うごく家(ショートショート)

からくりのような手動式のギミックで、プロペラがまわり空を飛ぶことのできる古めかしい家があった。
その家は、丸型の輪郭に、切れ長の目、のっぺりとした鼻、平たい唇を持つ、髪の毛がレインボー色の長身の爺さんが、住んでいる家だ。
その爺さんは、橋田という。
橋田は、からくり第一中学校の卒業作品で、この家を作り、それからというもの、この家を愛用している。
橋田は「動かないより、うごく方が好きで、よく作るんです」と呟く
これは、お決まりの、口癖のようなもので、1時間に一回ぐらいは、つぶやいている。
そんな爺さんが、僕は好きだ。
僕は、橋田爺ちゃんの孫で、よく遊びにきている。
爺さんは、酒癖が悪いから、母親にはよく行かないようにって言われているんだけど、学校終わりによく寄り道していくんだ。
だって、この家は空が飛べて、いろんなところに、パスポート無しで行くことができるんだもん、
行かない方が、絶対損だね。
そのことを母さんに言ったら、危ないからダメだと言うんだ。
だけど爺ちゃんは、僕と一緒に、空飛ぶ家でいろんなところに旅行しにいっている。
この前は、東京、その次は福島、大阪、高知、鹿児島に行った。
鹿児島から帰って来て、2週間後のホームルームの時間にやった1分間のスピーチでこのことを話したら、友達が一気に、10人も増えた。
10人とも、僕が嘘をついてるって、疑っていたけど、実物を見せた途端、何も言え無くなっていた。
この時初めて、秘密道具を自慢するのび太くんの気持ちがわかったような気がしたんだ。
「どうだい、話は本当だっただろ、」とクラスメイトに行った後、「爺ちゃん動かしてよ同級生にも、この家の素晴らしさを見せてやりたいんだ」と爺ちゃんに、こう言って、説得した。
10分後、説得が上手いこと言ったのか、爺ちゃんは家を動かして、空を飛ばせた。


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