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【短編小説】サマータイムカプセル

 朝から晩まで目まぐるしい。
 騒々しい目覚まし時計に起こされ、俺は朝飯も食わず、半自動的にスーツに着替えた。
 通勤途中の満員電車に揺られながら、今日の立ち回り方について考える。上司や先輩の気に障らないように動かなければならないからだ。
 会社に着くと、呪文みたいな企業理念を皆で復唱する。「すべてはお客様のために」「価値を生み出す行動を」理想を連ねた言葉を、俺は無感情に発した。
 形だけの朝会を終え、今度は先輩と外回りに出る。移動中は、ひたすら先輩の愚痴を聞いた。昼飯の間も、上司やお客さんの愚痴ばかり。よくもまぁ次から次へと思いつくものだ。俺は、内容には耳を貸さず、とにかく良いタイミングで相槌を打つこと、時々「なるほどですね」「ははぁ、それは大変ですね」などと合いの手を入れることの2点に注力した。
 しかし営業先は、当たれど当たれど、新規顧客に結びつかない。飛び込み営業は、飛び込んだだけで一日が終わった。
 帰社すると、先輩は「一服してくるわ!」と言って、そのまま帰ってこなかった。
 俺はといえば、その後上司に1時間以上しぼられた。定時は過ぎていたが、勿論残業代などつかない。気づかないんだろうか。最初の1分くらいの話をずっとループしてますよ。
 お願いだ。俺に構うな。俺のことはもう忘れてくれ。
 そんなことを思いながら、俺はただ謝り、改善することを伝え続けた。この人に見捨てられたら、ここにいられなくなる。俺なんかが他にやっていける場所などないのだから。
 家に帰る途中、気づいたらホームセンターでロープを買っていた。ロープを買ったのなんて生まれて初めてのことだ。そして今夜が最後になるだろう。
 そそくさとアパートに帰り、自室のドアを開けながら、ロープをどう吊るすか考えを巡らせた。ドアの向こうには、冷たい暗闇があるだけで、当然引き止めてくれるような誰かは待っていない。いつも通りのことに、俺は深いため息をついた。
 悪戦苦闘しながら天井からロープを吊るし終え、椅子の上から見下ろしてみた。中央には、頭を通すための輪っかがある。
 ロープを前にしても、俺には何の感慨も湧いてこなかった。この人生にわずかでも価値を感じることができるかもしれない。そんな淡い期待を抱いていたが、あっけなく打ち砕かれた。
 気づけば俺は、他人の顔色ばかり伺って、毎日目的もなく生きてきた。こんな日々をこれからも続けていく気力など、俺にはないのだ。せめてドナー登録でもしておけば良かったと後悔したが、今夜で終わりにしてしまいたい気持ちの方が強かった。
 すぅーっと深呼吸をして、椅子から飛び降りるタイミングを図る。
 痛みはあるんだろうか。目玉とか飛び出るんだよな。即死というわけにはいかないか。後片付けする人のことを考えるならトイレも行っておくべきか?
 あれこれ考え出すと、なかなか踏ん切りがつかない。「ふっ」とか「ほっ」とか、かけ声を出してみたが、へっぴり腰な姿勢から、随分長い間飛び出せずにいた。
 今夜は、諦める、か。
 そう思いかけた瞬間。

 ピンポォォォオーーーーーーーーーンッ

 静まり返った部屋に、雷を落とすような鋭さでその音は鳴り響いた。
 それがインターホンの音だと気づいた時、椅子は前方へ傾いていた。           
 身体が宙を舞う。体感ではゆっくりと。ロープの輪っかの中へ視界が吸い込まれていった。
 そして唐突に急降下して、目の前は暗闇に覆われた。



 「うわああああああああああああ!!!」
 リレーのクラウチングスタートでも見せたことのない反射速度で、僕は飛び起きた。
 肩が大きく上下し、半袖のパジャマは、ぐっしょりと汗で濡れている。
 六畳の洋間。ゆっくりと首をふる扇風機。ランドセルが掛けられた勉強机。その上には、悠太と組み立てた恐竜の骨格のプラモが置いてある。
 僕の部屋だ。
 「夢かぁ...」
 南向きの窓からは、カーテンごしでも容赦のない日光が差し込み、蝉たちの騒々しい声が聞こえてくる。
 夢の中で、自分があまりに情けない大人になっていて、ひどくモヤモヤした気持ちだった。
 あんな大人になるもんか。不快感を脱ぎ捨てるように、へばりつくパジャマを身体から剥がし、タオルケットに投げつけた。
 それから、扇風機の頭をガシッと掴んで、火照った身体に風を当てた。
 「涼しい...」
 「じゅーん?悠太くんが来てるわよー?」
 階下から、お母さんの声がした。
 やべ。今日は悠太と約束をしてたんだった。
 「おーい、純!早くプール行こうぜー!うお!スイカ!?おばさん、いただきまーす!!」
 悠太の遠慮のないデカい声が響く。
 夢の中で聞いたインターホンは、悠太の仕業か。

