この方のように何かしらの疾患があって輸血が必要な方の場合は特に、体のだるさや何とも表現しきれないような不快感、ひどいときは息苦しさを感じるほどの苦痛を常に抱えているのでしょう。またこの方はたぶん我慢強いところがあって「痛い」「苦しい」「不快だ」ということをあまり口に出さず、「起き上がってみたらだるさが良くなるか?」「だるくて眠れなかったら気分転換に歩いてみようか?」なんて考えて行動しているのかもしれません。
入職したばかりでまだ利用者状況も良くつかめていない私ですが、高齢者の方の行動の裏にその方の思いやこだわりがあるということを忘れずに仕事をしなさいよと言われたような気がした日でした。