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日経WOMAN 女性の手帳特集号を読む【2】

2.日経WOMAN2004年~2019年 手帳特集

前回、女性が「夢」「理想」を言葉にする背景には、女性が仕事上おかれている状況が男性とは違うのではないかという点が気になった。それで引き続き日経WOMANの手帳特集を読んでみることにした。

(1)約15年間の手帳特集の様子


現在入手できた資料にもとづく同誌の手帳特集の変遷は以下のようになっている。手帳に加えて、関連するノート術、タイムマネジメントの特集も抽出した。

1988年  日経WOMAN創刊
2004年まで 資料なし
2005年  手帳特集なし
2006年  [1月号]人生を変える手帳術
2007年  手帳特集なし
2008年  [12月号]やりたいことは手帳でかなえる!
2009年  [12月号]働く女性の手帳術★決定版
2010年  [11月号]人生が変わる!手帳術
2011年  [11月号]一冊の手帳で私が変わる!
2012年  [1月号]毎日がときめく!タイムマネジメント
       [11月号]人生が変わる!新★手帳術
2013年  [11月号]本当に使える!手帳&文具
2014年  [11月号]手帳で変わる 私の未来
       [8月号]私がもっと輝く時間の使い方
2015年  [5月]時間の使い方がうまくなる ノート&手帳術
       [11月号]手帳の選び方 書き方
2016年  [9月]人生が変わる朝時間
       [11月号]なりたい私に近づく!最高の手帳
2017年  [5月号]時間のムダが9割減る ノート&文具
       [11月号]1年後、私が劇的に変わる!手帳のコツ300
2018年  [4月?]人生が9割うまくいく 時間の新ルール
       [6月号]毎日が充実するノート術
       [11月号]未来が整う!手帳の書き方300
2019年  [2月号]忙しくても余裕がある人の時間のコツ100
       [6月号]なりたい私にどんどん近づく ノート&メモ術
       [11月号]私が劇的に変わる!手帳のコツ200 
2020年 [5月号]最高の毎日がはじまる 手書きノート術 
                      [11月号]書いて“私の今”を残したい人急増中 
                                       ~私たちの手帳術2021

 日経WOMAN 2008年12月号

日経Woman_2008年12月号


日経WOMAN 2009年12月号

日経Woman_2009年11月号


日経WOMAN 2010年12月号

日経Woman_2010年11月号


日経WOMAN 2011年11月号

日経Woman_2011年11月号

日経WOMAN 2012年11月号

日経Woman_2012年11月号

(2)考察
①手帳特集の時期

2008年までは、手帳特集は恒例ではなかったことがわかる。また2009年までは、手帳特集は11月発売の12月号に掲載されていた。
確かに2010年頃から各社の手帳の発売がが早まった記憶がある。現在は、大型文房具店や大手スーパーの手帳売り場は10月に設置されている。

②未来志向

「かなえる」「人生が変わる」「未来が変わる」「私が劇的に変わる」と、手帳は一貫して「未来を変えるもの」として描かれているのが特徴的だ。私は、この未来を志向する気持ちがうらやましく感じる。手帳以外に頻繁に組まれる特集、「自分の未来のためのお金」「体のメンテナンス」「資格取得」等も同じように未来を描いており、主人公の「私」を大切にする姿を素敵に感じる。

一方で、繰り返される「変わりたい」「叶えたい」という思いはどこか切実に響く。「今よりももっとよくなりたい」であれば素敵なことだが、「今の辛い現実を何とか変えたい」でなければ良いと思う。

③時間活用術

2012年から、年末の手帳特集とは別に、時間やノート術の特集が毎年組まれるようになっている。時間術は、新生活が始まることが多い4~5月(5~6月号)に掲載されることが多いようだ。これは、この雑誌が働く女性を主な読者としていることによるものだろう。

一方、働く女性誌が時間の使い方の特集を繰り返し組むのは、女性が自分の時間を大切にするからだけではなく、女性の生活像があるのではないか。人生のある時期に出産、育児を経る人がいること、そして、その後の子育てや家事においても女性が相当の負担を負う生活があり、女性は時間をやりくりせざるを得ない現状があるのではないか。


日経WOMAN 2013年11月号

日経Woman_2013年11月号


日経WOMAN 2014年11月号

日経Woman_2014年11月号


日経WOMAN 2015年11月号

日経Woman_2015年11月号


日経WOMAN 2016年11月号

日経Woman_2016年11月号


日経WOMAN 2017年11月号 

日経Woman_2017年11月号


日経WOMAN 2018年11月号

日経Woman_2018年11月号


日経WOMAN 2019年11月号

日経Woman_2019年11月号


④男性誌との差

これに対して、多くの男性誌の手帳特集は、仕事の時間管理と情報収集・管理を中心に組まれている。男性誌が手帳を「ツール」「武器」と書くのは、女性誌が手帳を「パートナー」と書くのと対照的である。
男性は生活の時間を仕事を中心に組み立てていればそれで済んでしまうのかもしれない。これまで仕事のことしか書いていない私の手帳がつまらないのは、仕事をこなすための道具に過ぎないからだろう。

男性誌、女性誌の手帳特集から典型的なキーワードを拾ってみた。

女性:
手帳はパートナー
私が変わる
なりたい私に近づく、人生が変わる、未来が変わる
時間の使い方
自分を見つめる
癒される
ライフログ 私の今を残したい

男性:
手帳はツール、武器
スケジュール管理、タスク管理
情報の集約と管理、活用
成果が上がる
パフォーマンスを高める
アイデアがわく
人生設計する

この明らかな差は普通の状態ではない。この埋まらない溝を考えていて、暗い気持ちになってきた。夢を描く女性の手帳のことを書こうと思って始めた記事だったが、どうやらそんな楽しい話では済まないようだ。
私が専門職で、男女の業務差がなく男女がほぼ同数の職場で働いていることから、労働における男女差について疎すぎたのだと思う。

楽しい手帳の記事を読みたいと思っていた皆さんごめんなさい。次号は労働市場の厳しい現実の話を書こうと思います。
ただその上で、女性という性はとてつもない強みと可能性を持っていると感じているので、そのことも書きたいと思います。(つづく)

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文 :Ⓒ青海 陽


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青海 陽
読んでいただき、ありがとうございます!☺ かつての私のように途方に暮れている難病や心筋梗塞の人の道しるべになればと、書き始めました。 始めたら、闘病記のほかにも書きたいことがたくさん生まれてきました。 「マガジン」から入ると、テーマ別に読めます(ぜんぶ無料です)🍀