チェルノブイリ原発が観光地になっている件
今からちょうど一年くらい前の2018年の春に、チェルノブイリに行ってきました。その旅行記です。
日本は原子力と深い歴史を持つ国ですが、この記事は広島・長崎・福島、あるいは日本国全体に何か示唆や提案をもたらす意図はありません。ご理解の上読み進めていただければと思います。
チェルノブイリ原子力発電所は、1986年に原子力事故を起こした原子力発電所です。おそらく名前くらいはみなさん聞いたことがあるとは思います。世界最大級の事故現場を、改めて自分の目で見ておきたいと思い、現地に行くことにしました。
原子力に対する物理学的観点での学び、安定稼働を阻害したものは何か?という大規模システム運用面での学び、冷戦の当時の状況など学ぶものがたくさんあったので、行き方など参考になるところがあるかも、と思い記事化することにしました。
まずはキエフにいこう
チェルノブイリはウクライナ🇺🇦にあります。肝心の旅費ですが、安い時を狙えば12万円くらいで往復できます。適当な平日で検索したエクスペディアの結果を貼っておきます。
私が利用したのもカタール航空でしたが、ふかふかしてたり機内食が美味しかったり、非常に満足できる航空会社でした。おすすめです。
今回はキエフ観光が目的ではないので、あまりうろうろしていた訳ではありませんが、いくつか写真を乗っけておきます。いわゆるソビエト系ヨーロッパという感じで、ヨーロッパの街並み・ロシア正教の協会などがあります。また、ウクライナは2014年にクリミア危機・ウクライナ東部紛争という内戦があり、慰霊のモニュメントがありました。
チェルノブイリツアーに予約しよう
ここからが本題です。ではチェルノブイリにどうやって侵入するのか。その方法はいたって簡単です。Googleに「chernobyl tour」と入れるだけです。そうすればいくつかツアー会社が見つかります。今回は私が利用したhttps://chernobyl-tour.com/special_journeys_en.html を紹介します。
ツアー申し込みは上記のようなサイトになっていて、Google翻訳などを使用すれば英語が苦手な方でも申し込みすることができます。見てもらえばわかるように、グループツアー・プライベートツアー・数日のコースなど色々なコースがあります。私は1日フルのプライベートツアーを申し込みました。キエフからの送迎・ランチ・軍人のガイドがついて、250ドルくらいでした。結果、プライベートツアーでよかったです。やはり自分の好きなことが質問できるし、日本の話に絡めて話してくれるのでよかったです。おすすめです。
順番的にキエフの写真の後にツアーの紹介をしましたが、ツアー申し込みは出発前に行ってくださいね。いきなり入れる施設でもないので、7日前までの申し込みなどが必須だったはずです。お気をつけて。
ツアー当日の様子
ここからが嘘のようなホントの話が続きます。まず、「あ、この人たち原発ツアーに行くんだ」とまるわかりのバスでホテルに迎えにきてくれます。
日本に住んでいると、ギョッとするマークですね。(ハザードシンボルってこういう使い方していいのかな...) この車は石油を燃料にしているのでご安心を。キエフからチェルノブイリは130kmありますので、車で100分くらいですかね。特にすることもなかったので、街並みを眺めていたり、るろうに剣心を読んだりしていました。
到着すると軍が管理しているゲートで受付をしますが、その横にお土産やさんがあります。シールとかTシャツとか売ってます。私はコップを買いました。完全に観光地のそれです。
で、ここからゲートで受付をするのですが、さすがにそこは写真が禁止でした。そこでガイガーカウンターを渡されます(写真撮り忘れた)。で、ガイガーカウンターは基本的にピーピー鳴ってますが、数日観光するくらいなら大丈夫です。ただ、赤い森という場所があるのですが、そこは今でも高い放射線量があるらしく、この数字は超える場所には行くなと念を押されました。
失われた街、プリピャチ
原子力発電所はプリピャチという街にありました。そこは研究者や原発に関わる仕事をされている方が多く住んでおり、いわゆる高級住宅街だったそうです。プリピャチは、今は放射線量が高く人の住める街ではなく、誰も住んでいません。建物なども当時のままで放置されています。いくつか紹介します。病院・役所・学校です。
足の踏み場も難しいところを、軍人ガイドと回ります。丁寧な英語で話してくれるので、高校程度の英語力があれば多分大丈夫です。
案内してくれた軍人です。アメリカやソビエトに何か恨みがあるとかでもなく、フラットにいろんなことを話してくれました。日本の地震や津波の心配をしてくれて、非常に好感持てる人でした。はい。
これは某ゲームで有名な観覧車ですね。ここは遊園地だったそうです。しかしオープンする前に事故が起こってしまい、結局稼働することはなかったとのことです。エンターテイメントは安全・平和の上に成り立ってるんだなと気づかされます。
これは小学校で、床に散らばっているのはガスマスクです。この画像を見ると、「事故が起こった時に小学生がマスクをして避難したんだ」みたいなストーリーが浮かぶのですが、真相は全然違うようです。
冷戦当時は、アメリカ軍が化学兵器を使用することを想定し、学校にはガスマスクが配備されていたようです。ガスマスクの中には銀が使用されているのですが、事故の後に銀泥棒が現れて、銀だけを盗んでいったようです。で、いらなくなったマスク部分を放置したと。で、手前のテレビは誰がかフォトジェニックになるようにおいただけで特に意味はないそうです。
真実を知ると案外あっけらかんとするものですね。
アメリカの通信を傍受するための巨大なレーダー
冷戦時代のアメリカの通信を傍受するためのレーダーだそうです。結構な予算をつぎ込んで作ったものらしいです。
「あ、この施設も原発事故の影響で使用不可能になったのかな」って思うじゃないですが、真相はそうでもなくて、「そもそもの設計がイケてない&ノイズまみれで使いもんにならん」という背景があったそうです。試運転中に原発事故が起こったらしいのですが、当時の責任者は原発事故のせいにしてこの施設を手放せたことに胸をなでおろしたという話を聞きました。
事故を起こした4号炉はどうなっているか
後ろのドームみたいな中に、事故を起こした4号炉がいます。2017年までは外観が見えたらしいのですが、今は追加工事が始まっているらしく外観は見えません。
まとめ
チェルノブイリ原子力発電所は、世界にひらかれた観光地になっています。原子力に対する物理学的観点での学び、安定稼働を阻害したものは何か?という大規模システム運用面での学び、冷戦の当時の状況など学ぶものがたくさんありました。
例えば、原子核崩壊は原子から出ているものなので、靴底についた土を落とすと明らかに靴裏の放射線量減るんですよね。また、事故の原因が「発電所の試験中に手順書にないことをした」からなんですが、なぜそういうことが起こったのかという社会主義の背景だったり。そういうのをひしひしと学んだ旅程でした。
個人的にはダークツーリズムを趣味にしているので、またなにか書くかもです。ダークツーリズムといっても悪趣味で行っている訳ではなく、人類の過ちや忘れてはいけない歴史を自分の人生に刻む、そういう活動だと私は捉えています。