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誰かの居場所になるために。タイムカプセルだからこそつくれる、様々な人と共有できる体験とは?

れもんハウスは、誰かの居場所をつくりたいという想いから、2021年12月にオープンした西新宿にある一軒家です。新宿区の子どもショートステイの協力家庭に登録するなど、すでに様々な方にお使いいただいています。(れもんハウスについての詳細はこちらから)

今回は5月にれもんハウスが開催したタイムカプセル企画について、発起人の3名にお話をお伺いしました。なぜれもんハウスがタイムカプセル企画を行ったのか、そこにはタイムカプセルならではの「手紙」や「未来」といったキーワードに3人の経験から生まれた想いが込められていました。(タイムカプセル企画の詳細はこちらから)

藤田琴子(写真右)
1992年東京生まれ、横浜育ち。れもんハウスの運営団体である、一般社団法人 青草の原の代表理事。社会福祉士。現在は母子生活支援施設の支援員として、DV・虐待・貧困・障害など様々な事情で入所した親子と生活の場で関わっている。

竹澤汀(写真中央)
アーティスト。2011年から17年まで音楽グループGoose house
に所属、2017年から独立。琴子さんとは小学校の同級生。青草の原の理事。

尾形鋼樹 (写真左)
青草の原のメンバーとして、HPやLP作成を担当。

手紙を書くことは相手に想いを強く馳せること

ーーこのタイムカプセル企画はどのように生まれたんですか?

汀:琴子ちゃんが、未来に予定があるとそれが心の支えになるって話をしていて、すごく共感したんです。私の周りにミュージシャンをはじめとした表現活動をしている人が多いんですが、コロナ禍のときに予定がどんどん飛んでしまって。自分もそうだったんですけど、予定がなくなってしまうと、自分って何者なんだろうとちょっと辛くなってたんですよね。だから、誰かに会いに行く、誰かと何かをするとかでも、ちょっとした出来事を未来に置いておくっていいなと。この体験をなるべく多くの人と共有できる方法として、タイムカプセルになりました。

琴子:私はれもんハウスでお母さんたちとも関わっているのですが、心身の調子がよくないと予定を入れるのも億劫になってしまう方がいるんです。そういうときに、れもんハウスによかったらそうじに来てね、お庭に水やりに来てねとか、行っても行かなくてもいい予定を入れておいてもらうんです。そうすると、億劫になっているときでもちょっと行ってみようかなと思えて、外に出るとそれだけで気持ちが上向いたりするなと思っていて。

鋼樹:あとは、タイムカプセルって特に学生の卒業式や入学式の節目のイベントでやることが多いと思うんですが、今コロナで少なくなってしまっていますよね。1人ではなかなかやらないからこそ、皆と一緒に節目のイベントを体験できるといいよねという話もしていましたね。

:タイムカプセルは、手紙というのもいいですよね。私がもらうファンレターに書いている内容って、日常生活の変化や「失恋しました」「恋人ができてすごくうれしいです」とか自分の話が多いんです。相手に何かを伝えるために書いていると思うんですが、日記みたいですよね。私はそれがすごくいいことだなって思ったんです。忙しくてなかなか自分のことを考えられないときでも、手紙を書く時間は自分の気持ちを整理する時間になる

あとは、手紙を書くときは相手に強く想いを馳せますよね。いま言葉を伝える方法は手紙以外にもありますが、手紙ってスマホで打つみたいに簡単に消せないから、構成をちゃんと考えて、何から書き始めようかなとか、どんな言葉を使おうかなとか、考えることが多くなります。その分、相手のことを想ってるということだなと。ラブレターって言葉はあるけど、グッバイレターってないですよね。だから、手紙って前向きなことを伝えるものなのかなぁって。

ーー未来って悲観してしまいやすいので、未来の自分を思いやりながら手紙を書くっていいですね。

:以前本当にきつかったとき、自分の状況をとにかく悲観して、それを紙に書き出したことがありました。それを1年後に見たときに、よくがんばったな、ここまで生きてきてすごいね、という気持ちにもなって、自分を褒めることができて。時間が解決してくれることもあるし、時間が経つと忘れられることもあります。一回そういうことを体験すると、つらいことがあっても、また1年後にはきっと乗り越えて元気になってる、頑張ろうって思えるようになる。タイムカプセルでも同じことができるだろうなと思っています。

ーー「5年後」にしたのはなぜですか?

