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子どもショートステイ@れもんハウス

東京の新宿区にある一軒家「れもんハウス
ここでは子どもも大人も
元気な人もちょっと元気がない人も
いろんな人が集まってきて、
その時々に居合わせた人たちが
れもんハウスの空間を作っています。

そんなれもんハウスは
新宿区の子どもショートステイの
協力家庭でもあり、
何人かの大人がショートステイで
お泊まりする子どもと
一緒に生活をするという日が時々あります。

運営は一般社団法人 青草の原🐑

子育て中の家族。お家の近くに、子どもをちょっと預かったり、泊まりで見ててくれる人がいないと困ることがあります。

例えば、ひとり親で体調を崩し、入院が必要な時。子どもを数日間見てくれる人が周りにいないと、「自分が我慢すれば…」と治療をせず、どんどん体調が悪化してしまい、取り返しのつかないことになってしまいます。

例えば、数日間の出張が入った時。それも預け先がないことで「出張に行けない」となると、仕事の方にも支障が出てしまい、減収にも繋がり、養育することへの心理負担が大きくなってしまいます。

例えば、初めての子育てで一生懸命やっているのに、夜泣きで寝不足になって心身共に疲れてしまった時。ひと息もつけずに、家の中で煮詰まってしまったら、自己嫌悪のループに入って、自分も子も傷つくようなことをしてしまうことだって起きてしまいます。

そんな時に、いや、そんな状況になる前に、数日間、子どもを預かることのできる制度が「子どもショートステイ」です。

子どもショートステイとは

児童福祉法に定められている「子育て短期支援事業」として、「ショートステイ事業」(お泊まり)、「トワイライト事業」(22時までの預かり)があり、れもんハウスではこのどちらも受け入れをしています。

〈新宿区子どもショートステイとは〉
対象:区内在住の生後60日〜18歳未満のお子さん
保護者の方が下記(1)〜(5)の場合で、昼夜を通してお子さんを養育する方がいないときに、区内の児童福祉施設や協力家庭で預かり、養育します

(1)病気や出産のため入院をする
(2)家族の病気の介護をする
(3)事故や災害にあった
(4)出張する
(5)そのほか、育児疲れ、育児不安等で、お子さんを家庭で養育できない事情ができたとき(レスパイト)

新宿区ホームページより

誰がどんな時に使えるのか

対象年齢や条件などは自治体によっても違いますが、新宿区では0歳〜2歳までの子どもは乳児院、2歳以上の子どもは協力家庭という一般のご家庭で受け入れるようになっています。(2023年4月現在)

基本的には、利用する方の住んでいる地域の近くにある協力家庭に泊まりにいくことが多く、子どもたちも普段通っている保育園や学校に通いながらショートステイの期間を過ごすことができます。

実際に一番利用の理由として多いのが、(5)の育児疲れなどによるレスパイト利用です。

特にひとり親のご家庭が多いようですが、親子がお家で過ごしている中で煮詰まってしまったり、周りに頼れる親族や友人がおらず、全部自分でやらなければと気負っているうちに、疲れが限界に達してしまっていたり…
そんな時、そしてそうなる前に、「ちょっと休憩」ができる選択肢として、ショートステイが利用されています。

れもんハウス型ショートステイ(パイロット)のよさ

れもんハウス型の特徴

れもんハウスでは、ショートステイで子どもと一緒に過ごすことに関心のある約20名が有志で新宿区の協力家庭として登録をし、れもんハウスに受け入れの依頼が入ったら、その有志のメンバー(チームメンバー)でシフトを組んで子どもを受け入れる、という形をとっています。

ここに加わっているチームメンバーは、普段児童福祉の仕事をしているソーシャルワーカーもいれば、IT関係や事務の仕事をしている人、子育て未経験の人、幼稚園の先生をしている人など、年齢も仕事も住んでいる所もばらばら。

そんな人たちが何人かでチームを組んで、子どもと一緒にショートステイの期間を過ごします。一緒にごはんを食べたり、遊んだり、お出掛けをしたり、保育園に送りに行ったり…れもんハウスという一つのお家で一緒に暮らす数日間、色んなドラマが生まれる瞬間です。

そんな、れもんハウス型のショートステイの取り組みで、いいな〜と思うところを紹介します。

れもんハウスにはお庭もあって家庭菜園をしています

子どもにとってのいいところ

①色んな人に出会える
れもんハウスには普段から、子どもや若者、大人まで、色々な人が集うことがあります。ごはんを食べたり、おしゃべりしたり、本を読んだり、仕事をしていたり、庭をいじったり、寝ていたり。。チームメンバーの人以外にも多様な人に出会えます。

