呪いをもたらす伝説の美女たち
明日の弊紙に加計呂麻島の「ムチャカナ公園」に関する記事が掲載されるにあたり、記事を書いた先輩記者から面白い話を聞いた。
奄美群島に「ムチャカナ伝説」というものが伝わっている。これは私も子供のころから聞き知っているもので、私の記憶によればその内容は以下のようなものである。
奄美大島の南、加計呂麻島のI集落に、ウラトミという名の美女がいた。時は江戸時代、薩摩藩制下において奄美群島は厳しい砂糖年貢にあえいでいた。
ウラトミの名声は高まり、薩摩藩より派遣された代官からアンゴ(現地妻。西郷隆盛のアンゴ・愛加那などが有名)にと望まれる。しかしウラトミはこれを拒否。怒った代官はI集落への砂糖年貢を重くした。
追い詰められた村人たちはウラトミの死を望み、彼女を小舟に乗せて沖へと流した。小舟は奇跡的に北部の喜界島へと流れつき、命を拾ったウラトミはそこで夫を得て一人娘をもうける。
娘・ムチャカナは母のウラトミ以上の美貌であった。彼女が年頃になったとき、美貌をねたんだ喜界島の娘たちは「海藻を採りにいこう」と偽ってムチャカナを連れ出し、崖から突き落として殺害した。これを知ったウラトミもまた自殺したという。
以上が「ムチャカナ伝説」の概略である。舞台となった加計呂麻・喜界両島には母子を弔う祠が建てられ、いずれも「ムチャカナ公園」と称している。
先輩記者から聞いた話はここからで、母のウラトミの出身地・加計呂麻島のI集落では昭和40年代ごろまでこの話を口にしてはならないとされていたという。ウラトミを追放した村人らの子孫である彼らは、ウラトミの名を口にすれば呪われると信じていたのだという。「今はそんなことないけど、俺の若いころは禁忌だったらしい」と先輩記者は笑った。
この伝説は「むちゃ加那節」という島唄にもなっており、これを歌う唄者はムチャカナ公園の祠に詣でるとのこと。
2ちゃんねるのコピペ集「洒落怖」にでも出てきそうな禁忌が、日本には確かに存在していたのである。
ちなみに喜界島の方のムチャカナ公園は、「水曜どうでしょう」キャストらが喜界島一周企画で野宿した場所として、どうでしょうファンの間で知られている。
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