想像力増殖装置(ショートショート)

学校の朝のホームルームの時間が始まった。
私にとって、この学校のホールルームの時間にするある習慣行事が地獄なのである。
その行事は、一分間なんでも、いいから、喋る(スピーチ)するというものだ。
先生「今日は、葵拓真くんが一分間スピーチする日ですね。拓真くん教卓の前に来てくれる」
私は、教卓の前に、立たされた。周囲からの、冷たい視線が、ささる。
葵拓真「えっーと、僕が放課後にしていることは…
宿題をやることとテレビを見ることと……お風呂に入ることです……」
先生「もう、終わりなの」
周囲「えっ…まだ全然一分も経ってないよ」
先生「そうねぇまだ三十秒しか喋ってないよ」
私は、この場から、逃げ出したくなった。
一分間スピーチがあると分かっていたのに、対策してこなかったんだろうと後悔した。
次は、紙に喋ることをかいて、挑もうと思って、ノートに、書いてみた。
ノートに、私は、この前の土日休みに、友達の家に、DSを持っていきました。
この日は、マリオカートとポケモンのパールで、遊びました。
途中、友達のお母さんが、手作りのケーキを持ってきたので、それを食べました。
とても美味しかったので、「このケーキ美味しなぁ、すごいなお前の母ちゃんは」と友達にむかって言ったら、友達はとっても照れくさそうにしていました。と書いて、次の一分間スピーチに備えました。
そして、一周間後私が一分間スピーチをする日が、やってきました。
私は、喋ることを書いた紙をもって、教卓の前に立ちました。
「私はこの前の土日休みに…」出だしは完璧でしたが、読んでいくうちになんだが、なんで、こんな話をしなくちゃならない馬鹿馬鹿しい。少し恥ずかしいし、読みたくないと思って、途中で詰まってしまって、先を読めなくなってしまいました。
一分間スピーチを終えた後、私はなんで読めなかったんだろうと、自問自答しました。
答えは、周囲の目線と自分が無意識に読みたくないと、おもったからだと思いました。
やっぱり事実をありのままに、大勢の人の前で、喋るのは、恥ずかしいなぁ、なんか恥ずかしくならないネタはないものかと、思って街をうろうろした。
何か、面白い話を思いつくヒントでも転がって、いないかなと思って、うろうろしていた。
私は、ぼろい、街の電気屋さんの前に、立ち止まってしまった。
何か惹かれるものがあったのかもしれない。
とりあえず中に入ってみた。
中に入ると、すこしぽっちゃりした男性が、「何をお探しですか。」と言って聞いた。
私は、ダメ元で、「面白い話を思いつくことのできる電化製品とかないですよね」と聞いてみた。
男は「ありますよ。想像力増殖装置という電化製品なんですが、うちでしか扱っていない品でして、漫画家や小説家がたまに買いたいと、相談しにくるんですよ。今在庫を調べてくるので、しばらくお待ちください」と言って奥の方へいった。
二十分後男は、重そうな段ボールを持ちながらやってきた。
男「在庫を確認したところありました。買いますか。それともお試し期間を使いますか。」
私は金がなかったので、お試し期間をつかうことにした。
あれから、あの電化製品をつけて想像力を身につけたが、一分間スピーチをやる日までに、お試し期間が切れてしまった。
思いついていた。想像していた世界はもう……

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