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夫は家の中でカニ歩きをしています③ー彼のカミングアウトと私が違和感を感じるまで

そんなこんなで、国際遠距離恋愛がはじまりました。

二人とも初カレ初カノというやつです。二人とも若干こじらせています。言語が違います。時間が違います。文化が違います。年齢が違います。勘違いとミスコミュニケーションに満ち溢れています。

今想像しても面倒くさい(笑) よく始めたな、よくやり切ったな、と自分たちを褒めてやりたいです。とはいえ、国際恋愛そのものについて語るのは別の機会にして。

このシリーズでは、家の中でカニ歩きをしている夫と暮らす日々について語っていきます。過去記事をお読みでない方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

僕はキョウハクセイショウガイなんだ

まずは、何にも知らないところから、お互いの話をしていきます。メールから始めて、約2か月後、Skypeのビデオ通話に移行しました。

何人兄弟なのか、家族はどこにいるのか、どんな食べ物が好きで、どんな子供時代を過ごしたのか。

その中で、彼は「I am OCD…What's in Japanese...キョウハクセイショウガイです。」と教えてくれました。(私たちは日本語と英語のちゃんぽんで会話をしています。)当時は聞いたことがない言葉だったので、彼に説明を求めました。

彼の説明からわかったことは、不潔なことが嫌い、外出後は車を掃除しまくる、程度でした。

ということは、潔癖症っていうことかな?だったら、私の周りにもいるし、別に生活に支障が出ているわけじゃなさそう。私はそうじゃないけど、掃除してくれるんだったら助かるじゃん!とポジティブにとらえたんです。

そして、そのままキョウハクセイショウガイについて自分で調べることはしませんでした。

初めてのデート

お試しデートを始めてから数か月、やっぱり会ってみた方がいいね、ということになり、私がシアトルに行くことになりました。

初めての本当のデートです。彼は空港まで迎えに来てくれて、約1週間のデートがはじまりました。私の宿泊先は彼の妹夫婦のところ。

掃除をする、と言っていた車は、なんか思ったほどきれいじゃない(笑) 洗車をした感じでもないし、掃除機でごみを吸い取ってる感じでもない。う~ん、なんだろ?とは思いましたが、そこまで気にはしませんでした。

1日目は彼の親友夫婦とご飯を食べにいってから、そのまま親友夫婦の家でピンボールをしたりして遊びました。

ご飯の際、親友夫婦は彼に気を使っており、これ私がとりわけてもいい?などと確認しながら彼とコミュニケーションを取っていました。あぁ、これが"潔癖症"のやつかな?となんとな~く把握。

お会計の時に使ったクレジットカードを洗いに行ったのは覚えています。でも、私は彼が何かに触るのを特別嫌がったりする様子は見ませんでしたし、特別な違和感を感じた覚えはありません。

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(スノークォールミーフォール。人工の滝です。わたしは人工物はあまり好きではないのですが、なぜか毎回デートで行きます(笑))

さて、このまま楽しい1週間が始まると思いきや、私は2日目以降かなりしっかりと風邪をこじらせてしまったんです。たぶん飛行機の中で菌を拾ったんだと思います。

さっさと病院に行くなり、薬を飲むなりしたらよかったんですが、海外で病気になるのが初めてで、怖くて何もできなかったんです。皆さん、コロナじゃなくても飛行機の中はマスクした方がいいですよ。そして、風邪薬も持っていきましょうね。

いろいろ予定もあったんですが、ほとんど妹夫婦のリビングで映画を見ながらおうちデート。でも、彼は毎日通ってくれて、ソファで私が彼に寄りかかれるようにずっと付き添ってくれたんです。

これって彼にとってすごいことなんですよ。いや、確かに普通の彼氏彼女で、優しい彼氏さんだったらあたりまえことかもしれません。でも、彼はキョウハクセイショウガイなんです。菌が怖い人なんです。

確かに、今ほど強迫症状が強くなかったというファクターもあります。それでも、私には病原体がいて、彼にとって不潔極まりない物体だったはずなのに、彼はスキンシップをいとわなかったんです。

今でも面白いと思うのですが、非常に魅力的なものや生きるために必須のモノ(食欲や性欲や睡眠欲など)は、強迫症状に打ち勝つんですって。

私を魅力的だと感じてくれたのは彼女としてはうれしいことですが、そのせいで彼の実態がわからなかったという点では、残念なことだったのかもしれません(笑)

