イザナミ(ショートショート)

イザナミ出版は、noteというアプリとコラボして、作品を募集することにした。
選ばれた人は、週刊少年イザナミの漫画家の人を紹介され原作者として、活躍することを約束されるという。
直訳すると、こういうことが、書かれている記事を峯岸大輝は、読みながら「面白そう、応募してみよう」と呟いた。
週刊少年イザナミといえば、誰もが思い浮かぶ有名作家を持つ、有名漫画雑誌だ。
大輝にとってこれは、つまらない人生からの脱却も視野に入れていた。
さそっくはっりきって、執筆し、応募した。
それから、数ヶ月後、応募の結果が分かった。
私の作品は、選ばれていなかったのだが、ツイッターのダイレクトメッセージに、返事があった。
わたくしは、イザナミ出版の編集長福腹田と申します。
週刊少年イザナミの漫画原作応募に、投稿していただき誠にありがとうございます。
応募していただいた作品はどれも、ずぼらしい作品でした。
編集部一同、心より感謝もうしあげます。
今回はご縁がありませんでしたが……
というメッセージの冒頭を読んだ大輝は、よくある不合格通知だとおもっていたら、その続きが予想外だった。
今回はご縁がありませんでしたが、今回は特別に、合宿の参加権を設けており、貴殿の才能は素晴らしく埋もれさせるわけにはいかないと考えました。
合宿の参加を希望する方は、下記の電話番号にかけてください。
あなたの幸運を編集部一同祈っています。
最後まで読み終えた大輝は、喜びの雄叫びをあげた。
「うぉっー、やっぱり週刊少年イザナミは、最高っー」
さっそく、電話をかけてみることにした。
「はいもしもし、週刊少年イザナミ編集部草壁です。どう言ったご用件でしょうか。」
「合宿のメールをみて、参加しようと思い電話をしました。」
「ありがとうございます。失礼ですが、noteのアカウントは、お持ちでしょうか。」
「ええ、持っています。アカウント名は、ミネダイキです。」
「はいありがとうございます。こちらの方で確認取れましたので、合宿の方の参加のほう承りました。日程などについては、こちらの方で決めさしてもらいます。不都合な場合は、辞退という形を取らせていただきますので、ご理解のほどよろしくお願いします。」
「はい分かりました。よろしくお願いします。」
それから、数ヶ月後合宿への、参加が決まった。
なんと、イザナミ出版が指定した日にちがたまたま、休みだったのである。
合宿当日、メールに書かれた住所を頼りに、梅田にある企業ビルの三階へと向かった。
三階に着くと、扉の前に合宿参加の皆様と書かれた看板が建てられてる部屋が、あったので、中へと入った。
中に入ると、それぞれ指定された席に8人着席していた。
大輝は、指定された席に座ると隣の人に声をかけた。
「緊張しますね」
「私も緊張してます。」
「合宿って何をするんですかね」
「さぁ、確か担当編集者の草壁さんが、説明してくださるそうよ」
「へー、あの人が担当編集者なんだ。」
「なんだ知ってるんだ」
「詳しくは知らないよ、参加希望の電話をした時にたまたま出た人ってだけ」
「そう、あの人が、今回の合宿企画を考えたそうよ」
「そうかなら、相当な変人だぞ、こりゃ大変だ」
「あら、あなたって面白いのね」
「ありがとうございます。褒めても何も出てきませんよ」
「ふっふぅ、あなた名前何、まずは私から自己紹介ね。申し遅れました私は久本京香、ノートのアカウント名はヒサキョです」
「ご丁寧に自己紹介していただいて、僕は峯岸大輝です。ノートアカウント名はミネダイキです。」
「ミネダイキって呼んでいい。私辛気臭いの嫌いだからさアカウント名で呼び合おうよ」
「いいですね」
ミネダイキとヒサキョが和気藹々と会話をしていると、草壁さんが部屋に入ってきた。
「ぇーみなさんいいですか。注目注目チューモーク、」
「うん、なんだ」
「まず初めに合宿に来ていただき誠にありがとうございます。」
「おぅ」
「さっそくなんですが君たちには、4人組のグループを2つ作っていただきます。」