 1階に降りると、ダイニングで悠太が1つ目の切れ端を食べ終え、2つ目に手を伸ばそうとしているところだった。
 「おせーぞ。お前の分のスイカも食うからな」
 お皿に黒いタネをペッペッと出しながら、悠太が言う。
 悠太とは、小3の時にクラスが一緒になって仲良くなった。運良く小5の現在までずっと同じクラスで、通学も週末もほとんど一緒だ。よく食べ、よく笑うヤツ。僕は、悠太といるとなんだか居心地が良かった。
 「ざけんな。俺も食べる!」
 僕は、自分用に分けられたスイカにかぶりついた。
 甘い。先ほどの不快感が嘘のように、脳がみるみるうちに満たされていく。スイカってこんなに美味かったっけ。
 「あらあら。2人とも沢山あるから焦らなくても大丈夫よ」
 お母さんは言いながら、麦茶を注いでくれる。やかんの中の氷がカラカラと鳴った。
 注ぎ終わると同時に、僕はごくごくと飲み干した。
 「っぷは!もう一杯!」
 追加で注いでもらった2杯目も一気に飲んだ。
 渇ききった全身に水分が補充され、癒されていくのが分かる。もう何年も、味わったことないような美味さだった。
 「はぁー!暑いの日の麦茶は、最高だなぁ...」
 「がははっ!なんだよそれ」
 悠太が豪快に笑う。
 お母さんも笑った。
 「あらまぁ。随分喉が渇いていたのねぇ」
 「あはは。あまりに美味しくてさぁ」
 そう口にしてみると、なんだか不思議と泣けてきた。
 「げ!純、お前泣いてんのか?大げさなヤツだなぁ」
 「べっ別に泣いてねーし!それより早くプール行こうぜ!」
 「大丈夫なの?」
 お母さんは、心配そうに覗き込んでくる。
 「大丈夫だって!ごちそうさま!」
 僕は顔を見られないように、リビングにあるプールバッグを取りに行った。
 変な夢を見たからだろうか。こんなことで泣くなんて。
 つけぱっなしのテレビでは、天気予報が流れている。お天気お姉さんが予報を読み上げる。
 「8月9日。今日は、朝から夏らしい快晴に恵まれ、最高気温更新となりました。これからお出かけされる方は、水分を十分摂り、楽しい一日にしてくださいね」
 夏休みの真ん中。僕と悠太は自転車に跨り、プールへと出かけた。



 丘の上の住宅地から、長い坂を下っていく。
 春には薄紅色で華やぐ桜並木も、今は青々としていて蝉たちが声高らかに歌っている。
 僕は、悠太の背中を追う。前傾姿勢になり、木漏れ日の葉の上を滑るように走った。
 坂はやがて線路沿いの道に突き当たる。そこで僕らは左折した。
 この道の先、最寄り駅をさらに越えた先に、目的の場所はある。
 ギラギラとした太陽に首筋が熱くなる。汗が止めどなく噴き出して、着替えて間もないTシャツがへばりついた。
 「あちぃー!じゅーん、大丈夫かー?」
 悠太が立ち漕ぎの姿勢になって、後ろを振り返る。悠太には、そういうところがあった。
 「大丈夫だー!悠太は大丈夫かー?」
 「もうダメだー!早くプール入らないと溶けるー!わはははっ!」
 「あははっ!はっはっ...!」