そして、このデートで、お試し恋愛から卒業し、真剣交際にしましょう、という結論になりました。

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(風邪をひいてできることがなさ過ぎて、ソファの上で作ったVWバスのレゴ。お気に入りです。)

2回目のデート

次は、彼が日本に来てくれました。ちょっと私にとって不思議なことが起こり始めます。彼は私のアパートに泊まり、私は実家で寝泊まりしました。(※私たちは結婚するまで性交渉をしない、というポリシーのため、交際期間中の泊まる場所はいつも別々、もしくは付き添い付きです。)

東京見物に行ったり、私の友達に会ってもらったりして過ごしていました。彼とはいつでも手をつなげるし、ハグもできます。

初対面の人とも握手をしていました。そのあと手を洗いに行きますが。

ある朝、彼を迎えに行くと、「ごめん、まだ無理~」と部屋の中から声がします。どうやらシャワー浴びている様子。

シャワーなら長くても30分もあれば終わるでしょ、男性だし。と思っていると、結局1時間半くらい待ちました

なんか長いなぁ…。まぁでも、ちょっとゆっくりしたいときもあるよね。でも、人を待たせてるんだから、もうちょっと急ぐもんじゃない?と少し悶々。

とはいえ、他に大きなモヤモヤは見つからないまま、彼を無事に成田まで送り届けて楽しく2回目のデートも終了。

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(定番デートスポット。私はスカイツリーより東京タワーの方が好き。)

でも、彼の帰ったアパートに入ると、置いておいた私のお気に入りのスニーカーが明らかにブリーチによって一部変色しているんです。

そして、ハイターが増えてる(笑)何かが起こった様子。

アメリカに帰った彼に聞いてみると、わざわざハイターを自分で買いに行って私のアパートを”掃除”したらしい。そして、液体がはねて私の靴にかかったらしい。

うむむむむ・・・・。

そして、部屋の中は取っ散らかっていました。なぜか靴下を片方だけ置いて行っていたり。しかもそれもブリーチされた模様(笑)

うむむむむむむむ・・・・。

まぁね、気づかなかったんだしね、仕方ないよね。代わりの靴買ってくれるしね。部屋もね、急いで準備したら取り残しとかあるよね。と自分を落ち着かせ、ここでもそこまで大きな刺激にはならずに済みました。

3回目のデート

付き合ってから約2年後のことです。今度は私がシアトルに行きます。

しっかりマスクをして飛行機に乗った結果、風邪も引かず、いろんなところに遊びに行けました。私たちも緊張がほぐれてきて、彼も本性(笑)を表し始めた様子です。今回はいろんなことに気が付きました。

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(今回のデートの目玉:オリンピックゲームファーム。富士サファリパークの、草食動物バージョン。自分たちの車の中から餌をあげられます。)

・車が前回よりも荒れている。
車内が前回よりも雑然としていたんですよ。掃除機かけません??という感じ。まぁね、男性だしね。でもデートだよね、そういうとこ気にしないのかな?

・彼はトイレに行くと、女子より長い。
男性と女性が同じタイミングでトイレに行くと、普通男性の方が早く済んで、待ってもらうことになりますよね?でも、なぜか私がいつも待つんです。しかも、5分くらい。男性で小の方になぜそんなに時間がかかる??

・レディーファーストができない。
レディーファーストを強要しているわけではないんですよ。でも、ドアを開けてくれたり、椅子を引いてくれたり、っていうのはアメリカで周りのカップルを見ても当たり前の様子なんですが、彼はそれができない。別にしたくないわけでも、フェミニストなわけでもない。
まず、ドアを触れないし、必要以上に椅子を触れない。足を使ったらできますが、日本人からしたら非常にお行儀が悪くて不快なので、私がドアを開け、彼が一緒に入ってくることになります。重ためのカバンも私がもったまま。アメリカではかなり変な構図です。

・レストランで椅子を勝手に変える。
レストランの椅子って、前の人のカスが落ちていたり、最悪ケチャップがついていたりするわけです。でも、それって不潔なものではないし、はたいたり、ちょっと拭いたりすればいいじゃないですか。
それが彼の場合、それを見つけた瞬間、周りを見渡して、他に空いているきれいな椅子と勝手に交換するんです。そうすること自体は別にマナー違反ではない様子ですが、私には不思議。特にケチャップは鬼門らしい。赤いもんね、血かもしれないよね★

