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【最近のマイアンチ】名刺交換
私はフリーランスとして仕事をしている。以前はWEBコンサルの会社とITコンテンツ制作の会社で働いていた。現在の仕事について説明するときには、「一つの技術に特化せず、プロトタイプの開発を担うために汎用的な技術を駆使するITクリエイター」と名乗っている。しかし、それだけでは大抵相手に理解してもらえず、首を傾げられることが多い。ただ、それについて特に悪いとは思わないし、むしろこれまでの活動を伝える良い機会だと感じている。この記事では、自己紹介の場などで私がたびたび感じる違和感や不信感について綴ってみる。なお、本記事の目的は、私が外部との関わり合いの中で感じた違和感を共有することであり、何かを推奨する意図はない。
名刺交換の列
社会人として「初めまして」で行われる行為といえば、やはり名刺交換だろう。ただ、私は名刺交換の際に会話を広げるのが苦手だと感じている。自己紹介としてやってきたことや相手の活動内容を聞いても、会話がうまく噛み合わないことが8割程度はあるように思う。まれに興味を持って深く話を聞いてくれる方や、こちらから質問を掘り下げられることもあるが、それでも展示会のように濃い話にはならず、表面的な会話に終始することが多い。
さらに、名刺を渡してもQRコードを読み取ってポートフォリオサイトを見てもらえるケースはほとんどない。QRコードを読み取る手間や相手の興味の有無もあるだろうが、名刺交換そのものが不完全な行為であるようにも感じる。また、相手の目的がこちらとは異なることも多い。その顕著な例が、イベントのメイン講師の前にできる名刺交換の列だ。おそらく、会社としてイベントに参加した以上、メイン講師との名刺交換やつながりを得ることが仕事になっているのだろう。本来ならイベントの内容を吸収して自分の業務に新しい風を取り入れるべきなのに、社交場としての価値が強くなりすぎている気がする。
確かに、人とのつながりはとても貴重で価値のあるものだ。しかし、年配の男性が渋味のあるスーツを着こなしながら、ディズニーランドの列に並ぶかのように名刺交換の列に加わる様子には、どうにもダサさを感じる。何十年と仕事を続けても、名刺ケースを手にワクワクしながら列に並ぶ必要があるのだろうか。それは私には到底憧れの姿とは言えない。少なくとも私は、メイン講師と話したい場合でも、この列には並びたくないし、名刺交換や誰かの元に飛び込んでいくようなこともしたくない。この列を作る側に立ちたいと思い、日々邁進している。
何をされていらっしゃる会社なんですか?
名刺交換の場でよく聞かれるのが、「何をされていらっしゃる会社なんですか?」という質問だ。これは、なんともギャンブル性のある問いだと感じる。名刺交換を行う社会人の多くは、新しい仕事を得たり、外注先を探したりといった現実的な目的を持っているだろう。だからこそ、相手が自分の業種とは全く異なる分野だと分かると、なんとなく会話を切り上げて去っていく。このような接し方は、私はあまり好まない。
私の場合、ITクリエイターと名乗り、過去の実績を説明しつつ「こういうことをしています」と話すと、「つまり業務システムを作っているんですか?」といった的外れな質問をされることがある。説明する側としても反省すべき点はあるが、わからないことを素直に「わからない」と言える勇気は非常に大切だと思う。説明を理解していないだけでなく、理解しようともしない態度にはいつも悩まされる。
最近では、自分と相容れないと感じた相手には「別業種」としてフィルタリングし、新しい発見があれば聞き、なければその場を離れるようにしている。社会人としての会話は、友人や会社内での会話とは異なるベクトルを持っており、まだ私には掴みきれていないのだろう。いつかの未来にくるのかわからない、「何をされていらっしゃる会社なんですか?」に対して的確に答えられるようになる瞬間が怖くもある。それは、ITクリエイターやプロトタイプ開発といった汎用的なものづくりが狭まり、何かの箱に閉じ込められてしまうような感覚があるからだ。
とは言え、
これまで名刺交換のネガティブな面を述べてきたが、それでも名刺は必ず持つべきだと考えている。というのも、8割の無駄な会話の中にも、残りの2割には非常に貴重な出会いや会話があるからだ。理解してくれる人、理解しようとしてくれる人との話は、聞き手としても楽しく、有益な時間となる。だからこそ、そんな2割の共感者との出会いはかけがえのないものだ。
学生には、必ず名刺を作るように勧めている。学生ブランドによって、名刺を持っているだけで目を惹くからだ。社会人になると名刺を持っていない人はほとんどいないが、学生のうちしか目立てない行為というのも存在する。社会人の枠に入ったとき、どのように活動し、何を作り、どう伝えるのかを考えることは重要だ。名刺交換学は、奥深い世界だと感じている。