私のスマホ写真で振り返る今年のイベント体験 2023 【6月-その2】ロザリーナ・大森靖子
[トップ画像]大森靖子とともに活動しているアイドル、ナナちゃん
🔷ロザリーナ
私がロザリーナに出会ったのは、2020年の緊急事態宣言の時でした。宣言中も、私はエッセンシャル・ワーカーとして、毎日職場に出勤していました。
町には人がまばらでした。駅や商店では、皆が隣りの人が感染者ではないかと疑心暗鬼になり、殺気立っていました。咳払いをすると、睨まれました。マスクをしていないと、罵倒されることもありました。「敵はウイルス、人じゃない」という意味のキャッチコピーが多く作られました。
ワクチンも治療薬も開発されていなかった当時、そのウイルスに感染すれば隔離入院となり、重症化によりある程度の確率で死に至る病でした。
仕事から帰った夜、部屋の中で過ごす時間には、何とも言えない孤独感がありました。その日一日を生き延びたことを感じながら、殺菌効果を信じてヒノキのアロマオイルをたいて、息をひそめて布団に包まり、うずくまってすごしていました。そんな時にネットから流れてきたのが、ロザリーナの「百億光年」と「何になりたくて」でした。
この頃の在宅の時間は、しばらくすると「ステイホーム」「おうち時間」「巣ごもり」等と呼ばれるようになりました。SNSが対面コミュニケーションの代替手段になりましたし、オンライン配信技術が飛躍的に発達したのもこの時期でした。
私にとって、この時期にネット上で出会った音楽には、深い思い入れがあります。あの頃の空気が閉じ込められた音楽は、ふと耳に入ると、今でも涙が出てきます。本当は怖かった。怖いのを我慢して仕事に通っていたのだと思います。
感染拡大が落ち着き始めた頃、私は三年間の足あとを確かめるように、ライブを訪れました。あの頃の歌を歌っているその人に会って、声を聴きたかったからです。ロザリーナもそんな一人でした。
ロザリーナに会いに行ったのは、確か昨年、電車の高架下の小さいライブハウスに行ったのが最初。次が今年2月の下北沢440。今回がたぶん三回目だと思います。
スノーボーダーのようなファッションというのでしょうか。ロザリーナは白のダボっとしたパーカーとスウェットパンツ、ハイカットの白のバスケットシューズでステージに上がります。
彼女の歌は等身大で、そこが一番好きなところです。生きる思いが間近に感じられるのは、数多く見てきたミュージシャンの中で、彼女が一番かもしれません。
🔴「何になりたくて」ロザリーナ
🔷大森靖子
大森靖子については何度も書いてきましたので、今回は写真で描くことにします。
山下公園がある山下埠頭の向こう側。3つある本牧埠頭の一番手前のAふ頭にあるライブハウスです。ライブに向かう道、倉庫しかない殺伐とした灰色の風景の中に、大森カラーのピンクが咲きます。
会場のYokohama Bay Hallは、光の美しいライブハウスでした。
大きな音を出すからでしょうか、ライブハウスはたいてい地下にあり、窓がありません。東京ミッドタウン4階にあるビルボードライブ東京などは、窓からの景観を特長とした珍しい例なのかもしれません。強いて言えば、飲食できるハウスは地上にある場合が多いのかな、とも思います。
誰も住んでいない埠頭にあるせいか、このライブハウスには広い窓があり、ガラス越しに横浜の海が広がっています。明るい陽射しの中でステージを待つのは、どこかのんびりした空気がありました。
始まる頃には、ぶ厚い遮光カーテンで、ライブハウスおなじみの闇が作られます。
普段なら、一人で向き合ったらあまりにも淋しい風景。暗くて怖い誰もいない場所が、ライブ終わりの満たされた気持ちだと、キラキラと輝いて見えます。そんな一人の時間が好きです。乾いた風景が、意味を帯びて潤ったような気がします。
文・写真:©青海 陽2023
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