鋼樹:最初、何年後にするかは話し合って、5年だと、小学生1年生だったら6年生、中学生だったら高校生と、ちょうどライフステージが変わりやすい周期。1〜3年後とかだとなんとなく想像できる、逆に10年後だと全然想像できない、それでいうと5年後だと少し想像できそうで、できない、みたいな感じがちょうどいいなってなりましたね。

年齢性別問わず、様々な人と共有できる体験を

――タイムカプセル企画とれもんハウスはどのようにつながるのでしょうか?

鋼樹:共通点は、どんな人でも共有できる体験であること。まず前提として、れもんハウスを、子どもも若者も大人も誰でも来やすい場所にしたいと思っています。人と一緒に遊んだりお茶をしたり会話をしたり、誰かとつながれてホッと一息ついてほしい。そのような居場所にしてもらうためには、周りの人たちと共通の体験があるといいなと思っています。なので、このタイムカプセル以外でも一緒にたこ焼きやお好み焼きをつくって食べたり、いろんなイベントをやったりしています。

琴子タイムカプセルも手紙も年齢関係なく、みんなが同じようにできる体験だなと思っていて。例えば、自分は楽しかったなと思ったとしても、相手が本当に楽しいと感じているかどうか、わからないですよね。けど、体験だと感覚ではない「事実」になる。同じ体験は共有しつつも、感じていることは違うから、それを話すのがいいなと思っていて。だから、例えば50代の人と10代の男の子でも、タイムカプセルを開ける5年後に一緒に集まったときに話す体験とか、いいなあと思っていますね。

――確かに、共通点が他になくてもタイムカプセルという接点があるだけで話すことができますね。

:見ず知らずの誰かと出会うことって、大人も子どもも今あまりないのかなと思っていて。この企画だと、普段なかなか接点を持たない人とも、タイムカプセルに興味があるという一点だけでつながることができる。そういうことが、自分の考え方や心を豊かにしてくれたり、楽にしてもらえたりすることもあると思っていて、今の年齢になってすごく貴重だなと思いますね。

タイムカプセルから始まるつながりを大切にしたい

ーー実際にプレイベントではどのような反応がありましたか?

琴子:子どもより大人の方が書くのが難しそうでした(笑)大人だと未来が多少想像しやすいから書きにくくて、子どもはわからないから無邪気に何でも書けるのかもしれないですね。

実際のイベントの様子

ーー5年後にタイムカプセルを開けるときも楽しみですね。

:そうですね、まだちゃんと考えてないんですけど、イベントができたらいいなと思っています。例えば、手紙を展示してその中から好きな手紙に返信をするとか。

琴子:返事はワクワクしますね。そこからまた新しいつながりが生まれそう。あとは、れもんハウスにポストを置いて、リレーのように、知らない人に宛てて手紙を書くとかも面白いかもしれないですね。自分の元にはもう戻ってこなくて、誰にその手紙が渡ったかもわからない。こうやって考えると、手紙って新しいつながりを生むきっかけになるので、ワクワクしますね。

ーー最後にメッセージをお願いします。

琴子:れもんハウスに来たことのない人や直接知らない人にも、タイムカプセル企画に参加してほしいと思っています。そこから、もし興味を持ってもらえたられもんハウスも知ってもらって、自分に合った関わり方を見つけてくれたらうれしいです。

photo by 緒原 多句斗 Tact Ohara
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interview and edited by とやまゆか (ポートフォリオはこちら