 市民プールは、家族連れや小中学生で溢れかえっていた。
 あちこちで光の粒が水面を跳ね回っては、キャー!とかアハハ!とか声が上がる。
 熱を帯びたプールサイドは、鉄板のようだった。
 「あっちっち!足つけてらんねぇ!」
 悠太は、流水プールへ弾むように走っていった。
 「あっ、俺も行く!」
 走らないで!監視員の制止する声を聞こえないふりして、僕らはプールに飛び込んだ。
 頭から爪先まで、火照った全身がビリビリと冷えていく。
 ゴーグルごしに見えた無数の泡を掻き分けるようにして、僕は勢いよく水面から顔を出した。
 「気持ちいいー!悠太、最高だなー!」
 「ああ、最高だなー!純!」
 悠太は、ゴーグルをしていても分かるくらい口角を上げて、ニッと笑った。
 僕らは、流れに身を任せ、トントンとスキップするように軽やかに進んでいった。
 毎年、僕と悠太の間では、この流水プールをグルグルと回りながら、ただ好きな話をするというのが恒例になっている。
 あのプラモが欲しいだとか、あのゲームの攻略法はこうだとか。僕と悠太の宝物の話だ。
 「しっかし、時のオカリナってやっばいよなぁ...。あれ、まじで迫力やばくね?」
 悠太は、背泳ぎの姿勢になって、太陽を見上げていた。
 悠太の言う時のオカリナとは、ニンテンドー64で初めて発売されたゼルダの伝説のタイトルだ。
 「あー、時のオカリナな。あれ、今でも人生ベスト5に入る名作だよ。神々のトライフォースも良いけど、俺はやっぱり時オカだなー」
 僕がそう言うと、悠太は急に身を起こしてこちらを向いた。
 「お前、やったことあんの!?」
 妙なことを言う。
 「え...。あるけど...」
 「まじかよ!発売前なのに!どうやって!?」
 「発売前?いやぁ、お父さんが買ってくれてさぁ...」
 「うおー、まじか!早く言えよ!お前のお父さん、スーパーの副店長だもんな!すげえ!」
 悠太は、勝手に納得して、輝く目をこちらに向けてくる。
 僕のお父さんは、確かに副店長だけど、特別な権限はないし、ニンテンドーの知り合いもいない。
 それにあのゲームは、悠太もクリア済みじゃなかったか。
 頭の中がぐちゃぐちゃして、混乱してきた。
 「聞かせてくれよ!どんなゲームなんだ!?」
 尚も熱いまなざしを送ってくる悠太に押し負けて、僕は時のオカリナの特徴やストーリーについて話した。
 「でさぁ、ガノンドロフを倒すんだけどー、その後...」
 「その後...どうなるんだ!?」
 悠太が僕の話に真剣に耳を傾け、なるほどー!とか、まじかぁ!とかオーバーなリアクションをしてくれるから、僕もつい饒舌になって話しすぎてしまった。
 こんなに沢山話したのは、ひどく久しぶりな気がした。
 「ダメだ!この先は言えない!」
 「えぇー!!なんでだよー!?」
 「秘密は、秘密だ!」
 僕は、クロールで逃げ出した。
 「おーい!じゅーん!待てよー、そりゃねーよぉー!ていうか、お前いつからクロールできるようになったんだ!?」
 悠太の声を振り切って、僕は思い切り泳いだ。
 身体中に力が漲って、何だってできそうな気がした。



 「ずっとこのままだったら、いいのになぁ」
 市民プールに隣接する運動公園の木陰に寝転んで、僕は大きなあくびをした。
 西の空へ伸びた送電鉄塔の先から、オレンジ色が水彩絵具みたいに滲んでいる。
 「そうだなぁ。夏休みもう半分終わりだもんな」
 隣から悠太の声がする。悠太も隣で寝転んでいるのだ。
 「違うよ。こうやってプールに来たり、プラモ組み立てたり、ゲームしたり、だよ」
 「ずっとこのままじゃないのか?」
 夕焼けの端にわずかに映る悠太がこちらを向く。僕は、その顔を見なかった。
 なぜだろう。僕は、ずっとこのままでいられないことを知っている。
 僕がなかなか返事をしないので、悠太が仕切り直すように言った。
 「ずっとこのままだろ。来年も、再来年も、そのまた先も。大人になってもさ」
 「......大人、か...」
 昼間見た夢が頭をよぎる。朝の満員電車、呪文みたいな企業理念、無機質な人間関係。フラッシュバックしたそれらに、心臓がドクンと鼓動した。
 「大丈夫か?純?」
 「......大人の俺はさ...つまんない奴になってるんだ...」
 「え?」
 「悠太のことなんか思い出さない。毎日、上司や先輩の顔色ばっか窺って。誰かに後ろ指さされるのが恐くて、周りが望む人間を演じてる。そういう周囲の期待を入れる空っぽの箱みたいな奴なんだよ」
 堰を切ったように、止めどなく様々な記憶が頭の中に流れ込んでくる。
 そうだ。俺は、この先起こることを知っている。悠太にしてしまったことを知っている。
 「純、何を言って...」
 「俺は、お前を見捨てたんだよ。悠太」
 さえぎるように言った。そう。俺は、お前が思うような奴じゃない。何もかも変わってしまったんだ。
 「もっと重要な何かが、もっと大切な誰かができた気がして、悠太が1人になるのを見て見ぬふりをしたんだ...」
 それは、ずっと輪郭を確かめずに頭の隅に追いやっていた事実だった。
 お互い黙ったままの時間が続いた。茜色に染まる雲がゆっくり形を変えていくのを見つめながら、俺はそれ以上何も言えずにいた。
 沈黙を終わらせたのは、悠太だった。
 「......そっかー。いやさ、今日お前ずっと変だったからさ。急に泣いたり、時オカやったことあったり、苦手なクロールできたりさ。おかしいと思ってたんだよなー。なーんだ、そういうことかよ。そっか、そっか。未来じゃ、そうなってんだな」
 咎めるでもなく、諭すでもなく、いつもと変わらない調子でそんなことを言う。いつもそうだった。悠太は、俺がどんな話をしても受け入れる。
 それから、ゆっくりと息を吸って、納得したように言った。
「それでもさ。お前は、俺の知ってる純だよ」
 草の匂いをまとった温かい風が吹いて、一匹の蝉が空高く飛んでいく。
 「......悠太。俺、ずっとお前に言いたかったんだ...!」
 ごめん、そう言って隣を向いた時、悠太の姿は、もうそこにはなかった。