「えっ、なんで」
「一つのグループで、合作を3本作ってほしいのです。」
「合作をするのか、」
「つまり2つグループがいますから、合計6つの合作作品が出来上がるわけです。そこから一つを、原作とした漫画を作るということです。」
「なるほど」
「ではさそっく、4人組を作ってください。制限時間は30分です。」
草壁さんが、スタートの合図を出すと、参加者は一斉に、声をかけはじめた。
ミネダイキは、自分から声をかけるのが、怖い臆病な性格で孤立していると、ヒサキョが声をかけた。
「ねぇ、一緒に合作を作ろう」
「ありがとう、なんかいろんな人が、一斉に必死にグループ作りを励んでいるから、なんだか呆然としちゃって」
「わかるなんだか、異様な雰囲気だよね」
「うんそうなんだよ、分かってくれるなんて、本当にすごいよ。僕を入れてください」
「わかった入れてあげる」
ヒサキョとミネダイキは、二人組のグループになった。
すると、そこにぽっちゃりした男と細身の女性が声をかけてきた。
「あのう、私たちも、入れてくれる」
「いいよ」
「君たちは、どういった作品を書いてるの」
ぽっちゃりした男は、ヒサキョの胸元をみながら、いった。
どうやら、ヒサキョだけに言っているのだと思いミネダイキは、黙った。
「私は普段、ネイルとかお化粧とかについての記事とか、最近飲んでいるスムージーの感想とか、ダイエットについての記事を書いています。」
ヒサキョの答えに、ミネダイキは、苦手なタイプの記事を書く人なんだこの人はと、思った。
すると、ぽっちゃり男は、「へー、彼女が君の記事を愛読しているよ。僕のアカウント名は、ゴーゴーって言うんだけど、スポーツカーとかF-1とかについての記事がおもかなぁ」と言った。
どうやら、ぽっちゃり男の名は、ゴーゴーと言うらしい
「へー、ドライブが趣味なんですね」
ゴーゴーの話に食いつくヒサキョになんだか、頑張ってるなと思った。
2人の会話をまじまじと見つめていると、細身の女性が声をかけてきた。
「あなたも、ここにいるということは、noteで記事を書いているんでしょう」
「えぇ、まぁ書いています」
「へぇーなんていうアカウント名ですか」
「ミネダイキっていいます」
「まったく知らないなぁ、あー、これですかぁー」
細身の女性は、僕のアカウント名を調べると、納得した表情をみせた。
「あー、物語系を書く人ね、こういうのは、なろうでやるもんでしょ普通」
「たしかに、そう思うでしょうね、でも僕は、ああいうなろう世界の小説が苦手なんです。意地悪令嬢ものとか転生モノとか吐き気が出てしまって、作家性があってないと思ったからnoteで書いているというわけです。」
「作家性ですって、素人が一丁前に、気色の悪い」
「たしかに僕は素人だ。だけどみんな素人から入るってもんだろ」
「失礼しました。でも、あなたの物語は魅力的に感じる何かがある。」
「そうですかありがとうございます」
「すぐ、男は調子に乗るんだから、私は魅力的だとは思わないけど、この合宿に選ばれているということは、そういうことなんでしょう」
「………」
「ハッハァッハァ、私に勝てないとわかるとすぐ黙り込んじゃったの、かわいいわね」
私とゴーゴー、ヒサキョは、一斉に黙り込んだ。
異様な静まり返りに、細身の女性はすこしまずいことを言ったと、冷や汗をかいた。
「なぁ、亜美、ちょっと言い過ぎじゃないか。」
ゴーゴーが、細身の女性に、そう言った。
どうやら、細身の女性は亜美というらしい
亜美はゴーゴーの顔をしばらく見つめると、観念した表情になり、謝った。
「本当にごめんなさい。あなたを馬鹿にしたいんじゃなくて、才能ある奴を見ると、無性にからかいたくなるの、許してください。すみません」
「何それ」
ヒサキョは、「あんたわかってる物語系を書く人は、私たちのような商品を紹介するだけや自分の暮らしや趣味を説明してるやつよりよっぽど、すごいんだ。だって正解がないことをしているんだよ」と言うと怒り狂って、胸ぐらを掴んだ。
「ありがとう…ありがとう…」
