入江亜季『旅』最新刊がでます
今週末、2022年3月19日に、入江亜季さんの最新作『旅』を発売いたします。B6判とワイド版、2種類同時に発売します! 今回もオススメはワイド版です。
『北北西に曇と往け』や『乱と灰色の世界』を連載している合間に、あちこちで描いてきた短編作品を1冊に集めました。漫画部分が200ページ、そして巻末にはおまけでモノクロイラストを40ページ収録しています。「旅こそが最大の娯楽」「旅にはすべてが詰まってる」と語る入江さんの作品群を集めた本は、タイトルを潔く『旅』、とつけることになりました! 全方位で非常に完成度の高い1冊となっています。かっこいい本ですね。
《カバーまわりについて》
カバー用紙は『北北西に曇と往け』と同じ、サガンGA(プラチナホワイト)。サガンは、砂岩のことで、ざらざらとした砂岩のような手触りの紙です。5色印刷にニスで防汚加工、メタリック黒箔の箔押し装です。もともと書棚にある『北北西』の既刊の隣りに並ぶことを考えて、きっちり仕様を揃えるところから計画しました。きれいに本棚に並ぶと思います。
※ ロゴや罫などを箔押し
《収録作品について》
▽その1 春駒
ハルタ誌の6号に掲載された読切作品です。『群青学舎』シリーズ以降、久しぶりに掲載した短編読切作品。今回、コミックスに収録するにあたって、細かなところに修正が少しずつ加わっています。
▽その2 松の木は時折目覚める
非売品小冊子、スレンダーフェローズに掲載された作品。迷子のツキコを見守る松の木、という漫画で、そういえば群青学舎4巻にも木が人間を見守る漫画がありましたね。
▽その3 旅の王子
逃げる殿下と追う臣下。これはコスチュームフェローズ2011に収録された短編です。『旅』に収録されたショート読切の多くは、非売品の小冊子に収録されたもので、また一部はかつて製作された小冊子版「青騎士」に再録もされていました。
▽その4 半年間の休暇
SwimsuitsFellows!2009掲載の作品。船が難破して遭難した水着女性の顛末を描くもの。ゲームの「Raft」みたいな?
▽その5 水中国の娘
タイトルの読みは「すいちゅう・こく」もしくは「みず・ちゅうごく」? おそらく、どちらもかかっている内容です。チャイナフェローズ小冊子掲載。
▽その6 奥さまの起こし方
メイドさんと主人の寝起きショート・ショート。そうです、メイドフェローズ掲載です。さて、このあたりで収録作品の約半分となりました。
・ ワイド版と通常版、なにが違うの?
収録内容はどちらもまったく同じです。つけくわえるなら使っている紙もまったく同じ。違いは、上の写真のとおりで、絵の迫力が違います。
↑ B6判 版面が小さい、入江さんが描いた原稿用紙に対して59パーセント縮小したものがB6判です。携帯や保管に場所を取らず、便利。
↑ ワイド版 縮小率は78パーセント。ペンタッチが紙の上から生き生きと伝わってきます。絵が好きな人にオススメ。
やはり漫画の魅力の大きなところに「絵の良さ」がありますから、青騎士編集部としてはそれを、なるべく原稿に近いところで再現して、楽しんでもらいたい。とくに青騎士のような隔月刊行の漫画誌は、コミックスが1年に3冊も4冊も出て、さきの展開をぐいぐいと読ませるタイプの作品は少なく、家で落ち着いてじっくり、1ページ1ページを集中して読んだり、たまに本棚から取り出して再読したり、といった楽しませ方をする作品が多いものですから。新しい漫画誌を作るにあたって、新しい判型の商売に挑戦してみよう、と思い、智田直さんの『イーデン教授の優雅な休日』以降、ワイド版の発売を続けているのでした。
▽その7 会長の眼鏡伝説
生徒会長の眼鏡が、いつも見つからなくなる、という話。眼鏡フェローズという小冊子に載ったコメディー作品です。
▽その8 えるのお留守番
けっこう珍しいロボット漫画。入江亜季作品としては異色……? ロボットフェローズという、ロボットをテーマにした作品を集めた小冊子に収録されました。
▽その9 家族合奏
ミュージックフェローズ掲載作品です。そもそも「Fellows!(フェローズ)」という英語には仲間、同志、同胞という意味があり、2006年に新しい漫画を始めるにあたって、ゴリゴリの漫画を作る仲間を集めよう、作者も読者も、という思いから「コミックビームFellows!」と名づけた雑誌でした。
その10 砂漠の田崎くん
砂漠、海、荒野などを舞台にすることが多い入江作品の、砂漠漫画。どれも死が身近に存在している場所です。掲載はなんと、まんぷくフェローズという小冊子。おっと、これ以上はネタバレになってしまうので本編をお楽しみください。
その11 多朗と多由良
少年・多朗と、大型犬・多由良の旅を描いたシリーズ。ハルタ誌には第一号からずっとオビがついていますが、途中で、このオビの裏にも漫画を刷ろうぜ、ということになり、入江さんも1年間だけオビ裏で連載をしました。それが「多朗と多由良」です。オビ裏に載った9本に加え、U12こどもフェローズに掲載された番外編も収録。略称は「たろたゆ」、入江さん自身は「こういう漫画なら死ぬまでいつまでも描き続けられる」とか言っていました。期待しましょう。
その12 乱と灰色の世界 番外編
『乱と灰色の世界』の漫画のなかで、唯一、単行本未収録なのが、この「着せ替え乱ちゃん」。これは、『乙嫁語り&乱と灰色の世界』という、それぞれのコミックスが発売されるまえに一瞬だけ出した、ムック本的なやつに描き下ろされたショート作品です。たいへんになつかしい。
その13 トキの旅
現在刊行中の青騎士5号&6号に掲載された作品です。単行本カバーにも登場、前後編合計64ページ、そして収録位置も巻末。『旅』を代表する一篇となっています。
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入江亜季さんの短編集は『コダマの谷』の初版が2006年ですので、じつに12年ぶりの製作となります。内容は十二分に充実、ぜひとも書店店頭でお手に取ってみてください。