 目の前に、椅子が横たわっている。見上げると、天井から解けたロープが垂れていた。
 俺の部屋だ。
 どうやら気を失って、のびていたらしい。
 身体中がズキズキと痛むが、意識はしっかりしているし、気分もそれほど悪くない。
 ドンドン!ドンドン!
 誰かがドアを叩く音がする。
 俺は、身体を引きずるようにして、ドアを開けた。
 「あ、良かった」
 「え、ああ...」
 「あ。あ!ごめんなさい。インターホンを押したら、おっきな音が中から聞こえて。何かあったんじゃないかって」
 女性の郵便配達員だ。
 「...えっと、配達ですか?」
 「え?あ、はい!これを届けに」
 彼女は、横に置いてあった大きなダンボールを差し出す。
 「宛名、間違いないですか?間違いなければ、」印鑑かサインを。俺は、彼女からペンを借りて、サインを書いた。
 「ご署名、ありがとうございます。......」
 しかし、彼女は立ち去ろうとしない。もじもじと何か言いたげにしている。
 彼女の視線は、部屋の中に注がれていた。
 「あ......。ありがとう。もう大丈夫」
 俺がそう言うと、彼女は安心したように笑って、そそくさと駆けて行った。

 ダンボールの中身は、スイカだった。
 母からの贈り物だ。
 食べてみると、夢で食べたスイカと同じ味がした。
 自然に涙が頬を伝う。
 悠太に笑われている気がした。
 俺は、倒れた椅子を立て、天井からロープを下ろした。



 ギラギラとした太陽に首筋が熱くなる。汗が止めどなく噴き出して、Tシャツがへばりついた。
 仕事を辞めた俺は、数年ぶりに帰郷していた。
 あの夢を見たからだろうか。何となく泳ぎたくなって、ついつい市営プールまで来てしまった。
 学生は、夏休み真っ只中だ。きっと小中学生や家族連れで賑わっているものと思ったが、やけに閑散としている。
 入り口まで行って、ようやくその理由が分かった。市営プールは、既に閉鎖されていたのだ。
 しばらくぼうっと突っ立っていると、散歩中の男性が老朽化で随分前に潰れたことを教えてくれた。
 フェンス越しに覗いた敷地内は、なるほど確かに何年も手入れされていないようだった。プールサイドの隙間からは青草が突き出し、悠太と泳いだ流水プールも薄汚れて雨水が溜まっていた。
 子供たちに混じって、大の大人独りで泳ぐところだったのだ。これで良かったのかもしれない。
 俺は、あてもなく運動公園の木陰に腰を下ろした。
 シャワシャワと蝉たちが声高らかに歌っている。
 少年たちが、走り回って遊んでいるのを眺めながら、あの夢のことをぼんやり考えた。
 まるで、小学5年の夏の時間が詰まったカプセルを開けたようだった。それは、自分の進んできた道を後悔しないために決して開けることがなかった。けれど、捨てきれずに胸の奥底にしまってあったカプセルだ。
 悠太がいて、自分がいる。自分が誰か分かっていて、何だってできそうな気がしていた。俺にもそんな時間があったことを思い出した。
 思えば、あれが2人で過ごした最後の夏休みだった。
 あの夏の後、まもなくして悠太は、父親の海外赴任でイギリスに行ってしまった。
 しばらくは手紙のやり取りをしていたが、それも次第に減っていった。
 彼がやっと帰ってきた時、俺たちはもう中学3年生だった。俺は、プラモも、ゲームもやらなくなり、みんなと同じ音楽を聞くことに夢中だった。
 海外生活とのギャップからか、悠太はみんなからどこか浮いていて、1人でいることが多かった。
 俺はそんな悠太を見て見ぬふりをして、新しい友達を優先したのだ。
 もっと大事なものができたと思っていた。自分だけが輪の中にいられることに安心していた。
 しかしその輪も、1人また1人と抜けて、やがて消え失せた。それからも、同じようにして新しい輪ができては消え、結局誰も残らなかった。
 この町に帰ってから、悠太の家を訪ねてみたけれど、もう別の家族が住んでいた。引っ越し先は、母も知らなかった。
 もう会えないのだと思った。いや、会う資格など俺にはないんだ。
 地べたに寝転んだ俺は、思わず深いため息をついた。目の前に広がる空が、あの夏の日とあまりに同じに見えたから。

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