そんな色んな人が集う場所だからこそ、今まで出会うことのないような人たちと一緒にごはんを食べたり、遊んだり、と時間を過ごす中で、新しい価値観に触れる機会にもなります。今までは「ダメでしょ」と怒られていたことをした時に、「面白いね、もう一回やってみて!」と言われることもあるかもしれません。逆に今までは何も言われなかった言葉について、「そう言われると傷ついちゃうな」と言われることもあるかもしれません。こんな人もいるんだ〜、こんな生き方もあるんだ〜、と実際に出会って知ることができます。

②他の家庭の生活を知ることができる
れもんハウスという一軒家で一緒に暮らす中で、チームメンバー間でももちろん、子どもも自分の普段過ごしている家での当たり前が、他の人にとっての当たり前でないことを知るきっかけにもなります。そんな中で自分の家の良さを感じたり、或いは他の居心地の良さを感じたりする機会にもなります。

③保育園や学校にいつも通り通える
施設でのショートステイや一時保護所などに泊まることになると、いつも通っている保育園や学校に行けなくなることが多いですが、協力家庭でのショートステイの場合は近い地域での受け入れなので、登園や登校もすることができます。

親にとってのいいところ

①「施設に預ける」というハードルが少ない
他の自治体でもショートステイの制度はありますが、その多くは児童養護施設や母子生活支援施設の中のショートステイの枠での預かりです。「施設」に子どもを預けるということに対して心理的なハードルを感じる方にとっては、れもんハウスのような「家」という選択肢があると、より使いやすい制度になるだろうなと思います。
また、里親や協力家庭など一般のご家庭に預けることに対して不安を感じる方にとっても、ある程度SNS等の発信で様子が見えるれもんハウスのような「場」であることが、預ける心理的ハードルを下げる、という側面もあります。

②親が実際に来てみて安心して預けられる
れもんハウスのようなショートステイ以外でも開いている場があると、親子はそこに遊びに来て、イル人たちにも出会って、雰囲気もわかります。その関係性ができた子が「ここならお泊まりできる」、親も「ここなら預けられる」、そう思えて初めてショートステイを使おうと踏ん切りがつく親子もいます。

③ショートステイの後も繋がり続けられる
ショートステイで一緒に過ごした子が「お母さんも連れてきたい」と言ってくれることもあります。日頃から様々な人に開いている場であるからこそ、ショートステイを通じて出会った後も、れもんハウスとしての関わりがそこからスタートできることはとても嬉しいことです。
れもんハウスでまたその時にいる人たちが出会って、一緒に遊んだり、日頃のもやもやを言い合えたりするような関係としてなんとなく繋がりが広がっていく、という光景もあります。「思春期の子どもと二人での夕食はなんだか苦しくて」と連絡が来たら、れもんハウスでのごはん会にお呼びしたり、逆にお宅に若者を連れてお邪魔したり、といったご近所付き合いのような有機的な繋がりに発展しています。

チームメンバーにとってのいいところ

①オープンな子育てを体験できる
れもんハウスで子どもを受け入れるために区に登録しているチームメンバーの多くは自分の子どもの養育の経験がないメンバーです。仕事で子どもと関わっているメンバーもいますが、普段全く子どもと関わることのないメンバーにとっては、毎回新しい発見があります。これから子どもを育てることになるかもしれないメンバーもいる中で、ここでの経験は、「家族だけで子どもを育てなくては」「他人に迷惑かけないように、、」というマインドではなく、「こうやって色々な人と一緒に子育てができたら楽しそう」という、子育てに対しての楽しみや安心に繋がっていくのだろうと思います。

②里親等をやりたくてもできない人も参加できる
チームメンバーの中には、里親をやりたかったけど、家の間取りや家族構成、今の仕事の働き方などの理由から里親になれないメンバーもいます。里親に限らず、子育てのサポートをしたり、子どもと暮らしの場で関わってみたいけど、「自分の家では、、」「仕事の忙しさにムラがあって、、」などなかなか踏ん切りがつかない人も、チームメンバーとしての関わり方であれば気軽に参加することができます。

③大人同士の新しい出会いや繋がりも作れる
チームメンバーも多様な人たちが集まっていて、良いチームワークでショートステイを受け入れられるよう、メンバー同士の交流会も定期的に行なっています。チームメンバー以外にもショートステイ期間中にれもんハウスに来ている人との出会いもあります。興味関心が近かったり、或いは全く違う分野だったり、共通の趣味や協働できそうな事業があったりすることも。そんな素敵な出会いが沢山生まれる場で一緒に過ごせることもおすすめポイントの一つです。

