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ウイグル人ラッパーをスラムに誘おうとしたら強制収容所に入っていた話

 ポエトリーリーディングを齧っている。

今年、ポエトリースラムジャパンの後継大会が誕生し、出場を決意したところだ。(https://www.cinra.net/news/20201006-kotobaslamjapan)

 テュルク系言語オタクなのもあり、トルコ語ラップなども好きなのだが、最近ウイグル語ラップにはまり、紹介用のアカウント(ウイグルサブカルチャー @b2ToRdlQH7cj21Z)を運用するようになった。

 毎日何かしらのウイグル語コンテンツを紹介するため、YouTubeで音源を漁っていたところ、運命的な曲に行き当たった。

 ウイグル人ラッパーJazaによるスポークンワードのMV“Kéchidiki Oylar”(遅い月)である。

 まずはこの音源を聞いてみて欲しい。

 彼のリーディングは私の耳をとらえた。ほかにも良いラップはたくさんあったが、スポークンワードという点も私の嗜好にクリティカルヒットし、何度も聞いた。何度聞いてもいいリーディングだった。一言も分からないけれど感動した。地の果てで魂の双子を見つけたような。

 聞いているうちに私は決めた。何としてもこいつに連絡をとろう。こいつを誘って今年のスラムの東京大会に一緒に出場しようと。ミュージカル「ハミルトン」の1フレーズが閃光のように脳裏を走った。
Well, the word got around, they said, “This kid is insane, man”
Took up a collection just to send him to the mainland
“Get your education, don’t forget from whence you came, and
The world's gonna know your name. What’s your name, man?”

世界は彼の名前を知るべきなのだ。

 動画のコメント欄から、MVを編集したQuzghun氏のインスタグラムに行き着き、メッセージを送った。「Jazaのリーディングを聞いた、一言も分からないけど感動した、彼は天才だ。日本に紹介したい」と。

 氏は快く返事をくれ、歌詞を送ってくれるという。礼を述べたうえで頼んだ。「彼と直接連絡をとりたい。彼はSNSをやっていないか?」私はワクワクしながら返事を待った。頭の中ではすでに、Jazaに送るメッセージの文面を考えていた。「心を揺さぶられた。君は天才だ。絶対にスラムに出るべきだ。オンラインで出られるんだから簡単さ、東京で、パリの世界大会で君の言葉を世界中に轟かせよう」。

Quzghun氏の返事が冒頭にあげたスクリーンショットである。

「彼とは話せない」「彼はウイグル自治区の制限区域にいる」「検索してみて、どういうことなのかわかるはずだ」「ウイグルであるということが」。

 制限区域とは?

私は検索した、そしてこの記事を見つけた。

 読んでいくうちに血の気が引いていった。いわく、制限区域は家族と居住できるが、実態は中国共産党の再教育キャンプと変わらない。中では政治教化プログラム、「裁判」、北京語の強要が行われ、特別な許可なしでは出入りもできない。

 彼がSNSをやっているかなんて、なんと愚かな質問をしたのだろう。今、この地球上に、これほど簡単に人と人が繋がれる時代に、繋がれない場所があるなんて。

 私はショックを受けた。ウイグルに関する情報が日本にいかに入ってきていないかを感じた。彼をスラムに誘おうなんて、なんて自分は簡単に考えていたのだろう。

 でも私はすでに決めてしまっていた。彼をスラムに誘う。そのためには気軽にフォローしてDMを送る以上の課題があることが分かったけれど、決断を変えるつもりはない。今はその方法を考えている。

 Quzghun氏は動画の歌詞を提供してくれた。「君の気持ちは本物だ、私は君の言葉を聞いた。君のために書いたよ」。動画を確認してわざわざ歌詞を書きとってくれたようだ。グーグル翻訳でも大まかな意味をつかむことができた。後日、氏の許可を得て掲載したい。

 ここまで読んでくれた皆様にお願いしたいことがある。私に協力していただきたい。私は以下の2つの課題を抱えている。

・提供されたウイグル語の歌詞を日本語に翻訳すること

・Jazaを、あるいは彼の詩をスラムに出すこと。

どうか、動画を開いて彼の詩に耳を傾けてほしい。良いと感じたら拡散してほしい。そして、上記の課題を解決する方法を私と一緒に考えていただきたい。

どうかよろしくお願い申し上げます。



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