体を探して(ショートショート)

何ということだ。私はある日突然、体から抜け出してしまった。
私は魂と呼ばれる存在ということなのだろうか。
「ご臨終です」
医者が言った言葉が、個室の病室に響き渡った。 
そこで、私はふざけんなと思いもう一度、肉体に戻ろうとしたが、体は受け入れず、心臓は動かなかった。
そして、私の肉体は、棺桶に入れられて、葬式会場へと向かった。
親戚たちが、やってきて、私に別れの挨拶を言いに来たのだ。
「お疲れ様休んでね」
「おぅ、ん?」
「天国に行ってもみんなを笑わせてください」
「ちょっと天国の行き方がわからない。乗り物に乗る系?」
これで、なんとなくどういうことかわかって来た。
なるほど、私は死んでしまったということか。
葬式が終わり、親戚たちが帰っていった後、私は外に出た。
すると、風が吹いて、飛ばされてしまいどこか遠くの街へとやって来た。
それは、すごくおしゃれな街並みで、外人たちが歩いていた。おそらく海外にやってきたのだろう。
私は「おぅすごい綺麗だな」と思いながら風に乗って旅をした。
エッフェル塔が見えてきたので、パリだということがわかった。
「ここが、パリか。生きているうちは来れなかったんだよなぁ」と呟きながら、観光した。
観光中、妊娠している人がいると、その人に引き寄せられてしまったりもした。
だが私が入ることを赤ちゃんの体が受け入れなかったのか弾き飛ばされてしまった。
そんなことをしながら、さまよっていると、一週間すぎたあたりからか生きていた頃の記憶がだんだん消えていってしまった。
その後風に乗って、世界中を旅した後、私は疲れて力尽き、次の器となる体に入ったのだ……

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