新しい自分になる旅の話

■第1話　最初の変化

今日のお客さんは、
10日前に体験に来られて
今回が来店2回目の方だ。


体験の後、何か変化はあったのだろうか？
人によって何をどう感じるかは
千差万別であって
こちらがコントロールできることではない。


でも、体験のときの雰囲気から
少しでも人生が変わるきっかけを
与えられていたらいいなと思っていたので、
やはり少し気になっていた。



ふと僕は目線をスタジオの壁に
かけてある時計に向けた。
約束の時間の13時まではあと7分だった。


「変化があったかどうかは、
　あとで聞いてみることにしよう・・・」


そう思いながら、
施術ベットのタオルを準備して
お客さんが来るのを待った。





ピンポーン、、

スタジオのインターホンが鳴った。

「はーい、どうぞ！」

マンションのオートロックを解除して
お客さんがスタジオのある部屋の前まで
来るのをドアを開けながら待つ。

少しすると
お客さんが部屋の前まで
コツコツと足音を立てながらやってきた。


「こんにちは！どうぞお入りください」


そう挨拶をした瞬間、
10日前のお客さんの雰囲気とは
何か違うように感じた。


更衣室で着替えをしてもらいながら、
天気の話や世間話をする。
そして、身体の調子を聞いてみた。


すると


「先日体験した後しばらく身体が軽くて
　そのせいか便通もいいんですよ。」


と答えてくれた。
その声は、前回の時よりも
明るくなっているように聴こえた。


以前から、便秘が気になっていて
サプリを摂るのが習慣だそうだ。
それでも、サプリが効いたり
効かなかったりしてたのが、
ここ数日は調子が良いとのことだった。


身体に好影響が出ているということは、
あの件のことについても、
きっと良い影響が出ているに違いない。

僕はそう思ったが、
まだ核心に迫ることは聞かない方がいいと
判断して質問することは控えた。


施術ベットに仰向けで寝てもらい、
寒くならないようにタオルを丁寧にかけて
足先から整体を始めた。





身体にかかるストレスを
お客さんと一緒に取り除いていく。
少しでも本来あるべき姿に近づくように
丁寧に身体に触れていく。


「ここ、硬いのわかりますか？」

「ここ、もっと柔らかくて小さくなるんですよ」


そう言いながら、
その箇所をお客さんにも感じてもらう。

ここが、
硬くてストレスがあるのが
わかりますか？

そんなやりとりをしていくと、

お客さんは
頭でいろいろ考えることよりも
感性を使って感じられるようになっていく。

現代人は、思考に偏りすぎだ。
常に思考を働かせ頭ばかり使い
感じるということを忘れてしまっている。

偏り過ぎているのは
不自然な状態。

当然、何かの支障が出てくるのだ。



整体を受けながら、
これまでストップさせていた感覚、
特に体性感覚を徐々に取り戻していく。

感じるということが
どういうことだったのかを
思い出していくように、

自分の身体がこんなに
硬くなっていることや
痛みがあることを感じていく。

すると、
感じるという感性が高まっていく。

自然と思考が働かなくなり、
頭の中が真っ白になった瞬間
触れている部分が芯から緩むのを
感じることができる。

シューっと
芯から緩み柔らかくなる


その状態こそ、

その人の
本来あるべき姿であったり
自然体に近い状態なのである。





足先やふくらはぎが緩み
柔らかくて小さくなったとき
お客さんが話を始めた。


「そう言えば、
　前回初めてセッションを受けた後に
　これまで何年もの間、
　頭の中でモヤモヤしていたことが
　あったんですけど、それが
　気にならなくなりました。

　思っていたことを吐き出したら
　なんか色々変わっちゃいました私

　なんか楽です、いろんなことが。」




えっ、もう変わっちゃったの？
はやっ。

僕は、心の中でそう呟いた。

不思議だけど、
きっかけがあると
人はそれまでどれだけ悩んで
いたとしても一瞬で変わることができるのだ。

まるで、髪型を変えることや
服装を変えてみたときに
気分が変わるのと同じように
案外、あっさり、簡単に
変わってしまうこともある。



しかし、
この変化はほんとうの意味での
変化ではない。

ほんの一部分であって、
未来から考えると変わったうちに
入らないと思えるくらいのことだと
言っても言い過ぎではない。

それくらい、
人間ひとりの持っている可能性は凄い。



それでも、
初回の体験のときと比べたら
大きな変化であり気づきだったのだろう。

現に雰囲気も変わっているし、
身体も変わっている。

僕は、施術をしながら、
10日前に体験に来たときのことを
思い出していた、、


つづく



※この物語はフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。

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