家系図判例で見る行政書士の業務範囲 ~行政書士の業際問題 第8回~
はじめに
こんにちは!
年が明けましたね。
今年もどうぞよろしくお願いします。
さてこれまで行政書士の業際問題を考えるシリーズとして
他士業様の条文を用いて業際をみてきました。
弁護士・税理士・司法書士・社労士さんですね。
中小企業診断士さんは独占業務がありませんので、
残りは公認会計士・不動産鑑定士・弁理士・土地家屋調査士・海事代理士さんです。
とはいえ、公認会計士さんの監査と不動産鑑定士さんの鑑定についてはそもそも業際を侵しようがなさそうな気もしますので
実質的な残りは3士業かなと思います。
本日はその前に一つ別の事を挟みたいと思います。
それは行政書士法の条文にあります。
その他権利義務又は事実証明に関する書類とは?
行政書士法に定められている業務は主に3つ
①官公署に提出する書類
②権利義務に関する書類
③事実証明に関する書類とは
これら3つの業務でかつ他士業等で制限されていないものが行政書士の仕事であるよとこれまで調べてきたのですが、
もう一つ見ておかなければいけない視点があります。
それは②と③はどこまでがその範囲とされるのか?と言う事です。
②と③の業務はいわゆる民亊法務と言われるものですが、
それこそ何千?種類と言えるぐらいの種類がありますよね。
代表的なのは契約書とか協議書みたいなものですね。
(紛争性のあるものは弁護士の業務範囲)
これらがどこまで行政書士の独占業務と言えるのでしょうか?
つまり、士業以外の例えば民間業者との違いを把握しておきたいという事です。
これについて一つ判例があるのですね
それがこちら
平成22年12月20日 行政書士法違反被告事件 最高裁判所第一小法廷
↑詳細は上記リンクをご確認ください。
家系図作成にかかわる裁判ですが、
こちらの判例にて一つの基準が示されています。
「事実証明に関 する書類」とは,「官公署に提出する書類」に匹敵する程度に社会生活の中で意味 を有するものに限定されるべきものである。
つまり、事実証明に関する書類であれば何でもかんでも行政書士の独占業務となる訳ではなく、許認可申請と同等の重要度が必要であるという事だそうです。
例えば今回の裁判であった家系図ですが、観賞用として作成されたものは
そのレベルではないという判断になります。
※法定相続情報一覧図のように相続に使用するための図とは別と言う意味
こちらは作成できる士業は限られます。
観賞用の家系図作成は民間の事業者でも作成することができるという訳ですね。
ただ、この場合注意しないといけないポイントは行政書士は家系図作成ができないという話ではありません。
行政書士でも家系図作成はできます。
ただ、行政書士の独占業務としては認められないという話です。
民間の事業者と同じ立場と言う事ですね。
行政書士にとってこの場合の違いは何かといいますと、
行政書士の職務上請求書は使用できないという事になります。
そのため家系図作成のために戸籍を取得する際は委任状が必要と言う事ですね。
おわりに
権利義務に関する書類・事実証明に関する書類というと
幅広い書類が想定される訳ですが、一定の重要度以上のものでなければ行政書士の独占業務としては認められないという訳ですね。
とはいえ、その業務ができないという事ではありません。
(職務上請求書は使用できませんが…)
行政書士の士業であるという立ち位置や法律知識や守秘義務がある等の優位性をもってその業務をアピールする事は可能であると思われます。
と、言う事で本日は士業との業際ではなく、民間事業者との業際を家系図の判例をもって確認してみました。
いかがでしたでしょうか?
それではまた!