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田水張る 彼方にのぞむ 深緑か

いきなり俳句を詠んでみました、青木です。

都会に越してから4度目の初夏を迎えております。
緊急事態宣言など不測の事態の中皆様同様不慣れな環境に戸惑っていましたが、このほど徐々に普段の暮らしを取り戻しつつあります。

良く晴れた午後、洗濯物を取り入れての独り言です。

うつろう季節を感じられる幸せ

山深い私の地元はとても気候が穏やかで過ごしやすい地域です。
ただし唯一、湿気だけは生活のあだとなります。
朝露にぬれた茶畑はとても心地よい空気を作ってくれますが、いつでも空気に湿度をたたえている証拠です。
例えば田植え前の田んぼだって黒々とした土がしっとりとその時を待っており、風で埃が舞うということはこの時期あまりないと記憶します。

なのでこの都会の乾いた初夏の空気に、私は戸惑いを隠せないです。

けれど私が選んだ人と過ごすと決めた土地。
住みやすく便利で不自由のない生活に私は満足しています。

ひもじい思いをしていたあの実家での生活とは当然比べ物にならない今の豊な生活が大好きです。

空と大地と生き物の息吹

私の住む家の立地は独特です。
目の前の道路は大通りのう回路として車やバスがひっきりなしに通ります。
しかし反対側には小さな小川が流れており、それに沿う形で田んぼが広がっています。
形状を見るに、宅地に適さない土地だった為そのまま田んぼを残したのだろうと推測します。
その田んぼがわたしと自然をつないでくれる大切な役割を果たしてくれるのです。

今朝、所用で起きた朝6時。窓の外を見てみると麦わら帽子をかぶった男性が田んぼの隅で作業していました。
昨日までその田んぼは空気の乾燥を表現するように黄色く乾いて砂埃が舞っていましたが、今は男性が居るあたりから扇状に黒く水分を含んだ色に変化しつつありました。

田植えの準備に入ったのです。

「ギャー ギャー」

甲高く響く生き物の気配を察してそちらを見やると、大きなアオサギが立っていました。
ちょうど水が入ったゾーンにすっくと立ち

「うむ、順調でなにより」

とでも言いたげです。
野鳥ウォッチ界隈で「先輩」と呼ばれるアオサギの風格ある姿に思わず笑みがこぼれました。

あぁ、季節が変わっていく。
時が進んでいく。
今日も気持ちの良い生活ができている。

生きている実感といえば大げさかしら。
この都会にあって自然を感じ、その移ろいを実感できているこの感情を幸せだと感じられる今の自分とその環境に感謝しながら、食パンをほおばる朝でした。

夕刻にさしかかる今、3分の2ほどに水が含まれた田んぼに目をやりつつ夕飯の準備でもしようかな。

深い緑の中にいたあの頃の私。
捨ててきた過去ではなく、確かに通った私の履歴。
あの頃もよかった…と思えないのが逆に笑えるけれど、自分のルーツがどこにあるのかを確かに感じるそんな一日でした。

田水張る 彼方にのぞむ 深緑か 

青木 公代

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