・食べ方が汚い。
両方の手が一度に"汚染"されることを嫌うので、全て右手で解決しようとし、左手は膝の上です。
アメリカではお茶碗に片手を添えるといったマナーはありませんから、そこは非難はできませんが、両手をスタンバイしておくというのは日本と共通するように見受けられます。また、日本でいう寄せ箸みたいなことはこちらでもマナー違反ですし、ペットボトルのキャップを開けるというような行動も、片手です。両手を使えば早いじゃん、丁寧じゃん!という見ていてヤキモキするような活動を続けます。

・お会計のあと、クレジットカードを洗いに行くため、待ち長い。
これは、最初のデートでちらっと気が付いていたことですが、なんかもっと待ち時間が長くなったような気がする。う~ん。

・デートに遅れる。
まぁ、ね、時間感覚が日本人と違うとか、根本的に遅刻はどうなのかとかは置いておいて。その理由ですよ。寝坊したんじゃなくて、シャワーが長いからなんです。

・私がなんでもかんでも手に取ることにイヤそうな様子を示す。
お買い物に行って、カワイイぬいぐるみとか、文房具とかあったら、とりあえず手に取ってみたくなりませんか?私がそんな感じでいろんなものをつつきまわっていたら、表情が曇る。このときはまだ口に出してイライラを表すことはありませんでした。

・他の人と握手やハグをしない。
友達とハグをしたり、握手をしたり、肩を組んだり、というスキンシップは西洋ならではかと思うんですが、彼はそれをしません。周りの友達も、それを承知で彼と接している様子。でも、私とはいつでもハグもキスも手をつなぐこともできました。

あぁ、これが強迫性障害っていうやつなんだ、普通とはちょっと違うんだ、と、この回ではっきりと気づきました。

あなたならどうしますか?

食べ方が汚い、とか、遅刻をする、というところで、どんな理由であろうと、関係を終わりにする方もおられますよね。それは、自分のポリシーに従った賢明な判断だと思います。自分のポリシーと違う人とずっと付き合っていると疲れますし、ともすると自分の幸せを削いでしまうかもしれませんから。

私も、そこそこマナーを仕込まれて育ちました。食事の時は肘をつかない、寄せ箸や渡し箸に気を付ける、ものは両手で渡す、遅刻はしない、誰かを迎えに行くときは車をきれいにしてから行く。それはすでに私の人生の一部なので、それとずれている人を見るのはハッピーな気分ではありません。イライラします。一緒にいたくありません。

じゃあ、なぜそのまま一緒にいたのか。たぶん、俗に言う、脳内お花畑だったというのもあると思います。

私は、人に気を許すことがあまりできません。例えば、わざわざ自分のために時間をとってくれている人の前で昼寝するなんて、もっての外です。でも、疲れたでしょ、寝ていいよ、と言われたら、彼の前ではグースカ昼寝をすることができました。私にとってはすごく大きなサインに思えたんです。

彼が、私にだけスキンシップを取れることも、私を優越感に浸らせました。私は彼にとって特別な人なんだ、と思わせてくれたからです。確かにそれは奇跡に近いんです。彼を知っている友人や家族もかなり驚いていますから。

それに、強迫性障害が直接の理由で喧嘩をしたり、活動が制限されたり、私がイライラしたり、ということがこの頃にはありませんでした。

でも、本当は、以前に比べて彼の強迫性障害は進んでいました。アメリカならではの、その人をあるがまま受け入れる、という姿勢もあって、誰も彼の強迫行動を止めることはありませんでした。日本であれば、他の人と違う行動は白い目で見られますし、マナー違反に厳しいですから、無言の圧力という名のプレッシャーを感じるのかもしれませんが、アメリカではその圧はありません。

それどころか、周りの人は彼が強迫行動ができるように手伝っていました。彼も独身で好きなようにできたため、新しい自分ルールをどんどん作って武装することができていたんです。

1回目や2回目の日本に来てくれた時は緊張していたためか、それほど違和感を感じず、3回目に慣れてきたら本性をじわじわ現すということも、今思えば危険なサインではあったと思います。でも、それを客観的に分析するほどの力は当時の私にはありませんでした

その時の私はそこまで大ごとだと考えることはなく、婚約に向けて歩を進めることにしたんです。

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