辻信一さんによる「ムダのてつがく」のお話会
青草の原でインターンをしているひなです。
5/2に文化人類学者の辻信一さんが、れもんハウスにて「ムダのてつがく」についてのお話をしてくださいました。辻先生のメッセージや、辻先生のお話について皆で語りあったときに感じたことなどをまとめてみました。ご一読していただけると嬉しいです。
「役立つことからの解放。」
「精神を病む」という言葉を私は日常的に口にしたり、友人から聞いたりします。皆さんも当たり前のように使っているかもしれません。
しかし、この言葉がどれほど深刻なものなのか、真剣に考えたのは初めてでした。
ムダを省いて効率的に生産することや、均質であることが求められる社会で、多くの人々が簡単に「精神を病む」ほど追い詰められているのかもしれません。
今回のお話会では、辻先生が「役立つ」という思いから解放されることの大切さについて話してくださいました。
「人材」という言葉があるように、今の社会は、「あなた」の存在よりも、「あなたの生み出すもの」に価値を置かれているような気がします。
一方で、最近の研究では、自然界の全ての存在は役に立ち合っていて、誰が誰を助けているかわからないほど、その助け合いの網目は複雑だということが明らかにされました。
自然界には何ひとつムダな存在はなく、全てのものには居場所があるのです。
人間もまた、自然界の大きな生命循環の一部です。「役立つか」「ムダか」の判断は、人間中心の考えで勝手に自然界に持ち込まれた視点でした。
つまり、人間も存在しているだけで複数の誰かの役に立っていて、全ての存在には居場所があるのです。
だから、これ以上、「役に立とう」としなくていい。これが辻先生が私たちに伝えてくれたメッセージでした。
辻先生のお話を終えて、れもんハウスでは、皆で輪になって、自分の生き方や他者との向き合い方について、人を愛するということについて、それぞれが歩んできた人生の経験を踏まえながら沢山お話しました。
辛い過去の経験や自分のコンプレックスについて共有する場面もあれば、嬉しかった思い出や大切な人のエピソードを共有する場面もありました。
自分のストーリーを話して、他人のストーリーを聞き、そして、自分のストーリーと他人のストーリーが重なって共感が生まれるような時間は、あなたでアルことが認められ、ともにイルことが大きな力となるような空間を生み出しているように感じました。
その日、皆が「居心地が良かった〜」と言って帰っていきました。
それは、辻先生のお話について皆で語り合い、肩書きではなく、あなたの存在が認められ、あなたの存在が誰かを勇気づけたり、安心させたりできたような会だったからではないかなと考えます。
辻先生、イベントを企画してくださった方、れもんハウスに集まってくれた人、素敵な時間を作り出してくださった皆さんに感謝します。
(hina)