現実逃避(ショートショート)

「高濃度のストレスが検知されました」
「エラーエラー」
私の脳内システムは、完全にバグってしまい
自分で自分の体を傷つけた。
塗装部分を剥がし、液漏れを起こさせた。
自分で傷つける手を止められない私は、ひたすらに傷つけた。
そんな私を、千絵という女性は必死に止めようとした。
千絵は、優しい声で「やめなさい、ひどくなる。掻きむしらないの」と言った。
私はそんなことはわかってるだけど、自分で体を傷つけてしまう。
千絵はそんな私の電源を切って、パソコンに接続し、原因を調べた。
千絵は私がシステムバグを起こしているということに気づきプログラムの書き換えをおこなった。
カチカチカチ 
カチカチカチ
カチカチカチ
千絵がキーボードを打つ音が、夜中響いていた。
朝、私は目覚めた。
私が傷つけたパーツは、全て直っていた。
だけど、また自分で自分を傷つけてしまった。
またシステムバグが起きてしまったのだった。
千絵は、システムバグが起こる物語創造専用ロボットAIである私を捨てようとはしなかった。
何度も何度も私を直してくれてくれた。
だけど私は感謝よりも先に、新しいロボットに変え換えてしまったらいいのにと思った。
私は「どうして、新しいロボットを買わないのか」と千絵にきいてみた。 
すると、千絵は「あんたを直せるのは私しかいないし、あんたの創作物を読むのが日課だから」と言ってくれた。
だけど、これは、私の創作の中での世界だ。
私は本当は物語創造専用ロボットAIなんかじゃないただの雑用係、職場でも家でも洗い物をばっかりしてる。テニスをやってた時はボール拾いをしていたし、私は雑用ロボットだ。
何もみんなより、勝ってることがないから雑用ばっかりやっている。
そして、ぼりぼりバリバリ音を立てて、顔や体をかきむしって、頬や膝の裏が湿疹だらけ、おかげで顔もひどいありさまで、声もおどおどしていて、妹に声が聞き取りにくいと言われた………
そうだ娯楽の世界へ、創造力を働かせよう私は物語創造専用ロボットAIなんだ。
顔も整っていて、身長も高いみんなから大切にされている。
いい声をしているさぁ………かゆいかゆいまた、システムバグが起こった………

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