地域にとってのいいところ

①れもんハウスに来てショートステイに繋がる
ショートステイの利用窓口は区の子ども総合センターですが、そもそもショートステイという制度があって間口広く使えるようになっていることが知られていないという課題もあります。れもんハウスに来るようになった親子と、話の流れで「れもんハウスでもショートステイ受け入れてるんですよ〜」なんて話をすると、「そんなのがあるんですね!」「どうやって申し込んだらいいんですか?」という会話になることがあります。少しオープンな場でショートステイを受け入れることが、必要な人に必要な情報が届くきっかけになっています。

②地域の応援団が増える
「親にとってのいいところ」で紹介したように、ショートステイの後も親子と繋がることができることで、親子を支える地域の関係機関だけでは聞ききれないような親子の日常の中での困りごとをキャッチしたり、ちょっとご近所さんの関係としてできることをしたりできます。そんな場や関係性が地域の中にあちこちできたら、親子も孤立せずに、みんなで一緒に育てよう、の雰囲気のある地域ができていくのではないかと思います。

③セーフティネットに選択肢を増やす
れもんハウスではショートステイを受け入れてから、その後一時保護委託を受けるようにもなりました。一時保護委託とは、子どもが何らかの事情で自宅で生活することが難しい場合に、児童相談所が介入して子どもを一時保護しますが、一時保護所への入所ではなく、別の場所で保護することを言います。虐待通告件数が増加していて、都市部では一時保護所の慢性的な定員超過が起きている中で、それぞれの子どもに合わせた保護委託先を作っていくことが喫緊の課題になっています。このような場が増えることが、「学校には通いたい」「友達に会いたい」といった子どもたちの思いを尊重できる選択肢を作ることになります。

れもんハウス型ショートステイの弱み

そんなれもんハウスのショートステイ。もっともっと広がったらいいな〜と思っています!が、もちろん課題もあります。

①入れ替わりの多さ
一つは、ショートステイ受け入れ期間中に一緒に過ごす大人が複数人いることで、人見知りだったり、変化の苦手な子どもにとっては負荷がかかることです。ショートステイが始まる前にマッチングがあるので、そこはできるだけ具体的に親子にもお伝えはしています。変化が少ない方がいいお子さんは一般の協力家庭の方が合うと思うので、別のご家庭とのマッチングをしてもらっています。

②シフトを組むのが大変
ショートステイの依頼が来ると、約20名のチームメンバーにショートステイ候補日を送って、その期間内に参加できる時間を選んでもらい、調整を行なっています。2泊3日くらいだと比較的早くシフトが組めますが、1週間や2週間のケースになるとそれが大変。働いているメンバーが多いので、「17時には間に合わないけど19時には、、」ということもあります。長期でもすぐにどうぞ、と安定的に受け入れていくためには、特に夕方の時間にコンスタントに入れる人が必要だなと感じているところです。

③コーディネート等の人件費が今のところつかない
ショートステイを受け入れる際、区からの委託費が支払われますが、それは一般の協力家庭でもれもんハウスでも同じ金額です。この協力家庭の制度自体、ボランタリーベースの事業ということもあり、上記のようなシフトの調整や子ども総合センターの方との平日日中のやりとり、全体の運営に関する作業についての人件費は今のところつきません(2023年4月現在)。ここがクリアになると、もっとこの取り組みも広がっていくだろうなと思います。持続可能な仕組みにしたい!!

最後に

「居場所」をつくる取り組みが増えてきている今、そういった場にくる子どもが「今日家に帰りたくない。」ということもきっとあると思います。

親が「1日でもいいからゆっくり子どものこと気にせず寝たい。」と呟くこともあるかもしれません。

そんな時に「じゃあ今日泊まっていきな」「今夜一緒に過ごせるよ」って言える場所が地域のあちらこちらに生まれたら。

この色んな大人が開かれた場で一緒に子どもと過ごすショートステイの形が、きっときっと、安心して一緒に子どもを育てることのできる温かい地域づくりを進めていく一つのエネルギーになっていくと思います。

「家族」をちょっとひと休みすることは必要。そのためにショートステイという制度が、必要な時にすぐに使えるものにしていきたい。それも含めて、西新宿のれもんハウスという実験拠点から、今後も試行錯誤しつつ、働きかけて、広げていきたいと思います!

このような取り組みに関心のある方、他の自治体でもはじめてみたいと思う方、ぜひご連絡いただければと思います。一緒に作戦会議をしましょう!
アドレスはこちら▶︎info@aokusa.or.jp

また、金銭的なところでのサポート、応援もとてもとても助かります。ご寄付をいただくことで、より活動に注力できます。マンスリーメンバーも募集中ですので、ぜひこちらからご寄付いただけますと幸いです。▶︎ https://aokusa.or.jp/#donate
応援よろしくお願いします!

運営している一般社団法人青草の原や「れもんハウス」についてはこちらのHPをご覧いただければと思います。