ミネダイキはそう呟きながら、心では泣いていた。だけど表では泣けなかった。
やってきたこと全てをこの子はきっと肯定してくれる
そんな子がいるんだ。日本は捨てたもんじゃないミネダイキはそう思った。
「わかったから、離してよ」
「ごめんなさいついカッとなって」
ヒサキョが、亜美の胸ぐらから手を離した。
「ヒサキョ、ミネダイキ君たちなら、面白い物語をきっと書けるよ、俺たちは、できるだけ君たちのサポートに、徹しようと思う」
ゴーゴーは、そう言うと、2人を抱きしめた。その後、草壁さんに、4人組ができたことを知らせたのである。
そして、制限時間は終了した。
「無事、時間内にグループを作ることができました。次は、グループ内で話し合いを行い作品を作ってください制限時間は、3時間よーいスタート」
草壁さんの合図で、一斉に動き出した。
「作品名とかどうするの、ミネダイキ君」
ゴーゴーがそう言うと、思い付かないなら、作品を全部仕上げてから、作品名をつければいい」とミネダイキは答えた。
「なるほど、勉強になるなぁ」とゴーゴーが関心していると、ヒサキョが、「主人公は、ゼッータイ女の子がいい」と言い出した。
ミネダイキは、キョトンとして、「なんで、絶対なの、少年雑誌はだいたいが、主人公少年だよ」と言うと、「そんな考え、古いよ、おっさんおっさん」と言われてしまった。
「わかったわかった、じゃあか弱き女の子だ。守ってあげたくなるようなぁ、ドタバタ萌えギャグ路線でいくかだなぁ」とヒサキョを宥めるように、ミネダイキが言うと、亜美が、「私そんな作品嫌いです。別がいいです」と言ってきた。
「もー、どうしろって言うんだ。だから合作なんて嫌なんだ。」
ミネダイキは、嫌気がさして、こう言うと、亜美が、「あなた物語系を書くの、うまいでしょ」と言ってくる。
「そうよ、あなたにかかってるんだから」
囃し立てるヒサキョ
とうとうミネダイキは、この状況に疲れ果ててきた。
ゴーゴーは、どうにかして場の空気を和ませなければならないと思って、「僕が投稿した作品を、読んでくれるか」と言い出した。
「わかりました」
ミネダイキはゴーゴーさんが、投稿した作品を読んだ。
作品名は、光のレーサーという。
内容は、主人公が、f1レーサーとして活躍するまでを描くヒューマンドラマ的作品だった。
「いいですね、これこれをもっと深く掘り下げたら、いい作品になりますよ」
ミネダイキは、興奮しながら言った。
私は興奮しながら、なんだか編集者みたいだと思った。
「幼少期時代に女の子のヒロインだしましょう」
「えっなんでだい」
「ストーリーに深みを持たせるために、絡ませたいんだ。」
「たとえば、どんな感じだ教えてくれ」
ミネダイキは、しばらく考えてから、「小学校低学年の俺には、好きな子がいた。
その子の名前は、なつみという
活発な女の子で、かっこよかったから、だから惚れた。
この気持ちを、思い思いに綴って手紙を出した。
その手紙の返事が今でも忘れることができない。
しっかりしたら付き合ってあげる
彼女はそう返した。
だけど僕はしっかりという基準がわからなかった。
彼女は僕のことが、邪魔くさく思ってそう返したのかもしれないけど、その頃の僕は真剣だったから、どうしたら、しっかりしてるって認めてくれるの、いつか、世界一のスピードで、走り抜けることができたら、付き合ってくれますかと返答した。
彼女は、きょとんとしていたけど、数年後、僕がレーサーになったと知っててくれていたらしく、応援しにきてくれていた。
そして僕らは再会した。というふうな感じ」だと言った。
「それいいね、その話を広げて作りましょう」
この一作を作るのに、3時間を、普通に超えて5時間はかかってしまった。
すると「残念ですけど、時間内に3作つくることができませんでしたので、不採用です。お帰りください」と草壁さんに言われて、僕たちはとぼとぼと家へ帰った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?