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「太宰治へ」連載小説(二)

彼のノート(小説)

はしがき

私がこの小説を書くにおいて、これは遺書とも言えるでしょう。あの人と同じ死に方で地獄でもがき苦しみたいと思います。親不孝者ですみません。死となりて虚無となる。私は今から、塵にもならないのです。



 附和雷同、と書いて、まるまるとよぶ。

 兵庫県の塩田温泉に行った時のことです。ある一群の暴走族とみえるものに喧嘩を売られました。そこにはたしか、自分の友人と恋人とで三人でいた気がします。塩田温泉に行ったと言っても、そこらの近くを歩いていただけで、そのものらに煙草をなげられ、自分自身、調子に乗っていたせいか、おい!と一言、かぼそく叫ぶと、ききっと止まってあとはもう大変。
ぼこぼこに顔がなくなるのではないかと思うほど、殴られました。
友人は一目散に逃げてしまって、唯一信頼していた恋人も、ある意味でもこの意味でも逃げてしまいました。
その時から人を信用することをやめました。暴走族に関しても、友人に関しても、恋人に関しても、私にはひとつの猿芸に近い様子で接していたようです。

私には調子にのりやすいという、たいへん臆病な性格をもっておりました。流されやすい若葉ともいえましょうか。とにかくも、それはまた自分の人生を大きく左右するものでもありました。

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