苦手なランニングを始めたら視界が広がった話
"元気がないから元気ぶったことするんだよ。病んだ都会人がジョギングするんだよ"
2013年に放送されていた「最高の離婚」というドラマの中で、瑛太さん演じる主人公の光生が呟いた言葉です。
私もランニングやジョギングをするという行為を当時、理解できず、共感したことをよく記憶しています。
マラソン大会なんて、5,000円や10,000円の大金を払って、汗で身体中をベトベトにしながらゴールを目指す、ただの疲れる罰ゲームくらいにしか思っていませんでした。
あれから10年弱、私は今、日常的に走っています。病んだ都会人になってしまったのか…。当時の私がこのことを知ったら少し心配をするかもしれません。
きっかけは、コロナ禍。「密を避ける」とは言いつつも、出退勤時は満員電車。自粛による運動不足。そして、イベントや飲み会がなくなって有り余る体力…。家に篭りがちで、スナック菓子に手が伸びることが多くなり、増えていく脂肪…。
特にコロナ前も充実した日々を送っていた訳ではないものの、行動を制限をされると生きづらさを強く感じるもので。
やり場のない思いと体力を、走ることで解消しようと考え、職場から自宅までの10kmを週一回の頻度で走って帰ることから始めました。
いつもと違うことをすると新鮮で、街の見え方も変わってきます。初めは様々なコース試してみたので失敗もありました。銀座のホステスさんの出勤する横を颯爽と駆け抜けることとなったり、怪しげな路地に迷い込んだり…
ただ、自分の足で街を踏み締めると、長く東京に住んでいながら、自分が、気にも留めなかった(留めようとしなかった)街が見えてきました。
「この角度からみえる東京タワーはとても綺麗だな」
「こんなところに隠れ家的な坦々麺のお店が!」
「海のにおいがする」
ありきたりなことですが、自分の中で新たな発見があり、視界が広がっていきます。
満員電車の中でいかにして、楽な体勢でスマホをいじりながら、帰宅するか…というミッションを成功させるために、戦略を練りながら、電車に乗り込むことよりも、ずっとずっと健康的で、インプットの多い帰宅方法が見つかりました。
楽しいことがあると走る頻度もあがっていくもので、週一回だったランニングも徐々に増えていきます。そうすると余分についた脂肪も減っていき、走るスピードも走れる距離も伸びていきます。
そうすると、成果を試したくなります。
練習も継続的に出来たことで、手応えを得た今年の1月、近所でおこなわれた10kmを走る小さな大会に申し込み、3位に入ることができました。
参加人数も多くなくて、一般的にみたら平凡なタイムかもしれません。3位入賞は運が良かったと思います。それでも、運動神経が悪くて、スポーツにおいて、個人で表彰されたことなんか人生で一度たりとなかった私にとっては、本当に嬉しい体験でした。
「元気になった」
これが私のランニングを始めての成果だと思っています。新たな街を発見したり、大会で結果が出たりもその理由に含まれますが、1番大きな理由は、走ると充実感と疲れで、無駄なことを考えずに、早く深い眠りにつけることだと思います。早く寝ると翌朝はスッキリと目覚め、仕事中の頭も冴えます。夜遅くまで意味もなくスマホを眺め、翌朝は眠い目を擦りながら、満員電車に揺られ仕事に向かう…これまでの私のリズムは一変しました。
自分の生活に彩りを与えてくれているコロナ禍で見つけた新たな活力は、紛れもなく、今まで敬遠していた「走ること」でした。
私は思い込みが激しい方で、考え方も新しい事やものに手を出すのは、すごく慎重になるタイプでした。
でも、保守的で思い込みが激しい私だからこそ、今後は、苦手なことや新しい事にチャレンジすると視界が広がってくると「思い込んで」挑戦してみようと思います。