いつか、きみと・3-1
彼からのメモを届けてくれて、彼の家に案内してくれた男の子は、名前は【レン】っていうらしい。
レンと一緒に【配達】を始めて、3日目。
…働くことがこんなに大変だとは知らなかった。
仕事といえば、パソコンを使うことがほとんどだから、身体を動かすときはあくまでも【趣味】だったり【運動のため】だったり、基本的には【楽しいとき】だと思っていた。
配達の仕事は、自分が疲れているとか休みたいとかいう事情はお構いなしだけど、相手の都合は考えなきゃいけないらしい。
受け取った証拠として【サイン】っていうのをもらわなきゃならないから、たとえば朝早くとか夜遅くは【迷惑】になるから配達できないらしい…。
じゃあ、昼間ならいいのかっていうと、出かけていたり、仕事で手が離せなかったりすると、またもう一度配達し直さなきゃならない。
でも、配達し直すときはいそがなきゃいけない、なんて。
タワーに住んでいれば、配送は自動で届くし受け取ったかどうかもスキャンされて通信で管理されているから、時間は関係ないし、【サイン】も必要ない。
「レン、おなか減ったよ~」
「もう1軒まわったら、少し休憩しようか」
「わーい!」
わたしよりも年齢は下だと思うけれど、配達にも慣れていてかなりしっかりしている。
…だけど、レンにも【秘密】がある。
レンは、記憶があいまいらしい。
どこに住んでいるとか、家族のこととか、忘れてしまったのか覚えていないらしい。
今は彼の家で寝泊りをしている。
わからないことを詮索しても、わからないのだし、聞かれるレンもきっとつらいと思うから、もう聞かないことにした。
オーダーしておいて、今朝届いていたサンドイッチと紅茶をずっとバッグに入れていた。
【あの公園】のベンチで、レンと並んで座ってサンドイッチと紅茶を渡す。
「いつもありがとう」
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